https://www.f1technical.net/

絶対王者メルセデスAMG-F1が、新たなステアリングシステムを投入してきた。

その名もDAS「デュアル・アクシス・ステアリング・システム」(dual axis steering system)、直訳すると(2本の軸があるハンドルの仕組み)となる。

なんか久しぶりにF1に新メカ登場って感じ、FRIC(フロント・リアサスを油圧で連結)、ブロウンディフューザー、Fダクト、ダブルディフューザー、リアブレーキステアリング、アクティブサスペンションなどなど、興味深いシステムが出ては消えを繰り返してきた。

今回のシステムは足回り関連、過去にFRICを開発したジェームズ・アリソンが絡んでいる。

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DAS(dual axis steering system)

ステアリングを手前に引くとフロントタイヤがトーイン側へ傾き、押すとトーアウト側へ傾く。

この動画によれば3段階で調整されているのがわかる。

  1. ストレートに入ったら引いて、トーゼロ(スクエア)
  2. ストレート後半が近づくと更に引いて、トーイン
  3. コーナーに向けて一気に押し込んで、トーアウト

1.トーゼロでは摩擦係数が減少しタイヤ摩耗を抑え、冷却を早める事ができる。2次的にエネルギーを極少量節約できる。

2.トーインにする事で直進安定性を確保、ブレーキングに向けて摩擦係数を増加させタイヤを温める。

3.トーアウトにする事でターンインを安定させる基本的なセットアップに戻す。

F1におけるセットアップデータ

photo by @ScarbsTech

これはどうやらマノーのセットアップデータのようです。2016年と古いですがフォーミュラカーにおける基本的なセットアップとなっています。

トーやキャンバーについて詳しい解説はこちらのサイトへどうぞ⇒https://virtualracingschool.com/academy/iracing-career-guide/setups/camber-toe/

DASの合法性

10.2 サスペンションジオメトリー

10.2.1 ステアリングホイールが固定された状態で、各ホイール中心位置とその回転軸の方向は、サスペンションの主要垂直方向トラベルの機能により完全にまた独自に定義されなければならない。ただし、さらに自由になる度合いを故意に提供することのない合理的なコンプライアンス効果については除く。

10.2.2 サスペンションシステムの仕様構成を変更する、あるいは性能に影響を及ぼすことが可能な動力装置は、それがいかなるサスペンションシステムのどの部分であっても、一切禁止される。

10.2.3 車両が走行中、いかなるサスペンションシステムも、調整は一切行われてはならない。

10.4 ステアリング

10.4.1 2輪を超える車輪の操舵を可能とするステアリング装置は禁止される。

10.4.2 パワーステアリングシステムは、電子的制御がなされることあるいは電気的動力を得ることはできない。そのようなシステムは、車両を操舵するのに必要な肉体的負担を軽減させるという目的以外の機能を実行することはできない。

10.4.3 ステアリングホイール、ステアリングコラム、それらに装着された部品のいずれも、ステアリングホイールリムの後端全体で形成される平面よりもドライバーに近い所にあってはならない。ステアリングホイールに固定されるすべての部品は、ドライバーの頭部がホイール組み立て部のどこかに接触した場合、怪我の危険性を最小限にとどめるように取り付けがされていなければならない。

10.4.4 ステアリングホイール、ステアリングコラム、およびステアリングラックアセンブリーは、衝突試験(試験手順詳細は第16条5に記載)に合格しなければならない。

※関連しそうなレギュレーションを抜粋しました。

まず一つにステアリング操作の方向に関する事の記載無い、回転させるとも書いてない。押し引きしてはならないなんて書いてある訳もないので操作については合法となります。(2021年レギュレーションでは、前輪の位置合わせは、単一のハンドルの回転運動の一定の機能によってのみ行われなければなりません。と記載されています。)

「車両が走行中、いかなるサスペンションシステムも、調整は一切行われてはならない。」と書いてある部分に抵触するのではと思っていたのですが、トー角を変更するためにステアリングロッドの長さは変わっていない事が発覚!ハブ部分にトー角だけを動かす機構が存在している。

https://www.auto-motor-und-sport.de/

画像の赤丸部分の機構に疑いがもたれています。POUによりステアリングロッドを動かすタイヤの角度変更はサスペンションに干渉して車高が下がる機能があります。10.2.3に抵触しないようにサスペンションに干渉しないシステムになっています。

「車両を操舵するのに必要な肉体的負担を軽減させるという目的以外の機能を実行することはできない。」との記載があるのでDASには油圧などのシステムは使えない、よって完全な機械式であって電子的な補助も許されない。操作するには何らかのロック機能をもったレバーなどを使って特定の場所に固定していると思われる。そして重すぎても軽すぎてもダメな微妙な操作感が必要になるだろう。

DASの利点は?

DASの利点については、ここまで書いていきた事を踏まえてもかなり限定的と言える。

ごく一部のストレートでタイヤを労わったり、エネルギーを少しセーブする事ができるだけと思う。トーゼロによるドラッグの軽減が与える速度への利益はほんの1km/h程度だととも言われています。

トーイン状態にして、高速コーナーで意図的にアンダーステアにする事も可能と言えば可能。

ほんの少しでも利点がある事の積み重ねがF1でもある訳です。チャンピオンチームの強かな行動は今年のチャンピオン争いに影響するのだろうか?

 

正直わからん!!