遅い開幕となった2020年のF1、メルセデスW11はプレシーズンテストから隠されていた部分が大きく、圧倒的な速さを見せている。対抗するべきレッドブルやフェラーリが2019年より遅いラップを刻んでいることも、その強さを際立たせている。

昨年型W10とW11の比較、レッドブルRB16との比較を踏まえて検証していきたいと思います。

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サイドポッドの小型化

サイドポッドはエンジンの冷却に欠かせないものですが、空力的損失(主にドラッグ)が大きいものです。

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W10は冷却に問題を抱えることが多かった、W11は空気口がサスペンションアーム類に邪魔されない位置に移動している。クラッシュ構造体をアッパーアームと丁度平行になるような位置へ移動させている。2017年にフェラーリが導入した手法をやっとコピーしたとも言える。

ハイマウント水平アームとの対比が美しいフロントビューですね。

これにより空気口面積は減少するが安定した空気量は確保される、サイドポッド下方は絞り込まれディフューザー上面に送られる空気量も増加する。

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RB16と見比べると、そのサイズの小ささがわかります。造形的には美しくないかもしれないが、不必要なボディーワークを削ぎ落すスタイルです。

バックビューもリアアーム類が水平になっていて綺麗なW11。

リアサスペンションアーム

アリソン氏が公言していた空力を重視したリアサスペンション、DASにすっかり隠れてしまったが、これこそがW11の速さの根源のメインだと思う。

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リアサスペンションロワアームに大改造が施されています。

ロアアームの高さはホイール中心にあるドライブシャフトに合わせるのが通例です、他チームは後ろのアームに合わせていますが、W11は前のアームをドライブシャフトに対して平行にし、尚且つ低い位置にあります。これによりサスペンション全体の稼働領域を確保しています。

そして、後ろのアーム位置を高く設定しディフューザーから離しています。

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この?のアームは以前のロアアーム後があった位置のもので、後ろのアームを2分割でマウントしているようです。

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ディフィーザー後端に向かってなだらかにアーム類が並んでいて、疑似ウィングともとれるし、ディフィーザーからアームを極力遠ざけて上面の空気量を確保しています。

※何度見てもこのアームが綺麗に並んだリアビューは美しすぎる。

 

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RB16はドライブシャフトとロアアーム後を平行にして空力処理を施して幅広く太めになっています。そしてディフィーザーから遠ざけるために,後ろから見るとハの字状にマウントしている。上下アームのマウント部分の距離が近くて稼働という点で良く無い。

RB16と比べてみるとよくわかる通り、W11はディフューザー上面の前方から乱流を起こすアーム類を取り除き、尚且つ後方は空気の流れを塞ぐことなく通過できるようになっているのです。

乱流の温床となるアーム類を常に水平を保つように設定している事も空力を安定させるためです。

※W11を見た後だとRB16の無理やり感が半端ない。

まとめ

W11は小型サイドポッドでドラックを最小限に、ディフューザー上面へ導く空気量を増加させる。加えてその上面にあるアーム類を遠ざけて流れをスムーズにしている。

コーナー脱出速度に優れるW11は低速度域から安定したディフィーザー効果を備えているのです。リアダウンフォースをウィングに頼る必要がなくなるため、リアウィングは他よりも寝かせることが出来て、トップスピードも確保できる。

もう一つ言うならば、パワートレイン第一主義で、ドライブシャフトはホイール中心に対して常に水平でデフに対して直角を保っている事。これによりほんの少しのトルク損失を消し去ることが出来る。

 

2台が並んだバックビューの画像をもう一度見て頂きたいのですが、RB16は静止状態でロアアームとディフィーザーの位置が近いです。ブレーキングでハイレーキ状態になればその空間はもっと狭くなります。

さぁ加速するぞって時にはディフューザー上面の空気の流れが悪く、ダウンフォースが安定していない。コーナー脱出時の初期段階でダウンフォース不足が起こっている可能性があります。

昨年と同等性能しか出ないRB16、昨年よりも速いW11、互いのマシンデザインの違いから解る事が、速さの差となっている。

 

メルセデスのマシン作りは本当に美しい。

パワートレインとサスペンション機能の基本姿勢を守りつつ、空力のネガな部分を一つ一つ解決していく。DASのおかげで速いなんて事は微塵もないんですよね。

イギリスGP予選アタックラップでは一切DAS操作をしていません、長いストレートにおけるフロントタイヤの熱入れで少し利点がある程度です。

2021年も含めて8年連続チャンピオンは決まりかな;;