2022年レッドブルRB18は、レーキコンセプトを継続していた。
左右リンク式の油圧ヒーブサスペンションが使用禁止になったのに、なぜリア車高を制御出来るのか?
サスペンションジオメトリーにトリックがあるのに違いない!
そう思い、色々と調べていくうちにわかった事をお伝えします。
※これは私的見解であり、実際のものと違う可能性が高い事をお許し下さい。
レッドブルRB18のレーキ角制御
なぜレーキを付けたいのかという点ですが、F1マシンはコーナーを曲がる時に速度を落とします。
速度が落ちると、空力効果が減りダウンフォースも減少します。
そのダウンフォースを少しでも増やす為にマシンを前傾姿勢にする、利点は主に二つです。
- 前面投影面積の増加による空気抵抗を伴ったダウンフォースの増加(アタック角の増加)
- フロントウィングが路面に近づくことによるグラウンドエフェクト効果
一時的に、フロントタイヤグリップを上昇させてアンダーステアを減らします。
※2022規定マシンは、流体ヒーブサスペンション(ダウンフォース量に比例して車高制御)が使えなくなっています。
バーレーンテストのレーキ
ターン1を通過する時、路面に対してフロアの後ろが斜めに上がっています。
「レ・レ・レ・レーキがあるよ!」
ターン9の高速コーナーでは、フロアは路面に対してベタッと張り付いています。
フロアを路面に擦って火花も上がっています。
「レ・レ・レ・レーキがないよ!」
ターン10のヘアピンに向かって減速中。
「レ・レ・レ・レーキがあるよ!」
RB18のサスペンションアーム
フロントのアッパーアームとロアアームの角度に注目です。
車体側の支点が斜めになっています。
これは、上がる方向だとホイールが後ろに進む事になります。(少しホイールベースが減ります。)
リアのアッパーアームとロアアームも確認します。
リアはフロントとは逆の角度で取り付けてあります。
これを大雑把に・・・簡単に平面図で表したのが以下になります。
RB18のサスペンションジオメトリー
タイヤの抵抗、力の強弱などを無視した考察になります。
あくまでも運動力学上のものだという事を念頭においてお考え下さい。
レーキとは車体の傾きの事、車体にかかる力の向きを矢印で表してみました。(タイヤではありません)
「黄色の矢印」がホイールの軌跡を表したものです。(本当は複雑な曲線になります。)
減速時、車体にかかる力が「大青矢印」です。
その力は、軌跡に直角の力(小青矢印)となります。この力を水平方向の力(緑矢印)と垂直方向の力(赤矢印)に分けて考えます。
この赤矢印の向きによって、フロントを下げる・リアを上げる力が発生すると考えられます。
このような数式が成り立ちます。(θ=垂線と軌跡の角度)
- 大青矢印=緑矢印=F
- 小青矢印=F/cosθr
- 赤矢印=Ftanθr
次は加速しているときの力の向きになります。
加速する時は、フロントを上げる・リアを下げる力が発生すると考えられます。
お気づきの方がいらっしゃると思いますが、普通に車を走らせた時に発生する力と同じです。
減速するとフロント↓・リア↑、加速するとフロント↑・リア↓、レッドブルのアームの角度はそれを助長すると考えられます。
フロントに関してはブレーキング時に下がりすぎても問題になる為、アンチ・ダイブ・ジオメトリーも導入されています。
アッパーアームとロアアームの回転交点が交わる角度をアンチダイブアングルと言います。
フロントは凄い角度が付いたアッパーアームによって、フロントダイブの力を発生させながらも、アンチダイブによって抑制していると言う事になります。
下げすぎるとフロア先端を思いっ切り擦ってしまうので、そのような設定になるのでしょう。
リアのアーム上下の回転運動にも違いがあり、それが交わる角度があります。
アンチダイブと同じ考えとなるなら、それはアンチ・スクワット・ジオメトリーになるでしょう。
スクワット(しゃがむ)させるのに、アンチ・スクワットも使用する。
最終的にそれ以上、下がらないようにするポイントを定めているようです。
強めのキャスター角も何やら関係しそうですが、私の知識と経験ではこれ以上わかりません。
キャスター角は、ほとんどの車に付いています。
直進安定性の向上、バンプ乗り越え時の安定性、ステアリングの反応(キャスター角が大きいと鈍くなる)などに影響を与える。
また、ホイールの軌跡が斜めになる事によって、サスペンションロッドの稼働距離を稼げます。
[稼働距離が増える⇒ロッカーを回す量が増える]それによってインボードサスペンションを柔らかく設定する事が出来る。
柔らかいサスペンションはメカニカルグリップが増える。
そんな感じの流れです。
※アンチダイブとキャスター角を詳しく説明する事が出来ないです、お許し下さい。
まとめ
今回の記事は、サスペンションジオメトリーの専門家の方が見たら違うよと言う見解もあるかもしれません。
それは、もう、どうしようもないですが・・・。
ホイールの軌跡が斜めになる事を確認しました。
軌跡を斜めにする事によって得られるサスペンション・ジオメトリーの動画などを見て勉強しました。
アンチ・スクワットに関するものが、力の向きによってサスペンションの動きを制御できる事を教えてくれました。
一般的な自動車では、加速時にリアを下げないようにするアンチ・スクワットが主流、でもF1は一部のチームでスクワットさせる方向性となっています。
その方がドラッグ減りますからね。
他のマシンを見てもレッドブルほどじゃないけど、ホイールが上方向に動く時の軌跡がマシンの中心に寄るようになっています。
まぁでも、レッドブルのは異常で変態的ですけど(笑)
「レッドブルRB18 サイドポッドをアップデート」の記事のコメント欄に、この事に気づいたコメンターの方がいらっしゃいました。
深く感謝いたします。
物理ので授業で習う「力の分解」を用いて説明して頂いたのでメチャメチャ分かり易かったです、ありがとうございます笑
ロワアーム、アッパーアームの取り付け位置によって、ホイールの軌跡が決まるというのも面白かったです。今まで、ロッドによって決まるのかと思っていました。
F1マシンでキャスター角って殆ど意識した事ないですが、真上からの
写真を見れば、一応、キャスター角が何となくわかりますよね。
で、真上の写真が公開されてるマシンを見ると、マクラーレンや
アストンマーチンはフロントはキャスター角(後退)がついてますね。
リアは両車ともRBと逆方向のキャスター角が付いている様に見えます。
驚くことに、アルファタウリとアルピーヌは、フロントは逆向きの
キャスター角が付いてる様にみえます。そんなの有り得ますか?
サスペンションアーム形状は、空力的理由という説明が多いですが、
RBのサスペンションを見た時から、空力以外の理由があるのだろう
とは思いました。バーレーン最終日の走りを見て、たぶん、サスに
秘密があるんだろうな~と確信しました。
AT03フロントサスペンション
赤がキャスター角でほぼ0、アームの軌跡は斜め後ろです。
補足です。
車の場合、サスペンションアームの軌跡とキャスターは別物です。
キャスターはホイール部分のみの事になります。
サスペンションアームの軌跡を表現する用語が無い・・・。
まぁバイクみたいにキャスターの方が話が通りやすいですが。
wheel travel (angle) とかが、該当するんですかね。
いや、このサイトとここに訪れる皆さんのコメント、
すごく勉強になりますね!
ありがとうございます。
私も教わる事が多くて、助かっています。
また、一人一人の意見を尊重しているので、誰かを批判否定するようなコメントは承認していません。
明らかな科学的な間違いの指摘はOKです。
色んな考えを出し合って真実に近づく事が重要だと思っています。
フルサスペンションMTBのリアホイールも複雑な動きをしたりしますが、軸の軌跡でaxle pathなんて表現したりしますね。
axle path で検索したら、MTB関連がごっそり出てきますねw
これは理解するのが大変そうです。
MTBのリアのAxelPathはフロントスプロケットとリアアクスルの中心間の距離を一定に保つための軌跡だったかな?
4バーリンケージとかマルチリンクとか。
ちょっとF1のサスペンションと離れちゃいますけどね。
https://en.wikipedia.org/wiki/Four-bar_linkage
普段、ロードバイク乗ってるので、キャスター角についてのメリットは2輪のほうを調べるほうがいいのかなぁと。特にサスペンションを使ってるMTBとかの技術は他のところでも応用されてるので。
マシン発表前のリアサスに秘密があるとの噂やバルセロナテスト中にロス ブラウンとパット シモンズがガレージを訪れて革命的だと言った正体はこれかもしれませんね!
ウイングカー(グラウンドエフェクトカー)にレーキ制御を加える事で
ポーポイズを防ぐ効果あるのか確信持てません?
標準ホイールベースが3600mmに規定されてロングホイールベースを使う事が出来なくなったメルセデスにとってレーキ制御の実績が無いのが厳しい?
それを何とかするため、ゼロ・ポッドと言う手法を取り入れたのか?
果たしてグラウンドエフェクトカーは、レッドブルとメルセデスどちらのチームに優利に働くか?
いやいやマクラーレンとフェラーリが、この2チームに取って変わり
2強となるか。
全22戦(23戦?)で同じチームが独占して勝ち続けるオールラウンダー的なマシンは無いと思います。
高速サーキットはレッドブルorマクラーレン、低速サーキットはメルセデスorフェラーリの気がします。
毎レース、違うチーム違うドライバーが優勝ウィナーであるF1であるのが望ましい。
レーキはターンイングリップの改善に対して大きく有効だと言う事がわかっています。
メルセデスは強力になりすぎたディフィーザーが、自分の首を絞めていると思います。
まぁ強力なら少し抜けばいいだけですが、うまみは減りますね。
メルセデスはフロアトンネルの再設定orレーキとフロアサイドシール、どっちを選ぶか?
ロングホイールベース+フラットレーキの組み合わせで常勝し続けたメルセデス、このパターンからの脱却卒業出来ていない?
レッドブルの真似をする必要無いが、早く次のステップに進化しないと、昔のマクラーレンMP4シリーズの二の舞になりそう?
ハミルトンがモチベーション失うマシンで無い事を願います。
つい空力ばかりに目が行きがちですが、サスペンションジオメトリーも着目しないといけないですね。
一体誰が考え出したのか?
過去にサスペンションジオメトリースペシャリストで実績ある方は、
ウィリアムズのパトリック・ヘッド、マクラーレンのジョン・バーナード、フェラーリのグスタフ・ブルナーだと思っています。
ブラバムのゴードン・マレーもサスペンションジオメトリースペシャリストだと思うのですが、空力スペシャリストでもある。
ピエール ワシェではないでしょうか?
可夢偉が3位になった時のザウバーに在籍しており、当時のマシンがタイヤに優しいのはワシェの貢献だとレッドブルが見抜き引き抜いたと何処かで見ました
今はテクニカル ディレクターだったと思います
リアのサスペンションジオメトリーを見たときに、トラベルのベクトルが地面をより強く蹴り出せる向きに最適化されてるのかなぁとは思いました。
柔らかいスプリングとの合せ技でマックスが好む素早い脱出との相性がいいのかもしれませんね。
レッドブルは22年規定で、これまでの蓄積を捨てて冒険してきたなと思っていたのですが、斬新な設計の狙いは、これまでのレーキ哲学を維持するためだったかもしれない、ということですね。
メルセデスのゼロポッドもある意味、これまでの流れの延長線上と言えるので、やはりトップチームは過去の成功体験を踏襲しがちというところでしょうか・・・。
一部の声として、レーキ角を付けて車高が落ちた時にフロア前端が先に接地するようにすることで、フロア後端が接地してしまうことを防ぎ、ポーパシングが起きないようにしているという分析がありますが(マクラーレン、レッドブルのDay3)、そういう効果があるのかどうか気になります。
先にフロア先端が付いて、後からリア、なるほど興味深い考察ですね。
先の記事に書き込みさせてもらった者です。
私の脳内妄想を理論的に分析再構築補完し図解付きで分かりやすく解説(しかも短時間で)した手腕に脱帽&感謝です。胸のモヤモヤが晴れてスッキリ致しました。
このジオメトリーはアルファロメオも同じ思想のものを採用していると見受けられ、注目しています。ボッタスはC3でメルセデスのC5に遜色ないタイムで5位ですし、本戦でも速ければ来年のマシン群のトレンドジオメトリーになるかも、です。
サスペンションは難しい。
もっと複雑な曲率軌跡になりますがそこは無視、タイヤの抵抗も無視したものです。
運動方程式に則った力の向きを表しただけとなります。
リアサスペンションに関しては、どのチームもこんな感じですね。
なるほど 後ろ斜め上方に動くと フロントアクスルから離れて行く、だから プッシュロッドより プルロッドの方が具合がいい
逆に リアはストロークすると リアアクスルより前にあるサスペンションユニットに近づくから、プッシュロッドの方が都合がいいんですね
ついでに 重心は上がってもユニットがシンプルになり僅かで、アンダーフロアが自由になると言う事でしょうか
ロッドの違いが回転運動に与える影響は??です。
インボードサスペンションの置く場所、ロッドの太さなど、空力・スペース・重心に関わる部分が優先されると思います。
旧RBタイプの前方フロアまで張り出したプルロッドの場合だけ特殊なんですよ。メルセタイプのデフ周辺に収まっているプルロッドは前傾角が付いてもロッドの移動量に変化は無いのですが、RBタイプは前傾角を付けると移動量が減ります。
図に書くと解りやすいです。まず水平のアッパー/ロワポイントを書き、前方に張り出したロッドを書きます。隣に前傾角を付けたアッパー/ロワポイントとロッドを書きます。そして次、前傾角タイプのタイヤの軌跡が垂直になるように紙を回してみると…あら不思議、前傾角タイプはロッドポイントが上がってタイヤの移動量に対してロッドの移動量が減ります。
と、いうのが私の妄想です。
あの長いリアプルロッドにそんな秘密が・・・。
2021年RBはリア車高制御に苦労していた印象でした。
メルセデスが簡単に制御して追いついてきて、ふむふむ、やばいです。
サスペンション沼に入ってしまったかもしれない(笑)
フロントにプルロッドを採用したレッドブルとマクラーレンですが、
ノーズの下に潜って床下からユニットのアジャスト調整するのでしょうか?
それともノーズ上部のアクセスホールから深く手を入れて上から調整するとか?
レッドブルのレーキ制御の場合は、フロントは低くリヤは高くして前傾姿勢を取るので、フロントよりもリヤを調整する事が多いかと思ったので、フロントのプルロッドとリヤのプッシュロッド式の組み合わせはセッティング変更にとっても都合良いかと思うのですが?
サスペンションの調整は、多分ノーズを外したら工具が届くとか?そんな感じでしょうか。
ライドハイトはロッドの途中に調整機構があって簡単に出来ます。
画像のマクラーレンMCL36A、プルロッドの車体モノコック側付け根にある六角ナットが見えますね。このナットを緩めてロッド長さ伸縮させてライドハイトを変化させる。
バルクヘッド断面にフロントブレーキ用のマスターシリンダーが2個備え付けられているので見え隠れしていますが、
左右ロッカーアーム回転軸にあるトーションバースプリングの取り付け穴が2箇所(左右1つずつ)何処かに見える筈ですが、この画像では確認出来無いですね?
プルロッド式はロッカーアームが下側にあるので、おおよその位置は見当出来るのですが?
レッドブルRB18もサスペンションジメオトリーが違っていてもレイアウトはマクラーレンMCL36Aと似ていると思っています。
ご存知とは思いますが 明日3/18 20時 BS1
単なる再放送だと思ってました、、
新しい1時間の番組ですね。
録画しなきゃ!
今年はシーズン中にサスペンションのアップデートは可能ですか?他のチームは真似できますか?
ギアボックスは凍結と聞いたのですが
ホモロゲですね。
今後のアップデートは2年単位になるはずですが、期間はわかりません。
とりあえず、今年はもう変えようがありません。
そういやこういうアームのセットアップってラジコンでもイレギュラーなシチュエーションでやることありましたねえ。
はじめまして。
レーキ角のつき方について興味深く読ませて頂きました。
素人意見なのですが、ホイールを中心にした力のかかり方での説明に少し疑問を感じました。ホイール自体にどんなに下向きの力がかかっても、すでに地面に接しているのでそれ以上下がることは無いように思えます。
どちらかというと、減速時にボディが慣性にて前方へ向かう力をサスペンションの取り付け部が角度をつけて受けることによって、下向きの力に変えて車高を下げているのではないでしょうか(取り付け部が水平なら車高変化は起きず、リア側のような角度なら車高は上がる)。
タイヤの動きでは無く、車体にかかる力の向きを表したものです。
あなたの考えと同じ意味になります。
すみません、読み直したら本体にかかる力と表現されていましたね…。写真の印象に引っ張られて勘違いしてしまいました。失礼致しました。
いつも詳しい考察、興味深く拝見させていただいています。
当方、物理はからっきしの素人なのですが、加速時のフロントタイヤの力の向き(水色の矢印)は、前向きになるのでしょうか?
フロントタイヤは駆動輪ではないので、減速時ほどではないにしても摩擦によって後ろ向きの力がかかるような気がするのですが。
とんちんかんな疑問ならすいません。
タイヤ回りに起こる駆動力や摩擦では無く、単純に運動エネルギー(力)とお考え下さい。
前に加速している時、運動エネルギーはどの位置で測っても前を向いているはずです。
じゃなきゃ、車は前には進みません。