2022年のトンネルフロアはデザイン自由度が高く、各チームが全く違う思想の元に作り上げている。
ドラッグが少ないダウンフォースを作る事が出来るフロアは、F1の空力開発において永遠のテーマです。
各マシンのフロアデザインが段々と見えてきて、レッドブルが如何に異質なのかがわかっています。
80年代から活躍するニューウェイ氏は、独自の解答を我々に示しています。
今回はセンターフラットエリアについて考察します。
トンネルフロアのセンターフラットエリア
トンネルフロアは、そのトンネルのデザインばかりが注目されています。
ポーパシングの原因となるキックポイント(ディフューザーとフロアの境目)で起こる流れの詰まりは、非常に問題視され世界中で議論の対象となっています。
しかしフロアの負圧発生ポイントは、トンネルの流れだけで起こるものではありません。
路面に一番近いセンターフラットエリアも、負圧を発生させるポイントです。
メルセデスW13のフロア上面
フェラーリF1-75のフロア下面

メルセデスとフェラーリのセンターフラットエリアは、雫型デザインと言えばいいのか、横幅を広げずになだらかな曲線を描いてリアディフューザーに繋がっています。
流れを乱さず、綺麗に速く流したいと言う意図が感じられます。
レッドブルRB18のセンターフラットエリア
レッドブルのセンターフラットエリアは、先端から横幅が広い、中間の横幅は圧倒的に広い事がわかります。
中間のトンネルはフロアサイドへ逃がされています。
下面から見てもその形状は段付きになっており、綺麗な曲線を描いているチームとは全く異なります。
なぜこんな事をするのだろうか?
理由は簡単です。
路面に一番近いこのエリアの面積を広くして、グラウンドエフェクト効果を大きくしたいからです。
このセンターフラットエリアは、過去に使われていたフラットボトムなのです。
90年代前半まで使われていたフラットボトムは、大きな負圧を発生し、路面に近いためバンプによってストールしてしまう事が問題となっていました。
1995年からステップドボトムになり、センターフラットエリアは幅が500mmに規制されてしまっています。
フラットボトムは空気を多く流す必要は無く、ディフューザーで抜きだすだけで簡単に流れが速くなり負圧を発生させる事が出来ます。
2022年新規定において、この幅の自由度に気づいたニューウェイ氏の奇策中の奇策だと思います。
センターフラットエリアを生かす小型ディフューザー
空気は、広い空間の方に逃げるように流れます。
路面との空間が狭いフラットエリアは空気が流れにくくなってしまう、多くの空気は必要無いが流れない事には負圧は発生しない。
フラットボトム時代のように、ディフューザーが直接つながっているなら後ろから抜き出す事が出来ますが、このトンネル形状でそれは無理です。
どうすればいいのか?
ディフューザーを付けてしまえばいいのです。
センターフラットエリアとトンネルやリアディフューザーに繋がる小型ディフューザーが配置されています。




フェンスの形状、キックポイントの空気の詰まりを抑える金属スケートなどに注目が集まっているレッドブル。
この広いセンターフラットエリアこそ、ニューウェイ氏が最もやりたかった事だと私は思っています。
まとめ
画像角度が悪く、下面フロア形状のわからなかったところが、フロア上面の画像によって明らかになりました。
レッドブルのセンターフラットエリアはなぜ広いのか?
これに気づき、フラットボトムに行き着き、フロア先端からトンネルへ流す空気が少ない理由の全てが繋がりました。
フラットボトムなら多くの空気は必要ないからです。
レッドブルのトンネルフロアは、ベンチュリー効果が前で一度あり、キックポイントで二度目があります。
そして、センターフラットエリアでの負圧発生面積多いです。
フェンスはリア車高が上がったレーキ姿勢用のフロアサイドシール用ボルテックスを発生させます。
ありうる限りのソリューションを織り交ぜ、負圧の発生原理を分散してバランスをとっています。
長い年月をF1で過ごしてきたニューウェイ氏ならではのデザインでしょう。
この人を超える空力スペシャリストは永遠に現れないだろうね。
トンネルフロア規定になって、トンネルフロアでDFを稼ぐという概念に捉われず、フラットボトムを広げてきたニューウェイ先生、あっぱれですね。 Mは真反対の方針…。
小型ディフューザーを各所に設けていることで、ストール条件の分散(ポーパシング減少)にもなっていそうですね
分散されています。
この小型ディフューザーは、新フロアになってから形状が変わっています。
下面の方は旧型なので、上面の形とは合わないところが多いです。
新の方が、小型ディフューザーの形状が明確になっています。
ウイングカーなのにフラットボトム(驚)
いや~自由度が高いからってそっちに行くか?って感じですね(笑)
でも、このコントロールって難しいと思うんですよね。
これが頭の中で描けてしまうのが、やっぱり凄過ぎる。
何故に他車のボート型底面ではなくRBは弁当箱型?と?でしたが、さすが jinさん目から鱗でした。
減速時のレーキ生成にこだわるのもフラットボトムをキーワードにすればなるほど納得、ベンチュリ部は敢えて高目に設定してポーパシングを起こさず、その負圧で底面から空気を吸いだし流速を上げ広大な「面」での負圧を生み出す、恐るべしニューウェイ先生。
これ世界で何人気づいてるんだろ?気づいて一番悔しがるのは”70年代からの男”バーンさんなのでは?と妄想。
ハイレーキ大嫌いなロス・ブラウンが、F1をベンチュリーカーにしてこれでハイレーキをやめてくれるかと思ったら、ニューウェイの方が一歩上手でしたね。
レギュレーションが大幅に変わっても以前の技術を継承して開発していくのは各チーム同じですが、ステップドボト厶以降しか知らないメルセデスはフロアよりボディ形状に目が行き細ければ細いほどいい(フロアも)と以前の方程式を継承。
ニューウェイはフラットボトム時代からステップドボトムを知ってるから、フラットボトムで得られていたダウンフォースの特性や利点を応用できたということでしょうか。
エンジニアリングはどこを起点にするかは重要なので、フロアを起点にしたレッドブルはフロアが良ければボディやウイングを柔軟に変えられるでしょう。
反対にメルセデスはフロアの問題がボディに起因するようなら、ボディを変えてない限り何をやっても付け焼き刃になってしまうかもしれませんね。
冒頭でも述べていますが、F1マシンの空力で重要なのはフロアです。
フロアを機能させる為に、その他のデザインが決まります。
メルセデスはフロアを生かすためにビームウィングへ大量の空気が必要と考えた。
但し、ローテクなサスペンションでは、その最高ダウンフォースに耐えられない。
メルセデスには復活してほしいけど、はっきり言えば2年後が最短です。
来年も厳しいです。
レッドブルのレーキは、単純にフロントが上がらない事で発生します。(0.3°はローでもハイでもないレベルです)
ダウンフォースが減少する低速度域、普通なら全てのサスペンションの負荷が減り、車高が上がるのです。
このフロントサスペンションジオメトリーを解明するのが今後の課題かな?w
>ダウンフォースが減少する低速度域、普通なら全てのサスペンションの負荷が減り、車高が上がるのです。
確かにその通りですね。
これが上がらないって事は、元々フロントが下がらないって事ともイコールだと思います。
メルセデスは元をたどればティレルですから、一応ティレル009、010、011でグラウンドエフェクトカーの経験が無くはないはずなんですが、当時の経験は紆余曲折を経て失われてしまったのでしょう。
すばらしい考察。
車体中央にはスキッドプレートがあるのでこれが路面に接するほどバンプしても
”小型ディフューザー”部分に空間は残るのでダウンフォースはストールしづらいですね。
重箱の隅をつつくタイプではなくあらゆる状況下でも対応するソリューションと言えそう。
レッドブルがネックになっているヘビー重量の大半は、このフロアパネルが占めているでしょうか?
他チームとパネル単体だけの重量比較は出来ないですが、
それ以外の外装パーツで重量差は無いと思えるのですが?
剛性も確保した上で軽量化も達成されればRB18はグラウンドエフェクトカー最強マシンの称号を欲しいままに?
フロアの剛性は、空力が狙った通りに機能する為に最も重要です。
たわんでも問題ないところを減らしていくしか無いでしょう。
レッドブルの場合は長いフェンスが他より圧倒的に重いです。
フロアパネルなんですが、大きな損傷無ければ年間通じて同じものを使い続けるのでしょうか?
またレースが終了する毎にパネル裏(路面に接触する面側)の損傷箇所を確認チェックすると思いますが、補修が必要な場合に同じ形状に復元するだけで形状の変更(アップデートにあたる?)は認められないのでしょうか?
限られた予算の範囲で出来る事が決まって来ると思いますが?
アルファタウリですら既に変わっていて開幕戦と同じものは無いです。
剛性的に問題ない場所なら補修で済むでしょうし、パーツ交換で問題になるのはパルクフェルメ期間で同じものが用意できない時だけです。
(異なったらピットレーンスタート)
補修に厳密な同じ形状が求められるなら、テープもダメになっちゃいますよ。
レースが終了する毎に形状変更が認められないとは??
アップデートが認められない事になりますよ。
PUとごっちゃになってませんか?クラッシュテストさえ受け直せばモノコックだって変えられますよ。
それに関わる費用は知りません。そんな情報が出回る訳がないでしょう、変な事聞かないでください。
僕のレベルでは画像だけでは気づけないです笑
すごくわかりやすくすぐ腹落ち出来ました!
以前メルセデスのゼロポッドが何故ダメなのか解説してもらえましたが、メルセデスのダメなところ特集なんてのも見てみたいです
あとメルセデス勢が遅いのはパワーのせいなんですかね?
メルセデスPU特有のレイアウトとか関係してないですか?
メルセデスのダメ出しをするとヘイトが溜まりすぎてしまうので自重しています。
フロントウィングからダメです。
前がダメなら・・・わかりますね。
パワーは普通ですが、メルセデスPU勢が軒並みマシンを失敗していて比較すらできない状況です。
ベンチュリー部だけではなく、フロア全体で負圧を生もう、底部ならストレートで車高が下がってもポーパシングは生まれずストールして抵抗も減る、コーナーでは小さなレーキがフロア全体の大きな負圧を生む、あれ、これって去年までのメルセデスのコンセプト?
2020,2021年のメルセデスに似た走らせ方です。
バトルで勝てるストレートスピード、レースラップはコーナーを抑えてストレートでタイムを稼ぐ。
タイヤマネージメントや燃料搭載量が楽です。
ストールしたらポーパシングしますよ、レーキは低速コーナーだけです。
去年後半のメルセデスのストレートの異様な速さは、「ストレートで車高を落としストールさせフロア&ディフューザーを無効化して抵抗を落としたからだ!」という推測記事をあちこちで見たもので。
RB18もレーキが消え車高の落ちるストレートで底面は仕事が無くなり、細く高めのベンチュリ部のほどほどの負圧のみなので抵抗が少なく最高速が高いのかと。
復活ベンチュリーカー時代になってもレーキに拘るRBに何故?と思っておりましたが、”フラットボトム”のワードで氷解いたしました。慧眼に感謝いたします。
ちなみに、あの変態Fサスは加速時にも減速時にもノーズダイブします。可動時は常時ノーズダイブの変態サスです、私の脳内シュミレーターでは。
こんなにも考察の余地があるマシンになるとは全く予想だにせず、、
去年も最高峰のシーズンだと思いましたが、今年はまた違う趣の楽しさがあり、いつも楽しく拝見しております。
レッドブルのフロントタイヤ後方まで突き出たフェンスですが、あれはメルセデスのフロントウイングよろしく、速度によってたわんだりしたら面白いな、ということをふと思いました。
(この部分は全く映像が無いので、以下完全に妄想です。)
速度が上がってくると前方からの風圧により、突き出たフェンスが内側にたわむ。
フェンスに角度が付くことによりアウトウォッシュを強化 & フロア下・外側のチャネルに入り込む空気を制限してフロアサイドでのエアのつまりを防止し、、
フラットボトムが地面に一番近いのだから、ここでダウンフォースが嫌でも発生してしまうはずだ、と思ってました。
ただ、両サイドのトンネルフロアを流れる、流速の早い気流が発生するダウンフォースと、どうバランスするのかは想像しにくかったです。
どうバランスさせるか。それはフラットフロアをうまく攻略する、ということなのかなあ。おもしろいな、新レギュレーション。
今シーズンのペレスは予選と決勝共に乗れていますが、
昨年のハイレーキマシンRB16Bよりも今年のグラウンドエフェクトカーRB18の方がドライビングにマッチングしてるからでしょうか?
後は得意、不得意のサーキットがあるので全てのコースで安定した結果を残せればドライバータイトル争いに加わる事も可能?
マックスとルクレール以外に優勝出来るドライバーだと?
次々回モナコGPは、ペレスの得意では無さそうですが期待します。
マシン的にアンダー傾向である事がペレスには合っています。
フェラーリよりレッドブル2台共に速くて、マックスに何らかの不利があれば優勝のチャンスはあるでしょう。
前半戦までなら、単純に乗れて速い時に勝てるチャンスはあります。
前半戦で言うと昨年優勝したアゼルバイジャンGPは、可能性どうでしょうか?
終盤でマックスの不運なリタイアがありましたが、代わりに見事ペレスがハミルトン押さえてレッドブル移籍後初優勝した。
今シーズンのレッドブルRB18特性に合っているかどうか?
少なくとも同じセカンドドライバーのサインツよりは、マックスとルクレールに次ぐ3番手ポジションに近い位置にいる。
まだ初優勝していないサインツと通算2回優勝経験のあるぺレス、
今シーズンのフェラーリとレッドブル、どちらのセカンドドライバーが先に優勝するか?
それも非常に楽しみです。
フラットボトム時代の全面が真っ平なパネルと違って、
この複雑な凹凸のフロアパネル成形では、表と裏(路面に接触する面)のどちらから型を取っているのでしょうか?
モノコック(サバイバルセル)であればメス型成形なので表面(塗装している側)が型と接触している?
セパレートカウルを被せた時代のモノコックはオス型成形でしたが?
https://us.motorsport.com/f1/news/how-is-an-f1-car-made/7626324/