2017年のF1はすでに11戦を消化して夏休みに入っています。ホンダは今年パワーユニットを新設計して臨みパフォーマンス、信頼性を昨年より悪化させてしまいました。
11戦目となったハンガリーにてようやく昨年レベルのギャップに復帰しています。開幕からのギャップを比較・分析してみようと思います。
タイムギャップ一覧
予選のタイムギャップと各サーキットのデータ・全開率の一覧になります。全開率はマクラーレンが公表しているもので多分昨年のデータだと思われます。今年は全開率が上昇しているので正確とは言えません。
予選 | ギャップ | 1周(km) | 全開率(%) | 決勝順位 |
---|---|---|---|---|
AUS | 3.237 | 5.303 | 70 | 13 |
CHN | 2.694 | 5.451 | 55 | R |
BRN | 3.285 | 5.412 | 64 | 14 |
RUS | 3.466 | 5.848 | 60 | 14 |
ESP | 1.899 | 4.655 | 65 | 12 |
MON | 1.071 | 3.337 | 50 | R |
CAN | 2.234 | 4.361 | 67 | 14 |
AZE | 3.741 | 6.003 | 56 | 9 |
AUT | 1.351 | 4.326 | 66 | 12 |
GBR | 2.818 | 5.891 | 66 | 11 |
HUN | 1.273 | 4.381 | 55 | 6 |
各サーキットでの比較
1周5km以上になるとギャップが大きくなっている。距離が長いためにタイムギャップが増加するのは当たり前な事ですが数値化するとよくわかると思います。
全開率もその数値に比例してギャップが大きくなっている。アゼルバイジャンのような特殊なコースでは全開率が低いが低速からの加速ポイントが多い事と2.1kmにも及ぶ全開区間があるためにギャップが大きくなる。
ホンダパワーユニットの状況
開幕から4戦目までは信頼性不足やパワー不足が露呈し、ただただ走らせていた状態。比較できる要素はほとんどない。
最初の好転のきっかけとなったのはスペインでのアップグレードからで、エンジンマッピングの見直しが功を奏しギヤチェンジ直後の振動問題が大幅に改善すると共にパワー面でも約13.6馬力(10kw)程度向上したとみられる。
8戦目のアゼルバイジャンにてICEのスペック3をフリー走行でテストすると、次戦から本格稼働させているがMGU-Hのトラブルに足を引っ張られて実力はわからずじまい。実質30馬力(約22kw)の向上だとホンダ側から情報が出ている。
直近のハンガリーではスペック3が熟成されエンジンマッピングの改良に加え、各ユニットとの連携も改善している。空気抵抗が多くてもフルダウンフォースで走るハンガロリンクだったため、パワーギャップも明確になり。
ルノーに対して20kw(27馬力)の遅れ、フェラーリに対して40kw(54馬力)の遅れとの試算ができている。
マクラーレンホンダ総合分析
マクラーレンのエンジニアがヨネヤさんに伝えた情報をもとに解析します。パワーエフェクトはシルバーストン0.25s/10kw、ハンガロリンク0.15s/kwとして計算しています。
メルセデスにはハンガロリンクにてパワーで0.8秒の不利があると言う情報からの推測値です。
GP | ギャップ推測値 | 車体 | PU | 総合 | パワー差 |
---|---|---|---|---|---|
GBR | 対メルセデス(Q3モード) | 1.5 | 1.3 | 2.8秒 | 53kw(72馬力) |
GBR | 対フェラーリ | 1.3 | 1 | 2.3秒 | 40kw(54馬力) |
GBR | 対レッドブル(ルノーPU) | 0.8 | 0.5 | 1.3秒 | 20kw(27馬力) |
HUN | 対メルセデス(Q3モード) | 0.2 | 0.8 | 1.0秒 | 53kw(72馬力) |
HUN | 対フェラーリ | 0.6 | 0.6 | 1.2秒 | 40kw(54馬力) |
HUN | 対レッドブル(ルノーPU) | 0.4 | 0.3 | 0.7秒 | 20kw(27馬力) |
低速サーキットにおけるマクラーレンの車体側のギャップはかなり少なく接近できている。高速サーキットと言われるシルバーストンでの差が見苦しいほど大きいのがわかる。
単純にパワーの改善だけで追いつける代物ではない、高速域における空気抵抗とダウンフォースのバランスをとって対処する必要があるでしょう。
シルバーストンにおいてはメルセデスのロングホイールベースによるフロアの長さを生かした、ダウンフォースの発生量の差が表れた結果だと思われます。
今年のマシンにおいては空気抵抗が少ないフロアでのダウンフォース発生量がTOP3チームより劣っていると考えられます。テストでつまづき他チームより遅れて開発がスタートして不利な状況ではありますが他チームと比較するとノーズ下のターニングベイン、バージボード、フロア空気穴の追加などまだまだ改良が少ない。
シーズン中の開発力には定評があるマクラーレンですので今後も改善してギャップを縮めてくれる事に期待します。
ホンダについてはやっとスタートラインに立った程度、改善度合いだけでみれば約40馬力以上のパワーアップに成功していて開発における良い波に今乗っていると思います。このまま止まる事無く波に乗り続ければ希望が見えてくるような気がします。
ベルギーでスペック4の投入があるのではないかとの憶測情報も出ておりホンダの話題が尽きないという事は何かあると思ってもいいのかも・・。
とにかく後半戦に向けホンダの皆さん頑張って下さい。
「数値比較化まとめるとHONDA PU(+マクラーレン車体)現状が明確化しますね!」(毎回の事ですが、この比較コーナーが、結局HONDAの現状理解がリアルに出来て、1番楽しみの記事シリーズです!いつも有難う御座います)
機械系素人質問ですが…
「現F1のICE(内燃機関)HCCI系、マツダのこの先のSPCCIは今後のパフォーマンス(パワー・燃費)展望的にどう推測されるのでしょう?」
F1のICE(内燃機関)に取り入れられているという、マルチジェットインジェクター技術系 =? HCCI(Homogeneous-Charge Compression Ignition:予混合圧縮着火)と、今月発表された、マツダさんが開発したSPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)と比較し、今後の展望的パフォーマンス(パワー・燃費etc)はどう推測されるのでしょうか?
(素人な当方も、今後の市販車も根本的にEV+ICEのハイブリット系希望です。止まると静か×走る時は時々スポーツモードでSoundも楽しむHappy感!それに、やっぱりフルに充電池は面倒的な…)
レースの世界でマツダのSPCCI(圧縮自動着火)を使うのは今のところ困難だと思います。
現状のターボエンジンは空気量が多く自動着火してしまう現象(ノッキング)をどう抑えるかが焦点。
空燃比は14.7(空気):1(燃料)が完全燃焼の理想の数値だと言われていますが、最大加給圧が5barにも達するF1のICEはこれを大きく上回っているはずです。
少ない燃料で大きなパワーを得るには空気の力を最大限生かす事が必要でそれで今年ホンダはコンプレッサーを大きくした。
希薄な燃料を速くシリンダーに供給するためにジェットインジェクターを導入した。
燃えにくい希薄な混合気を燃やすために放射着火させる。
私もこんな程度の知識しかありませんので後は専門家の方がいましたらコメントお願い致します。
管理人様へ
ICE及びHCCIについて回答ありがとうございました。
安心しました。
究極の最先端技術を競っているF1や、HONDAにはHRCさくらがあるのに、もし上記のICEの技術が(F1の世界より)優れていることなどあるのかなと不安感ありました。市販車技術としては優れている様に推測される印象ですね。
HONDAも、F1に加えて、市販車へのICE・MGU-Hなどの技術・デザイン・安全自動運伝系も引き続き頑張って下さい。
F1のはHCCI と言ってはいけないでしょう。火炎伝播燃焼ではなくHCCI は自着火で同時多発的に燃焼するからこその頭文字。ジェットインジェクターを使っといてHCCI とはこれいかに。予混合で希薄燃焼なのかもですが副燃焼室を利用したジェット火炎燃焼エンジンでは。高速で燃える為、マスコミがセミHCCI と言っでるだけで全く別物ですよ。
あくまでHCCI は燃費と排気物質が少なく環境に優しいと言われるものでレース向きとは思えません。