F1では大まかなレギュレーションの他に、細かい解釈の違いを正すためにTD(テクニカルディレクティブ)と呼ばれる技術指令が存在している。

燃料流量は流量計の数値が規制を上回らなければ、違反にならないと解釈したフェラーリは、デジタル信号の周波数を操作していたらしい。またERSエネルギーフローにも仮想ダブルバッテリー化などの疑いもあった。

燃料以外の物質の燃焼用空気への追加は禁止されると規定されているのに、ピストンやバルブ潤滑用オイルが、燃焼室内へ漏れるのは防ぎようがないため、オイルを意図的に増量させ混入させたりしていた。

様々なグレーゾーンを一掃するために、2020年は厳しいTDが多く発行されている。

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2020年PU関連TD(テクニルディレクティブ)

技術指令は、エネルギー回収システム、オイル消費量、圧力および温度センサー、燃料消費量測定の4つの領域に分類されました。これの策定には、2019年最大の疑惑を作り出したフェラーリが大きく協力しており、流量違反が証明出来なかったとされながらも、F1と裏取引的なものがあったと推測されている。

そのおかげで、あらゆるグレーゾーンに対応するTDが発行された。

TD/018-20 エネルギー回収システム

ERSシステム用の新しいIVTセンサー(より電子的に洗練されたバージョン)を開幕戦オーストリアで、メルセデス・フェラーリ・レッドブルに導入。その後、他チームにも随時導入する。

IVTセンサー(電圧と電流の測定)は、電力ユニットのさまざまな部分の間の電気エネルギーが、エネルギーブーストを最大120kWに制限する規制を、覆すような方法で分配されないようにするために使用。

TD/019-20 オイル消費量

今年施行された100 kmあたり0.3リットルの新しい制限に加えて、FIAがオイル測定を行う方法について明確にしました。

最高の精度、エンジンに投入されるオイルを物理的に測定するなど、FIAが必要に応じて実装できる新しい測定およびシーリング手順、チームが燃料に化学物質を追加するのを助けるために、余分なオイルを追加したり潤滑剤を使用したりできないようにします。

TD/020-20 圧力および温度センサー

FIAは、測定がどのように行われているかをチームが明確にするために、燃料流量計とパワーユニットの圧力および温度センサーに関する情報の概要を説明しました。

TD/021-20 燃料消費量測定

タンク外に許される燃料量は2.0ℓ⇒0.25ℓまで減らされ、チームがアクセスできる流量計の他に、ランダムな周波数で測定されるFIAしかアクセスできない追加の流量計が搭載された。この2つの常に一致している必要があります。

燃料流量は、10,500rpmで最大100kg /時間に達するまで、回転数とともに指定された速度で上昇していました。

エンジンの出力に流量を一致させるパーシャルスロットルに関する追加要件があります。50kW未満では、燃料流量は10kg /時間を超えてはなりません。

出力が増加すると、設定された式で決定された速度で流量が増加する可能性があります。これにより、タンクとインジェクターの間に何らかの形で貯蔵され、フルスロットルでの流量を増やすために使用される可能性のある過剰な燃料が、ロースロットルで供給されるのを防ぐことができます。

TD/037-20 単一エンジン燃焼モード

2020年イタリアGPより急遽導入された、エンジンマッピングに関する技術指令。

使用されているモードが多すぎて複雑であるため、FIAが特定のイベントの重要な瞬間にPU関連のすべての規制や規定への準拠を監視することは非常に困難である。

現在実施されているICEモードへの変更は、ドライバーが単独で車を運転せずに、単独で車を運転していないことを潜在的に意味する可能性があります。

エンジンモードは、各メーカー毎に各グランプリで全て同一のモード使用義務が適用される。チームやドライバーによる違いは許されなくなり、ワークスやカスタマーの違いを無くす。

監視されるエンジンモードのパラメーター

  • 燃料流量
  • 風量
  • ブースト圧力
  • 燃焼段階
  • 注入時間
  • スイッチング速度
  • 燃料温度
  • 空気圧バルブシステム、クランクケース内の圧力
  • 油圧
  • ウエストゲートバルブタイミングとMGU-H作業時間
  • 出力シャフトで測定されたパワーの制御

 

※TDは、開発における知的財産保護のため、一般公開されていません。これらの情報は主にチームのエンジニアから海外ジャーナリストにリークされたものになります。

まとめ

流量計通過後に燃料を貯めて特定のポイントで放出したり、様々なオイルを燃料の添加剤に使用したりと、様々な方法で燃料エネルギーを増加させていたが、それらを調査からどのように禁止するのかに時間がかかりすぎていた。

グレーゾーンを突き詰める開発はF1の醍醐味とは言え、レギュレーションの大筋から大きく外れてしまっていた状態を、一気に転換させた2020年、PU導入から7年目にやっと本来の目指すものになったと思われる。

 

ルノーとホンダはグレーゾーン開発には消極的で、本来遵守するべき本筋を外すことなく真面目に開発していたと思う。そのせいで後手後手になり、いつも差を付けられていた。

2020年では、フェラーリは見るからに力を失い、メルセデスは基本的な部分を更に伸ばし一歩抜きんでた。そして、ルノーとホンダには差が無いように感じた。

ストレートエンドスピードは下がり、エンジンの出力に燃料流量を一致させる追加要件も、十分に機能している事が確認できたシーズンだったと思う。

 

2021年パワーユニット最低重量は、145⇨150kgになる。これは材料の規制を増し、高価な材質の使用を規制するためのもの、これによりメーカー間の差を更に近づけるものになるだろう。