F1の1,600ccシングルターボエンジンは単体で850hpを発生する。
コンプレッサーで圧縮した空気をエンジンに送り込むが、高温になった空気を冷やすためにインタークーラー(チャージ・エア・クーラー)が使われる。
インタークーラーはチーム側が用意するものとなっているが、フェラーリはパワーユニット一体型で供給、メルセデスは2022年から水冷インタークーラーを希望に応じてセット供給するようになっている。
メルセデスの水冷インタークーラー
メルセデスはSynergistic Air-breathing Rocket Engine (SABRE)の開発過程で得られた水冷インタークーラーを使用している。
Reaction Enginesのpre-Cooler技術が応用されています。
水冷インタークーラーは円錐状になっている。
インタークーラー用ポンプ(緑色矢印)があり、クーラント用のパイピング(青色矢印)が伸びているのがわかります。
インタークーラー用ラジエーターは左右振り分けになっているだろう。
空冷インタークーラーを使用しているマクラーレンは、それが収まる場所が空洞化している。
アストンマーチンとウィリアムズはサイドポッドから空冷インタークーラーが消えており、今年からメルセデスの水冷インタークーラーを使用している。
SABREとは逆の流路を辿るF1用インタークーラー
超高高度用のジェットエンジン+ロケットエンジンでは、上図のような空気の流路が形成される。
F1用では流路が逆になり使用されている。
メルセデスの円錐型は、このロケットエンジンの形に似ています。
あぁ~それで宇宙技術が・・・との報道が多かったのかな?
フェラーリも環状(円筒)型の水冷インタークーラーになっており、今後の熱管理技術において当たり前になっていくと思われます。
環状型インタークーラーは熱交換の技術革新
Reaction Enginesがイギリスとアメリカの共同宇宙開発なら、conflux technologyはオーストラリアの宇宙開発を担っている。
どちらもマイクロチューブ技術と金属3Dプリンターを使用している。
confluxによると従来の箱型のインタークーラーより
- 水側の圧力損失を82%削減
- 湿重量を39%削減
- 空気側の圧力損失を 24% 削減
- 15% 小さいコアボリューム
- 大幅なコスト削減
が達成されていると言う事で、かなり高い改善数値が示されています。
水冷は空冷に比べて、クーラントを使用する為に重い、ウォーターポンプ用の出力が必要(エンジンパワーを使う)など、大きなメリットは無かったけどここまで大きな改善数字が示されるとなると、重量とスペース面で結構な差がありそうです。
ルノーの水冷インタークーラー
アルピーヌ・ルノーの水冷インタークーラーは箱型で昨年までよく見られた形状です。
まとめ
水冷インタークーラーは、2014年よりメルセデスチームとフェラーリPU勢が使っています。
2022年ルノーも水冷になり、空冷はRBPT(ホンダ製)とマクラーレンのみの計3チームになっています。
来年にはマクラーレンも使用するとみられ、空冷はRBPTのみになるでしょう。
ホンダ製のコンプレッサーは圧縮空気を左右のインタークーラーへ導くためにツインアウトになっており、この水冷を使うには大きな壁があります。
もうコンプレッサーを変更する事は出来ないので、RBPTは2025年まで空冷となるでしょう。
とは言っても勝ちまくっているレッドブルなので、この差がどれだけのものかと言うと正直わからない。
古典的でアナログ的管理な空冷にもメリットがある。
サイドポッドの大型化によってスペース的なデメリットが大きく減っているのが救いかもしれない。
宇宙技術とは、これの事でしたか。
以前、メルセデスの宇宙技術とは何か?探っていた時に、同じような画像が複数ヒットしていたので、なるほど!と思いました。
ホンダはゼロポッドが主力になるような事が無い限りは、困らないと思ってます。
ならないでしょうし(笑)
まぁ空冷は本田宗一郎氏が根幹としたものですからねぇ・・・
ルノー新型PUの画像を見たのは初めてです。有り難うございます。
セパレート式になったので、もっとシンプルで整然としたレイアウトかと思いましたが、意外とゴチャゴチャしてビックリです。笑
現在はアルピーヌのみの単独供給(アルピーヌが実費ルノーワークス)ですが、いずれ2チーム目(カスタマーチーム)が現れるですかね?
そう言えばマイケル・アンドレッティーがオーナーとなる11番目のF1チームにルノーPUが搭載供給される話が有りましたですね?
メルセデスPU用水冷インタークーをメルセデスワークスのみが使用していたのを、今シーズンからアストンマーチンとウィリアムズにも供給していたのですね?
特にウィリアムズは、メルセデスとの技術提携を強化していただけに納得出来ます。他のPUサプライヤーに乗り換え出来ないですね?笑
ウィリアムズFW44が開幕戦から使っていた小さなサイドポッド(メルセデスのゼロポッドには到底及ばないですが)に合わせての対応?
それと昨年までラッセルを預かって育ててくれた御礼も兼ねた?笑
マクラーレンは、メルセデスPUカスタマーだけれどもメルセデスにとってはライバルチームにもなるので水冷インタークーラーの供給を遅らせている?
考え過ぎですね?
雑誌のホンダPU総集編を見ると今年はCB2は使えないと書いて有ったんですが、特に問題はなく今年も使えてるんですか?
本当だ、規則変更により2022年以降は適用できない。って小さく書いてあった。
なんだよFIAめ、メ!だな。
Reaction EnginesのSABREの技術が使われている事はゼロポッドが登場した時に話題になり、ここでも取り上げていたように思いますが、何か新発見とかアップデートがあったのでしょうか?
今までメルセデスの水冷インタークーラー本体の全体像は、画像で見れる事がありせんでした。
今回初めてF1iによって明らかになったんです。
また、クーラントパイプが左右に分かれている事が明らかになり、それに使われるラジエーターの容量を解析しやすくなります。
凄く単純な質問で恐縮するのですが、
水冷インタークーラーは、直接走行風を当てなくても冷却出来るので設置スペースさえ確保すれば何処にでも置ける?
空冷インタークーラーは、必ず走行風を当てないと冷却出来ないので左右サイドポッドでないと設置出来ない?
って感じでしょうか?
そうです。
コンプレッサー⇒インタークーラー⇒エンジン、この距離を縮める事が出来るので、レスポンスが向上すると言われています。
また、停止中もクーラントが流れる事によって、吸気温度を下げる事が出来ます。
徐々に温度が上がっていき限度はありますが、空冷よりその点でも優れています。
有り難うございます。
すいません。最後、もう1つだけ質問?
空冷インタークーラーの場合、年間通じて同じ容量大きさの熱交換器を使うのでしょうか?
サーキットや外気温によって大きさを変えるのでしょうか?
サイドポッドの内部を変える⇒内部流路が変わる、重量バランスが変わる⇒結果として色々変わる。
ただでさえ、作動温度ウィンドウが狭いタイヤなので、そのような調整はしません。
内部温度の変更は全てアウトレットで行います。