2019年第2戦バーレーンGPは予選と決勝共に、レッドブルはトップ争いに全く絡めない状況だった。トラクションが悪くアクセルを踏むとスライドしてしまう。最大の武器であるコーナースピードの半分を失ったも同然で、それはストレートスピードにも大きく響く結果となっている。
そんな状態でもフェルスタッペンは巧みなドライビングで4位、ガスリーはなんとか這い上がり8位、アルボンは初入賞の9位となった。
予選タイム差+0.886秒
POS | ドライバー | F | SPD-F | S1 | S2 | S3 | タイム | Gap | Q | Tyre |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | LEC | 297 | 327 | 27.762 | 38.066 | 22.038 | 1:27.866 | 3 | C3 | |
250 | 272 | 295 | ||||||||
3 | HAM | 294 | 324 | 27.946 | 38.137 | 22.107 | 1:28.190 | 0.324 | 3 | C3 |
246 | 271 | 293 | ||||||||
5 | VER | 295 | 321 | 28.138 | 38.331 | 22.283 | 1:28.752 | 0.886 | 3 | C3 |
247 | 269 | 291 | ||||||||
12 | ALB | 294 | 326 | 28.148 | 38.865 | 22.500 | 1:29.513 | 1.647 | 2 | C3 |
246 | 268 | 291 | ||||||||
13 | GAS | 293 | 322 | 28.292 | 38.786 | 22.499 | 1:29.526 | 1.660 | 2 | C3 |
247 | 269 | 292 | ||||||||
15 | KVY | 290 | 324 | 28.534 | 38.808 | 22.512 | 1:29.854 | 1.988 | 2 | C3 |
245 | 268 | 290 |
Q1:アルボンが3セット使い6位通過、フェルスタッペンが1セットで9位、2セット使ったガスリーは14位、クビアトは12位通過となり、ガスリーはあと0.1秒ほど遅ければノックアウトだった。
Q2:フェルスタッペンはなんとか7位通過で、中団勢トップに対していつもの優位性は全くない。アルボンとガスリーはほぼ同タイムで、あと0.1秒速ければどちらかは10位になれていた。クビアトは最終アタックで中古タイヤを装着する間違いがあった。
Q3:フェルスタッペンは新品タイヤが1セットしか残っていなかった、最終の1発アタックで5位となっているが、6位マグヌッセンとの差はたったの0.005秒だった。
決勝タイム差+6.403秒
55周目からセーフティーカーとなっているための差、54周終了時点での+29秒差が実際の差となる。
1周目が終わり、フェルスタッペンは5位をキープ、ガスリーは12位までポジションアップ、アルボンは14位、クビアトは16位となっている。
スタートが良かったボッタスは一時2位まで上がるが、ルクレールとハミルトンにパスされる、そしてペースが上がらない、後ろを走っていたフェルスタッペンはボッタスに抑えられる格好となり、後ろのサインツに猛追される。
4周目ターン4でアウトから並ばれたが、接触して抑えきる。サインツはパンクとフロントウィング交換となってしまった。
10周目にガスリーとアルボンがピットインしてSへ交換する。ガスリーはタイヤ交換に手間取り、アルボンの後ろ17位で戻る。
12周目にクビアトは後ろのジョビに当てられポジションダウンそのままピットインしMへ交換して16位で戻る、この間にガスリーはアルボンをパス。しかしアルボンはガスリーにしっかり食らいついていく。
26周目ガスリーは9位、アルボンは11位、クビアトは15位、ここでアルボンがMへ交換してクビアトの後ろ15位で戻る。
35周目アルボンはクビアトをパスして13位、ガスリーはSでロングスティント中で6位までポジションアップしている。
40周目アルボンはジョビをパスして11位、入賞ラインが見えてきた。ガスリーはMへ交換して12位、クビアトはSへ15位で復帰する。
43周目クビアトはマグヌッセンをパスして14位。
44周目ガスリーはアルボンをパスして10位。52周目にはリカルドをパスして9位となった。
ポジションが固まっていた終盤、ルノーの2台がリタイアして、ガスリーは8位、アルボンは二つ順位を上げて9位となりラッキーな入賞を手にする事ができた。
まとめ
レッドブルとトロロッソのレースでの主な動きはこんな感じです。
クビアトは序盤に当てられてから、なんとなくバランスが悪そうだった、怒りのピットレーン速度違反もしてしまった。ガスリーが上がってくるところは、ちょっと安堵感がありました。今のマシンから引き出せる最大限の仕事はしただろう。
フェルスタッペンは延々と5位キープして正に空気状態、ベッテルのスピン&トラブルにより運よく4位になれた。
ホンダ勢の中で、今回の功労者は間違いなくアルボンだと思う。54周目時点でガスリーから遅れる事約13秒ですからね。こう言ってはいけないだろうが、全く期待していなかっただけに、その速さとレース感などが素晴らしい。
F2の激戦で揉まれてランキング3位は、F1でも十分通用するね。
レッドブルジュニアには期待の新人と言える、ティクトゥムがいるし、好結果の持続がアルボンの生き残る道となる。
レッドブル遅さの原因は?
予選後に行った最高速度の解析からも、レッドブルはドラッグが多い事が伺える。それなのに最大の武器であるコーナーも遅いんですよね、とにかくオーバーステア(アクセルオンでマシンが回りすぎてしまう)に苦しんだとの事。
これはオーストラリアの速度解析からも見えていた部分である。コーナー後半の立ち上がり、よくトラクションが悪いっていいますね。
通常はターンインで発生した遠心力に対して、アクセルオンで直進の力を与えて、マシンを安定させコーナー後半を鋭角的に進む事が理想の形。これが全くもって出来ていない。
レッドブルのマシンの特徴は前傾姿勢の高レーキ角コンセプトです。しかしただのレーキセッティングではなく、ストレートでダウンフォースの増加に伴いリアの車高を下げてドラッグを軽減するシステムです。
※速度の増加に伴いダウンフォース発生量が多くなると、上の絵のようにリアが下がります。リアウィングの角度が浅くなり、前面投影面積も減少する。
バーレーンのレッドブルはTトレイからの火花が半端じゃなく発生し、他チームよりこれは明らかに多かった。リアだけを下げたいはずが、フロント側も大きく下がっているためだと思われます。
これではマシンの角度はあまり変わらずに、ドラッグが多いままストレートを走る事になっているでしょう。
フロントウィングの変更に伴い、アウトウォッシュが少なくなり、バージーボードが低くなった事で、ノーズ側のフロントウィングの端で発生させるY250ボルテックスの増幅効果も減っています。
この二つの事でフロアダウンフォースが大幅に減る、マシンの真ん中で発生するダウンフォースが減っている事になります。ダウンフォースは主にフロントウィングとリアウィングで生成され、それはマシンの端と端となる。
荷重のかかり方がシーソー状態のマシンのレーキ制御は、凄く難しいはずです。ウィングが大きくなり荷重量も増加しているために更に難解となっているでしょう。
※追記19.4.4
高レーキセッティングでいい比較になるのはマクラーレンです。昨年までレッドブルと同じような角度でしたが、ドラッキーでしたよね。リアの沈み込みができなかったからです。
今年は高レーキやめたら、いきなり中団上位に顔を出すようになった。レーキだけ真似したって意味が無い事に気が付くのに4年かかったよ。
ガスリーが遅い理由は?
- レッドブルは他とは違うリアの上下動制御
- フェルスタッペンがリカルドに勝てるようになるまで1年
- チームですらわからない現状のマシンセッティング
この3つで大体の想像はつくでしょうか?
レッドブルの変ったマシン制御になれるのには、それ相応の走行機会とシミュレータ作業が必要です。フェルスタッペンはレッドブルのマシンの動きを体で覚えていますので、現状それなりの対処はできている。
対してガスリーは2重苦な状態であると言える訳です。
ちょっと悪いぐらいでガスリー更迭なんて、冗談でも書いたり言ったりする事は避けましょう。それが真のF1ファンたる心得だと思います。ゴシップサイトの記事に乗せられない事も昨今非常に重要である。(ゴシップだとわかっていて楽しむのは全然アリです。)
これはどんな事にも言えますが、簡単に情報が手に入る時代、本当の情報に辿り着くのは困難である。
私がデータに基づいた解析を重視するのはそんな理由もある訳です。
っと書いてはみたものの、この記事の内容だって私の机上の空論だという事もお忘れなく。
バーレーンでのレッドブルのマシンはトロロッソのマシンより悪かった印象。
マックスがテストで遅い理由が判ったと言ってますが、本当に判っていて改善出来ると事をいのります。
開発はフェルスタッペンの経験にかかっている。
ニューウェイ先生にいいフィードバックが出来ていると良いね。
なるほど腑に落ちる解説ありがとうごさいます。
リカルドがルノーでパッとしないのも、レッドブルスタイルのドライビングからルノースタイルに変えていくのに苦労しているという見方が出来ますね。
その通りですね。リカルドの件は移籍を決めた時点から懸念していました。
彼の最大の武器であるブレーキングからのターンイン速度の速さは、いまのところ見る影もない。
ルノー次第なんだけど、頑張ってほしいです。
フェルスタッペンがリアのグリップ不足の原因分かったといっているので、次戦の上海に期待でしょうか。
非常に面白い内容でしたが、やっぱり凄い複雑なことやってるのだなーと思いました。
レーキ角の前傾姿勢を、高速時の強力なダウンフォースによってリアをより下げ(サスを潰す)、前傾を無くすのですよね。電子や油圧制御ではなく。
サスを潰して吸収される分、肝心のタイヤを押し付ける力は弱くなるので、より柔らかい(潰れる)リアはフロントより相対的にグリップが弱くなりそう、と感じてしまうのは素人的な感覚でしょうか。
コーナー進入前の減速時にフロント沈みこみを大きくして切れ切れのターンインが出きるのが高レーキ角のメリットと思いますが、それ以上にトータルの制御が難しそう。都合良くストレートだけフラットになれば良いのですけど、どうやってコース毎、コーナー毎に最適化するのでしょう。
うーん、考えれば考えるほど難しい。
前後にあるサスペンションには、ヒーブサスと言われる上下動にだけ作用するサスペンションがあります。
それを機械的に制御して管理するのが今の常識。
荷重量変化に対するこのあたりのセッティングが上手く出来ていない可能性がおおいに高い。
安定しない空力による荷重量のばらつきも関係してくるでしょう。
本当に難解で理解できる代物ではないですね(笑)
いつも興味深く拝見させて頂いてます。
解りやすくて且つ説得力のある分析結果ですね、素晴らしい!!
時に専門誌よりもエンンジアリングしてますね、この通りならば次の中国GPは期待出来るのかな? ニューウェイが気が付いてない訳無いので、最適化は別にしても、挙動改善のソリューションは有りそうなので!!
ちなみに、コーナーリング中のタイヤの温度をサーモビジョンで測定してるみたいですね
ありがとうございます。
これもすべてはホンダのせいですよ(笑)
専門誌は事実しか基本公開できないですからね、憶測情報は個人の自由でもあります。
今年はまさかホンダよりもレッドブルを解析しなければならないとはと驚いてます。
彼らの予算や人員でこんなミスをするなんて・・。
次戦でいきなり解決されるほど、F1の世界は甘くないけど、レッドブルって何か仕掛けてくる期待感が半端ないです。
Jinさんの憶測『ダウンフォースは主にフロントウィングとリアウィングで生成され、それはマシンの端と端となる。荷重のかかり方がシーソー状態のマシンのレーキ制御は、凄く難しいはずです。ウィングが大きくなり荷重量も増加しているために更に難解となっているでしょう。』
・現在レッドブルが苦戦している理由が腑に落ちましたし、序盤のメルセデスのガチガチに固めたサスの理由も納得出来ました。
そう考えると、一番素直に走っているフェラーリのフロントウイングコンセプトが序盤の解なのですかね?
・それぞれ違うコンセプトで作って、コンマ数秒を競い合う・・F1やっぱりすごいですね!
フェラーリ式が正解かどうかはまだ答えはでませんね。
モナコが終われば、どのマシンがどんなコースで速いのか、見えてきます。
そこから後半開始に向けてマシンを改良するのか?今年を捨てるのか?各チーム悩ましいところでしょう。
詳しくない自分は、ここで勉強させてもらっています。
普通のF1ニュース見てても、何が何だか分からないからです。
忙しい中大変でしょうけど、中身の濃い情報有難うございます。
いえいえ、私はこれが趣味みたいなものですから、お気になさらずに、がんがん読んでやって下さい。
「なぜ?」をより明確にしていくために存在するブログです。
またF1技術は、最先端のため、色々な人の見識も必要です。コメントで議論をしたり色々な意見を求める事が、ほんとうに大事です。
掲示板とは違った意見の交換が行われるようになっています。
そんなコメントで私もまだまだ勉強させてもらっている身ですから。
お互いマニア路線全開でF1を見て行きましょう(笑)
コメントもお待ちしています。
しばらくhondaの出番はないのでしょうかね?
たとえば、アクセル開度をリニアから指数関数的な増加にして穏やかにトラクションがかかるみたいな?
そのあたりの事はホンダ側も協力しているでしょう。
しかし一番パワーを出さなければいけないのは低中速域なので、車体に頑張ってもらわないとなりません。
ホンダはレスダウンフォースのトロロッソがきっちりとストレートで結果を出しているので頼もしい。
レッドブルも現状では自分の事で手一杯です。
マシンの方が解決したらホンダ側のパワー不足も露呈してくると思われます。