2019年ホンダパワーユニットはトップチームの一角、レッドブルに搭載され復帰以来、悲願の優勝を飾る事が出来た。そして予選1位を3回、年間3勝を達成、初年度のパートナーシップでここまでできたのはレッドブルの豊富なリソースのおかげだろう。
2018年とギャップ比較により、レッドブルとトロロッソがどうのように変わったのか確認していきましょう。
レッドブル2018・2019年ギャップ比較
R | GP | 2018レッドブル | 2019レッドブル | Qgap 改善度 |
PU Spec |
||||||
Q | Qgap | R | Rgap | Q | Qgap | R | Rgap | ||||
1 | AUS | 4 | 0.715 | 4 | 7.069 | 4 | 0.834 | 3 | 22.520 | +0.119 | 1 |
2 | BRN | 5 | 0.440 | R | R | 5 | 0.886 | 4 | 6.408 | +0.446 | |
3 | CHN | 5 | 0.701 | 1 | 0.000 | 5 | 0.542 | 4 | 27.627 | -0.159 | |
4 | AZE | 4 | 0.413 | R | R | 4 | 0.574 | 4 | 17.493 | +0.161 | 2 |
5 | ESP | 5 | 0.643 | 3 | 26.873 | 4 | 0.951 | 3 | 7.679 | +0.308 | |
6 | MON | 1 | 0.000 | 1 | 0.000 | 3 | 0.452 | 4 | 5.537 | +0.452 | |
7 | CAN | 3 | 0.173 | 3 | 8.360 | 5 | 0.839 | 5 | 57.655 | +0.666 | |
8 | FRA | 4 | 0.676 | 2 | 7.090 | 4 | 1.090 | 4 | 34.905 | +0.414 | 3 |
9 | AUT | 5 | 0.710 | 1 | 0.000 | 3 | 0.436 | 1 | 0.000 | -0.274 | |
10 | GBR | 5 | 0.710 | 5 | 9.500 | 4 | 0.183 | 4 | 34.692 | -0.527 | |
11 | DEU | 4 | 0.610 | 4 | 7.654 | 2 | 0.346 | 1 | 0.000 | -0.264 | |
12 | HUN | 7 | 2.374 | 4 | 46.419 | 1 | 0.000 | 2 | 17.796 | -2.374 | |
13 | BEL | 7 | 1.053 | 3 | 31.372 | 5 | 1.171 | 5 | 81.325 | +0.118 | 4 |
14 | ITA | 5 | 1.214 | 5 | 18.208 | 8 | 0.714 | 6 | 59.315 | -0.500 | |
15 | SIN | 2 | 0.319 | 2 | 8.961 | 4 | 0.596 | 3 | 3.821 | +0.277 | |
16 | RUS | 11 | 1.661 | 5 | 31.016 | 4 | 0.682 | 4 | 14.210 | -0.979 | 4b |
17 | JPN | 3 | 1.089 | 3 | 14.295 | 5 | 0.787 | 4 | 59.537 | -0.302 | |
18 | MEX | 1 | 0.000 | 1 | 0.000 | 1 | 0.000 | 5 | 21.399 | 0.000 | |
19 | USA | 5 | 1.257 | 2 | 1.281 | 3 | 0.067 | 3 | 5.002 | -1.190 | |
20 | BRA | 5 | 0.497 | 2 | 1.469 | 1 | 0.000 | 1 | 0.000 | -0.497 | |
21 | UAE | 5 | 0.607 | 3 | 12.706 | 3 | 0.360 | 2 | 16.772 | -0.247 |
レッドブルは前半戦、予選ギャップにおいて+表示が多い、パワー不足と言うよりは車体の差が大きかった。優勝した9戦目オーストリアGPにて空力の方向性が決まり、ホンダがタービンを改善したスペック3からは、パワーによるギャップ改善度が確実にみられる。
スペック4&モービル新燃料が投入され、セッティングが煮詰まってきたメキシコGP以降の改善度は素晴らしかったと思う。高地では空力と冷却、そしてホンダのタービンの強さが際立っていた。
たらればだけど、9戦目から使っているフロントウィングとホンダスペック3が開幕からあれば、少なくともあと2勝はしていたと思う。パートナーシップが決まってからの準備時間が単純に足りなかったし、現場でのオペレーションにおいても初年度だった事を考えれば、この結果は極々自然である。(いや、出来過ぎと言ってもいいかもしれないな。)
トロロッソ2018・2019年ギャップ比較
R | GP | 2018トロロッソ | 2019トロロッソ | Qgap 改善度 |
Spec | ||||||
Q | Qgap | R | Rgap | Q | Qgap | R | Rgap | ||||
1 | AUS | 16 | 3.368 | 15 | 1lap | 13 | 2.150 | 10 | 1lap | -1.218 | 1 |
2 | BRN | 6 | 1.371 | 4 | 62.234 | 12 | 1.647 | 9 | 62.697 | +0.276 | |
3 | CHN | 15 | 2.700 | 18 | 66.330 | 11 | 1.689 | 10 | 1lap | -1.011 | |
4 | AZE | 17 | 2.998 | 10 | 18.030 | 6 | 1.186 | 11 | 1lap | -1.812 | 2 |
5 | ESP | 12 | 2.290 | 12 | 2lap | 9 | 1.837 | 9 | 33.056 | -0.453 | |
6 | MON | 10 | 1.411 | 7 | 24.331 | 8 | 1.105 | 7 | 54.574 | -0.306 | |
7 | CAN | 12 | 1.823 | 11 | 1lap | 12 | 1.681 | 10 | 1lap | -0.142 | |
8 | FRA | 14 | 2.418 | 14 | 1lap | 11 | 2.142 | 14 | 1lap | -0.276 | 3 |
9 | AUT | 12 | 1.744 | 11 | 1lap | 13 | 1.662 | 15 | 1lap | -0.082 | |
10 | GBR | 14 | 2.451 | 13 | 39.129 | 9 | 1.252 | 9 | 66.720 | -1.199 | |
11 | DEU | 17 | 2.537 | 10 | 34.197 | 14 | 1.368 | 3 | 8.305 | -1.169 | |
12 | HUN | 6 | 1.933 | 6 | 73.273 | 12 | 2.115 | 10 | 1lap | +0.182 | |
13 | BEL | 11 | 2.343 | 9 | 105.892 | 16 | 3.916 | 7 | 89.657 | +1.573 | 4 |
14 | ITA | 9 | 2.230 | 14 | 1lap | 13 | 1.323 | 11 | 1lap | -0.907 | |
15 | SIN | 15 | 3.599 | 13 | 1lap | 13 | 2.482 | 8 | 15.547 | -1.117 | |
16 | RUS | 13 | 3.239 | R | R | 11 | 2.322 | 12 | 62.496 | -0.917 | 4b |
17 | JPN | 6 | 2.088 | 11 | 1lap | 9 | 1.715 | 7 | 1lap | -0.373 | |
18 | MEX | 14 | 1.923 | 10 | 2lap | 9 | 1.711 | 9 | 1lap | -0.212 | |
19 | USA | 13 | 2.613 | 9 | 1lap | 10 | 1.960 | 12 | 2lap | -0.653 | |
20 | BRA | 10 | 1.335 | 11 | 1lap | 7 | 1.267 | 2 | 6.077 | -0.068 | |
21 | UAE | 16 | 3.200 | 12 | 1lap | 12 | 2.310 | 9 | 1lap | -0.890 |
トロロッソは言うまでもなく、ほぼ全レースにおいて改善している。マシンコンセプトを大きく変更、ロングホイールベース・ロードラッグを軸に激戦の中団グループでバトルできるマシンとなった。
サスペンションなどの内部部品はレッドブルのお下がりを使用して、戦闘力は確実にアップしたが、冷却効率が悪くパワーアップしたホンダPUを思ったように生かしきれない事も多かった。
入賞回数は7⇒15へ倍増し、荒れたレースで表彰台2回獲得はチーム史上最高の結果、昨年ホンダのために結果を度外視してくれた事でコンストラクターズ9位になってしまったが、今年は過去最高タイの6位。
アットホームな気質でホンダF1全体を癒してくれた昨年のトロロッソ、最高の恩返しを出来た事は、涙なしでは語れないよ。
ホンダの躍進は冷却・タービン・燃料にあり
世界的な温暖化?による気温の上昇は、冷却において新たな局面が見られた。レッドブルとトロロッソはインダクションポッドからのセンタークーリングにおいて、ERS系を冷やすだけじゃなく、内燃エンジン自体も冷やすラジエーターを備えている。
熱い路面に近いサイドポンツーンから入る空気は温度が高いが、マシンの一番上にあるインダクションポッドは外気温そのままが入ってくる。高温だったオーストリアGP優勝は間違いなくこのコンセプトによるものです。
IHIと共同開発され、ホンダジェットの知見が導入されたコンプレッサー&排気タービンは、高地にて空気が薄いサーキットでその強さを発揮した。どんなものかは説明できるものではないが、雲の上を飛ぶジェッドエンジンは薄い空気を圧縮するためのノウハウが詰まったものである。
タービン内部空力学の向上がもたらしたものは非常に大きく、高地でも必要な空気量を発生する事ができる。イメージとしては容量が大きく、他と同じタービン回転数でもより多くの空気をエンジンに送る事ができると言ったところ。
高地では空気の熱交換率も下がるので、センタークーリングによる冷却面の強さとの相乗効果は素晴らしかったと言える。
2019年はコンプレッサーをツインアウト化しており、左右振り分け空冷インタークーラーに対しパイピングの長さを同一にする工夫もされています。F1界と言うかレース界のコンプレッサーにおいてツインアウト化は初の試みじゃないだろうか?
モービルの新燃料はスペック4に対する専用設計となっている。初戦となった地元日本GPではその力を存分に引き出す事は出来なかったが、その後は本当に凄かったと思う。フェラーリにはシェル、メルセデスにはペトロナスが専用の燃料を開発しており、ホンダはスペックアップに見合った燃料を5年越しで手に入れた事も非常に大きかった。
しかしながらモービルとの協力体制はまだまだ不十分、もっとスピーディーなエンジンと燃料のマッチングが無ければ2020年以降のチャンピオン争いは出来ないだろう。
レッドブル低速コーナーが遅いのは・・
昨年、低速コーナー最強のマシンだったRB14、2019年型RB15はその強さを最後まで発揮できなかった。
センタークーリングの強化により重心が上がった事が要因だと思われる。
F1GPニュースで川井さんが言っていて気付いた事なのですが、低速域ではダウンフォース量が減り車体を押さえつける事ができない、よって重心の上昇に伴うロール量がどうしても大きくなってしまう。
最終戦ヤス・マリーナのように左右に切り返すシケインが多くなると、積極的にリアの車高を動かすレッドブルのコンセプトは大きな影響を受けていたと思うのである。
メルセデスにはほぼほぼ完敗し、一部の低速コーナースピードはフェラーリにすら負けるほどだった。
空力に頼らないメカニカルな部分の基本概念をどうやって取り戻すのか?それが2020年に向けてのキーポイントだと思う。
まとめ
以上、ざっくりとまとめた一年ですが、ホンダ悲願の優勝は何物にも代えがたい嬉しい出来事だったのは間違いない。
レッドブル&マックスは最高だよ!
そしてトロロッソの表彰台2回も最高だったし、悩みまくったガスリーが最後に笑顔でシーズンを終えられた事が、なんか一番印象に残ったんだよね。
2018年は彼のスーパードライビングで何度も助けられたし、スーパーフォーミュラでチャンピオン争い、ホンダと共に成長してきたドライバーって感じが感情移入させられるのかな・・。
2020年レッドブル・ホンダはフェルスタッペン&アルボン、アルファタウリ・ホンダはガスリー&クビアト、4人の熱い戦いに期待しています。
やっぱりねF1の花形は最終的にドライバーなんですよね、マックスはあとちょっとだけリスクマネージメントを強化すれば大丈夫、他3名は、速く走れる幅の広いドライビングを身に付けて、成長してほしいと願います。
2018シーズンRB14(ルノーPU)であれだけやれたレッドブル。
2019シーズン期待しまくりで前半戦を見て「空力失敗やん・・」から、中後半にかけての空力改善とPUパワーUPでの巻き返しは、ベーズ車両が悪かったことを考えるとよくやったと思う。いやマジで!w
しかし今頃、半分ぐらい出来上がった(?)RB16が高レーキを捨ててるとは思えない。
このままではコースの得手不得手がはっきりしすぎてて、全コース安定のメルセデスにどこまで追いつけるか疑問もある。フェラーリも空力改善してくるだろう(PU改善もしてくるだろうw)・・。
それでもアブダビテストでタイムよりタイヤと空力の計測を重視したレッドブル。
2020シーズン、ケラケラ笑うタッペンの無線が聞けるRB16になればいいなぁ。
レーキ角は有効なんですが、それを安定させるには、フロントエンドからの空気の流れを完璧しないとならない。
レッドブルは新しい挑戦を常に行っているので面白いです。
メルセデスはオーソドックスで論理的で洗練されています。
フェラーリは2019年基本的な低重心化路線に戻り、空力関しては伸びしろがあるので油断大敵。
全てはトレードオフに成り立つものです。ホンダパワーが本物になれば新しいレッドブル路線が強い可能性もある。
2020年のマシン、マジで楽しみですよ~。
各チームが今年学んだ失敗と成功、来年どれだけ上乗せして速いマシンに仕上げてくるか。
楽しみですね!
2021にはかなり空力パーツ制限ありそうですし、共通パーツも増えるでしょう・・。
2020がオリジナリティーのあるマシンが出揃う最後にならないことを祈ります。
画像のセンターラインクーリングのラジエーターは軽く(たぶんコア材質アルミニウムでしょう?)メカニックスタッフがカーボン製のエアーボックス毎、軽々と持ち上げてますが、やはりパワーユニットよりも上部に配置しているので、重心が高くなるのは仕方ない。
冷却性能を落とさずに少しでもラジエーターを小さく軽くするために、シャークフィンに排熱促進のチムニーダクト(メルセデスも時々使っている)を設けると、空力を犠牲にせずに性能上げることが出来ると思うのですが。
内燃機関を使っている限り、熱損失(冷却損失)避けられませんが、限り無く小さく押さえて、効率良く熱エネルギーを電気エネルギーに変換することが重要テーマですね。
フロア下のダウンフォースを多くさせてみるのかな?と思ってます
レーキ角はRBマシンの武器なのですが少し浅くして特にフロントからのエアを時間を掛けて作成してくると想像してます
開幕時点でメルセデスと30馬力未満と言われたホンダPUが、最終的にほぼ並んだと言われるまでになりました。
メルセデスの伸びしろを考えると、PUとエンジンオイルで50馬力近く向上させたのでしょうか。
パワフルなPUを得たレッドブルがどんなマシンを作り上げるのか。
シーズンが終わったばかりなのに、開幕が待ちきれません。
ド素人です。
その上でRBの来季を考えるなら、ホンダPUの利点と弱点を鑑みて、高重心による悪影響を少なくすべくリアサスの動きは抑えてくる気がします。レーキも今年より控えめになるかと。
問題は空力ですね。今年は失敗をどうにかカバーするので精一杯だったので、コンセプトから見直しを掛けて来るでしょう。今年のRB15は事実上のRB14Bでしたが、もしかしたら見た目にわかる変化があるかも知れないですね。
エイドリJinニューウェイがRB16を設計したらどんな感じになるのか、気になります
多分、ドラッグの塊になりまっせ!
あれも、これも・・・あぁ〜。