2014年から始まったパワーユニット規定は2022年をもって開発凍結になりました。
1,600cc V6シングルターボエンジン+MGU-H(ターボチャージャー用モーター)+MGU-K(クランクシャフト用モーター)で構成された高性能ユニットです。
ハイブリッドでありながらエンジンを補助できるモーターの出力は120kw(161hp)と小さなもの。
結局のところターボエンジンの最大化が必要であり、2021年最後にホンダがそれを示してくれました。
燃焼室とバルブ挟み角
ホンダRA621Hで話題になったバルブ挟み角をせばめる事は、燃焼室を小さくする事が出来る。
レギュレーションで許される圧縮比18.0を達成する事が必要だった。
- 圧縮する力が増加⇒ピストンを押し下げる力が増加⇒クランクシャフトを回す力が増加
エンジンの外見上からは、各バンクにある2つのカムシャフトが並ぶ事が確認出来ます。
メルセデスの並列カムシャフトは2014年から確認出来ており、2022年で確認出来る画像は無いですがバルブ挟み角を広げる事は無いでしょう。
フェラーリはメルセデスやホンダRBPTに比べると少し離れている。
ホンダRBPTの外見はRA621Hと変わりない。
ルノーは確認出来る画像がありませんが、同様のソリューションを用いているはずです。
ピークパワーにほとんど差が無い事は、全てのメーカーが圧縮比18.0に近い数値を達成している事になります。
- クランクシャフトに伝えるエネルギーが増加すると排気エネルギーは減少する
メルセデスやホンダRBPTは左右のエキゾースト形状が違う事が確認出来ています。
タービンやタービンブレードの形状のみならず、その前のエキゾーストから効率化を突き詰めなければなりません。
少なくなる排気エネルギーを余す事無く使えるタービンとエキゾーストが必要です。
インジェクター位置は排気側
F1で許されるインジェクターは各シリンダー毎に一つです。
マーレのジェッドイグニッションがシリンダートップに必要な事から、インジェクター位置は長らく謎でしたが、ホンダが昨年全てを教えてくれて2017年から排気側である事がわかっています。
最大500barのインジェクターは、その付け根にあるコモンレールもかなり頑丈でなくてはなりません。
副燃焼室付き点火プラグは、圧縮工程で濃いめの混合気を噴孔から取り込む。
ジェッドイグニッションで示されていた、点火時に副燃焼室に燃料を追加する方法では無かったのです。
フェラーリのコモンレールは2019年で排気側にある事が確認出来ます。
これらの事例によってF1エンジンのインジェクターは、全てのメーカーが排気側に配置していると言えるでしょう。
排気側にインジェクターがある主な理由
- 吸気側だとVバンク内のスペースが必要な為
- 高熱になる排気側バルブを気化熱によって冷却する
これぐらいしか考え付きませんが、吸気時の筒内流動に噴射圧力によって何らかの変化をもたらすのは必然です。
シリンダー壁側からの自着火も利用するともなれば、水平方向旋回流スワールが必要になる。
管内直噴と高圧インジェクターは管内流動を効果的に作り出すことが出来ます。
まとめ
現行規定パワーユニットの最終仕様は、確認出来る3メーカーだけでも圧縮比の最大化を狙ったものだと言う事がわかります。
メルセデスはずっと前から、ホンダは2021年からこれを達成している。
フェラーリやルノーは2022年からこの領域に踏み込んだと思われ様々なトラブルが発生している。
両メーカーとも信頼性は二の次でパフォーマンスを優先したと発言している。
管内圧力の上昇は様々な問題を引き起こし、許容できない部分を破壊します。
フェラーリは副燃焼室に問題があると言われ、ルノーはウォーターポンプや燃料ポンプに問題があった。
これらは信頼性の向上に関してレギュレーションで許容される範囲でアップデートされるでしょう。
開発凍結とはパフォーマンスのみに適用される、他メーカーが承認すれば設計の変更すらも許されるのです。
ホンダは「馬力を出してくると(圧縮比18.0)、シリンダーがダメになる」症状を熊製メッキでクリアしてきました。
他メーカーも18.0をクリアしたということは、シリンダーの表面処理がちゃんと対応できているということですね。
ホンダの社内ノウハウが流出することは無いので、マーレなりが開発したんですね。
やはり、F1の世界は凄い。
フェラーリは副燃焼室が溶ける?砕ける?らしいですね。
その微細な破片が、バルブなどを破損させブローしていたらしいです。
熊製メッキは元々バイク用に開発して使用していた技術、フェラーリのおひざ元イタリアでも似たような技術があるでしょう。
しかし、完璧ではないから壊れるのです。
DOHC(吸気側バルブと排気側バルブで別々に独立したカムシャフト)に関する事なのですが、
現在でも違う方式(直押しタイプとフィンガーフォロアーやロッカーアームを介するタイプ)使われているのでしょうか?
ホンダPUに使われるICEは、直押しタイプでは無くフィンガーフォロアーを使っているように思うのですが(過去のF1エンジンには直押しタイプを使っていた事も有りましたが?)
シリンダーヘッドをコンパクトにするには直押しタイプの方が良いと一般的に言われていますが?
逆に吸気側バルブと排気側バルブの挟み角度を拡げて自由にするには
フィンガーフォロアーやロッカーアームを介するタイプが良いとされる?
過去の2輪モーターサイクル用4サイクル内燃機関のにわか知識なのですいません。
F1用にはニューマチックバルブが使われているので当てはまらないかも知れないですが?
直打式は今現在どの高性能エンジンでも使われていません。ニューマチックバルブでも同様です。
すべてフィンガーフォロアーロッカー式です。
カム山を低くしてロッカーでリフト量を稼ぎます。
直打式はカムがタペットに接触する面積が大きくフリクションロスが多い。
ロッカーを介せば、カム山の形状とロッカーの形状の組み合わせによってバルブのリフト量や開いている時間などを設定する自由度が増えます。
※ホンダF1のテクノロジー読んでませんね。F1テクノロジーファンなら絶対買うべきものです。
>ホンダF1のテクノロジー
AmazonのKindleでセール中かな?
ポイント還元も多い。
私が2022年PUについて解析する事が少なくなった理由はこの本のおかげです。
門外不出であるF1PU技術について事細かに解説されています。
海外の方はわざわざ取り寄せてGoogle翻訳して理解しようと頑張るほど貴重なもの。
これを読まずにF1PUを語る事は不敬です。
早速買いました。
大阪には超大手の超大きな某本屋さんがあります。
行って係りの人に言えば出て来ましたww
写真見てるだけで酔いそうです~
常時コメントをくれるような方は、当たり前に買っていると思ってましたよ。
わからない技術的要件があれば解説しますよ~。
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
「ホンダF1のテクノロジー」そんな本が有ったのかと思いアマゾンキンドルの電子書籍を早速DLしてみました。ところが良く考えたら以前ここでその本を知り本屋さんで購入済みでした。PCで見た方が拡大出来て良いので再度読み直そうと思います。しかし今年のF1も予想が難しそうでね。今年も楽しみにしております。
燃焼目標を考えれば、ホンダが新骨格(RA621H)でバルブ挟み角を狭めて来たであろう事は容易に予想出来ますが、重心を下げた事から挟み角を広めたに違いないとの予想をどこかで見掛けた記憶があります。その予想をした人に読んで貰いたいですね。
最初に挟み角を広げた情報が先行したんですよね。
私もそれで考察しましたよ( ; ; )
高効率な燃焼室形状のセオリーは、物理現象なので昔も今も変わらない。
圧縮比を高くする=燃焼室をコンパクトにする。
熱が逃げないように、できるだけ表面積を小さくする。
すると燃焼室は、バルブ狭角になり、ピストンは平らになる。バルブ角を広げるのはあり得ない。
燃焼のセオリーは、超短時間に燃焼させて、瞬間的に燃焼室内の圧力を上げる=ピストンを押し下げる力を得る。
でも、希薄燃焼だから燃えにくいわけで。燃料と空気をよく混ぜ、プラグ付近に混合気を集めたい。
ピストン中心部を泣く泣くへこませ(スキッシュ)、そこで混合気を混ぜる。ディーゼルエンジンのようなピストン形状になる。
でも高効率燃焼室のセオリーに逆行しているので、どうにか改善したい。
プレチャンバーで燃やす技術が確立され、ピストン周辺からの自着火燃焼も確立され、同時に瞬間的に燃やす「高速燃焼」が確立されて。
現在のピストン表面は、へこみが減ってまた平らに近づいていると思われます。
インジェクタが排気側にあるのは、吸気バルブから入ってきた空気と混ぜやすいんだと推測されるのと、排気バルブが吸気バルブより小さくできて、排気バルブ側にスペースが取りやすいからだと思われます。