2022規定の主役であるベンチュリートンネルは、強大な負圧を発生する事が出来る。

そのあまりにも大きな負圧は「諸刃の剣」だった。

高速域で一気に増加するダウンフォースはリアサスペンションを限界以上に縮め、ストールと共にバウンシングをもたらす結果になっています。

 

ストールさせずに安定したダウンフォースを稼ぐ必要があるのです。

今回はフロアとフロアエッジの有用なソリューションを確認しましょう。

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フロアのダウンフォース

フロアはグラウンドエフェクト効果で負圧を発生させる、それはウィングなどの下面で発生する負圧と違い、ドラッグが著しく減少したものになります。

フロアを制する事はF1を制する事と言っても過言ではありません。

  • フロアは路面に近づくと負圧が増加
  • ベンチュリートンネルは路面に近づくと負圧が増加
  • ベンチュリートンネルのキックポイントは路面に近づきすぎるとストール
  • ダウンフォースは速度の二乗に比例して増加➡負圧が速度の二乗に比例して増加
  • フロアは速度の増加に伴って路面に近づく➡速度の増加に伴って負圧が増加

フロアには大まかにこのような構図が当てはまります。

フロアの負圧は増加率が大幅に上昇する

空力全体的に言えることですが、速度が増加するとダウンフォースやドラッグは一定に増加するのではなく、速度の二乗に比例して増加します。

  • 例.100km/hの時100kgfのダウンフォースは、2倍の200km/hの時200kgfでは無く400kgf、3倍の300km/hでは900kgf

 

非線形レートのサスペンションを使えなくなった事(油圧による非線形レートの設定)によって、ダウンフォース荷重量に対して車高を制御する事が出来なくなっています。

  • 実例.2021年まではフロントは常に一定な車高をキープ、リアは高速域だけ大きく下げる。

 

低速域では車高が上がり、高速域では車高が下がる、当たり前に起こる現象がフロントとリアで発生します。

フロアは速度の増加に伴う変数が大きく2つあり、特に車高は路面の起伏やバンプの影響を受ける為にシミュレーションする事も難しい。

 

非線形で増加するダウンフォースに対して、サスペンションレートは線形である為に矛盾が生じます。

 

シミュレータやソフトウェアなどあらゆる設備面で大きなアドバンテージを持つトップチームでもバウンシングを完全に消し去る事が出来ない大きな理由です。

 

特に高速コーナー(200km/h以上)に起伏やバンプがあるとフロアのダウンフォースを失ったり、マシンが底付きして挙動が乱れる為に車高を上げる必要性がでてきます。

  • 例.スパのオールージュ、ヤスマリーナのターン3など

 

車高を上げる事は路面との密閉性が低下して負圧が減少、フロアのダウンフォースが低下する事を意味します。

フロア&フロアエッジに必要なソリューション

現状で有用なソリューションだと私が言えるものは非常に少ないです。

  • センターフラットエリアの拡大
  • キックポイントの最下点は面よりも曲面の方が良い
  • フロアエッジトンネル(バイパストンネル)の活用

 

レッドブルRB18のフロアは初期段階からこの3つのソリューションが盛り込まれていました。

 

ベンチュリートンネルの主流は車高が下がり、キックポイントで行き場を失うとエッジトンネルへバイパスされる。

エッジトンネルを通る流れは、ディフューザー側面のインレットから入りディフューザーの機能を維持させる。

シーズン中のアップデートでは、エッジトンネルが拡大されディフューザー側面のインレットも拡大されています。

フロアのCFD解析

https://youtu.be/5a4sBF3s0UI

左側が路面上の圧力分布図付きです。

負圧がどのように移動しているのかが分かる貴重な実験データになります。

 

 

オーバーハングの付いたフラットエリアの拡大は確認出来るだけでも4つのチームが後付けで導入、ほとんどのチームがキックポイントを面から曲面に変更しています。

 

センターフラットエリアはフロアの中で最も低いエリアです。

それは、車高が高くなった時に最も路面に近い位置にあるので、車高が高くなっても負圧の減少が少なくなります。

 

キックポイントを曲面にすると最下点の面積が減少します、バンプや起伏を通過する時に路面に近づいている時間を少なく出来ます。

これによってキックポイントのストールを避ける、もしくは一瞬で終わらせる事が出来ます。

まとめ

これらの答えはレッドブルRB18とメルセデスW13が教えてくれたものです。

トップチームの中で成功と失敗の比較、アップデートでどちらに寄っていくのか?

それらを確認すればおのずと答えは明らかになります。

 

サーキットにバンプや起伏がある限り車高を上げなければならない、車高を上げても機能低下が少ないフロアが必要。

 

車高上げても機能低下が少ないフロアはフロアエッジの側面や上面でボルテックスを発生させて、負圧に流れ込もうとする高圧を防がなくてはならない。

これについては、またの機会で説明したいと思います。

 

 

2023年の規定変更の影響があると思いますが、大まかな有用なソリューションは変わりません。

新しい規定に対してどのようにこの機能を反映させるか?

それに対する答えがデザインに表れます。