2022規定では、ホイールドラムにミニウィングとも言えるディフレクターがあります。
タイヤで発生する乱流を抑制するエアロパーツですが、これらを上手く活用する事がポイントになります。
フロントドラムに関しては、ブレーキダクトによる廃熱の流れにも気を使わなければならない。
ブレーキダクトのアウトレットの影響と、リアドラムディフレクターの有効的な活用について考えます。
フロントドラムディフレクター(Front Drum Deflector)
フォーミュラカーにおいて、タイヤは厄介者です。
ドラッグの塊であると同時に乱流を多く発生させます。
タイヤの後ろは空気が薄くなる為に発生する低圧ゾーン、タイヤの前では路面との間に挟まれた高圧ゾーンなど、周りの流れとは違うものが数多く発生します。
F1では様々なボルテックスを使い、これらの乱流を抑制していました。
上図は2016年のフロントウィングで発生するボルテックスのCFDイメージです。
フロントタイヤを包み込むようにしてボルテックスが流れ、タイヤ乱流を車体中心に行かないように整流しています。
フロントドラムディフレクターは、フロントウィングボルテックスに頼らずに、それ自体で新たなボルテックスを作り、この機能を維持します。
ホイール下部にあるディフレクターは、1994年セナの事故死以降禁止になったパーツでもあります。(ダウンフォースの削減)
それだけ乱流抑制効果が高く、ダウンフォース増加に繋がるものだと言う事です。
ブレーキダクトの流路変更
ブレーキダクトから入った空気は、ホイール内側のアウトレットから排出されます。
2021年まではカバーの無いホイールから排出していました。

フロントホイール内側は、ただでさえ乱流の多い所です。
その後方であってもブレーキのアウトレットは、空力にとって非常に邪魔なものになります。
ステアリングを切れば、イン側はこれらの流れが車体中心へ向かう事になり、空力に影響を与えます。
マクラーレンは、ブレーキ熱の処理が不足して様々な変更を加えました。
ダクトを拡大、ドラムの重さが増加、ドラム内熱管理、ブレーキアウトレットの流れが変化しています。
サスペンション、タイヤの熱管理、空力など、数多くの影響があり低迷する理由になっています。
バージボードを失っている為に、これらの空気の流れはターン中のマシンに大きく影響を及ぼす事になります。
フロアフェンスやサイドポッドとの親和性が重要になると言う事です。
リアドラムディフレクター(Rear Drum Deflector)
フロントタイヤと同じ様に、リアタイヤにも乱流が発生します。
特に重要なのは、リアタイヤと路面に挟まれた高圧ゾーンがディフューザーへ流れ、その機能を低下させる事です。
2021年までは、ブレーキダクトのデザイン範囲でディフレクターを作り乱流を抑制してきました。
リアアッパーアームのハイマウントは、このブレーキダクトフィンに多くの空気を導く為のものです。

路面側へ流れる乱流を、上方へ引き出すようにフィンの角度が設定されています。
少ないですがダウンフォースが発生します。
2022年からはブレーキダクトでは無く、全く別のものとして設定されたリアドラムディフレクターがあります。
ホイールから離れ大型になり、その機能は増加しています。
そして、これはホイールに対するウィングになりダウンフォースを多く発生します。
リアウィング・ボディ・フロアで発生するダウンフォースはサスペンションを伝わって路面にタイヤを押し付けるグリップ力になります。
リアドラムディフレクターで発生するダウンフォースは、サスペンションを伝わらないグリップ力になるのです。
サスペンションを伝わるダウンフォースは、現在問題になっているバウンシング(ポーパシング)に大きく作用するでしょう。
ディフューザー上面やビームウィングへ多くの空気を流す事は、それを助長する事になります。
リアタイヤのグリップ力を上げバウンシングを抑制する為には、リア周りへ流れる空気を上手く分散させて、このリアドラムディフレクターで発生するダウンフォースを活用しなければならないと考えられます。
まとめ
メルセデスのポーパシング、マクラーレンの転落、これらの事実に対して、どのような事が影響しているのか?
サイドポッドのデザインで明暗が分かれている事がクローズアップされる中で、長いサイドポッドによって作られる流れがどんなものなのか?
その流れが行き着く先にあるものは何か?
リアドラムディフレクターは、かなり重要なパーツだと考えています。
レッドブルはサイドポッド上面の一部の流れを、側面へ流れるように変更を加えています。
ダブルフロアで調子のよいアルファロメオ、その全てがビームウィングへ行くようなデザインにはなっていません。
ディフューザー自体の角度が浅く、上面の角が丸く流れを上手く分散しているように見えます。
ディフューザーに一番近いアームには、この間に空気を導くように下向きの角度が付けれらています。
安定したダウンフォースは、様々な空力ソリューションの融合で成り立ちます。
メルセデスの行った一点突破は、機能しないのです。
今回の考察は、ツイッターでよくお話しする@Yuyujiteki_Siさんとの会話の中で得られたものです。
私に引けを取らずマシン・空力マニアな方ですので是非フォローをお願いします。
いつも大変興味深く拝見させて頂いております
素人にはフロアフェンスよりもまだ理解出来ます(笑)
話は変わりますが、シャーシーの本当の良し悪しがはっきりするのはスペインあたりでしょうか?
とりあえず、4/22開幕するイモラですね。
ヨーロッパラウンドの初戦、ファクトリーからの搬送が楽になります。
その次が5/20開幕のスペイン、この辺りまでにある程度の戦力が固まります。
今年は開発資金があるだけ、アップデートはされていくはずです。
大きな修正が必要なチームは夏休み明けがポイントとなるかな。
フェラーリにとってイモラは、モンツァに次ぐ第2のホームグランプリですし、スペインはサインツの地元、モナコはルクレールの地元。
この3戦は全てフェラーリが制したいでしょうね。
イモラは高速サーキットなのでレッドブルに向いているかな?
RB18が軽量化に成功すればモナコでも真っ向勝負出来る?
この時点でメルセデスやマクラーレンが、どこまで問題点を克服して改善出来ているか?
メルセデスW13の後部画像で
+のマーク印みたいなモノが写っていますね。
PU始動でエアースターターを差し込む所でしょうか?
メルセデスPUは、まだMGU-Kによる始動は行っていないかと?
外部スターターによるエンジン始動はメルセデスPUの基本ですね。
緊急のKスタートもできますよ。
2026年からの次世代PUは、MGU-Hを無くす代わりにMGU-Kの出力を350kwにアップしますね。
まだ次世代PUの煮詰めは途中ですが、MGU-Kを2個(175kwを2個)に分割する案も出ていますね。
クランクケースの左右両側に振り分けてレイアウト出来るので都合良いと思うのですが?
それに万が一1個だけ故障して使えなくなっても、もう1個が使える
乱流起こさないようにシンプルにと言いながらディフューザーの横にごちゃごちゃ付けちゃって!
と、思っていたんですがドラムディフューザーだったんですね
サスペンションを伝わらないダウンフォースとは面白いですね大変楽しく拝見しました
フロントウイングとは違ってちょっと角度調整… とは行かなそうなので設計外すと面倒になりそうなパーツですねぇ
ウェット走行でタイヤ車体側の側面じっくり見させてもらいます
乱流の元凶となってるボルテックスの排除がテーマな今年です。
後部に発生する乱流を、90年代まで戻した。
90年代に使われていたエアロパーツの復活がポイントになっています。
長らく続いたステップボトム時代が終わって再びウイングカー(グラウンドエフェクトカー)が復活して最初のシーズンを迎えました。
今後数年間、それ以上にウイングカー時代続くことでしょうが、
昨年でも2019年規定レギュレーションが3年連続継続でしたが細かい部分で改訂ありました(フロアパネル面積の削減など)様に、
年度毎に規定寸法の変更やパーツ制限の見直しがあるかも知れないですね(ある特定チームがアドバンテージを得る技術を発見すれば)
本当、今シーズンは導入1年目なので様子見ですね。
厳密に言えば、ずっとグラウンドエフェクトカーです。
それを効率良く最大化するフロア形状だと言う事です。
更にこれを良くする為にはどんな事が要求されるのか?
なぜ、機能できないのか?
開発に楽しさを感じるのはそんなところです。