パワーユニットのモード変更、通称「エンジンモード」は、2020年第8戦イタリアGPより、予選・決勝を通じて同じパワーモードを使用しなければならないとの、技術的指令(テクニカルディレクティブリファレンス)37が8月21日に発行されました。
ベルギーGPよりとの噂でしたが、各メーカーとの調整の中でダイノテスト時間を設けるためイタリアGPからとなったようです。
エンジンモードに関する2つのレギュレーション
今回の技術的指令発行の背景には2つのレギュレーションが関与する。予選と決勝を通じる事からパルクフェルメ規定を持ち出すのかと思っていたが、そうではない。
・技術規則2.7 競技参加者の義務
競技参加者は、競技会期間中いかなる時でも自己の参加車両が本規則に完全に合致していることをFIAテクニカルデリゲートおよび競技審査委員会に立証する義務がある。
安全に関わる特性を除き、ハードウェアあるいは素材の物理的査察により、車両の設計、構成要素および機構は、本規則に合致していることが証明される。規則への合致を保証する手段として、ソフトウェアの査察の結果を機械的設計の根拠とすることはできない。
それらの性質上、電子システムの規則遵守は、ハードウェア、ソフトウェアおよびデータの査察によって評価される。
FIAの懸念事項
使用されているモードが多すぎて複雑であるため、FIAが特定のイベントの重要な瞬間にPU関連のすべての規制や規定への準拠を監視することは非常に困難である。
・競技規則27 運転
27.1 ドライバーは、1人で援助なしに運転しなければならない。
FIAの懸念事項
現在実施されているICEモードへの変更は、ドライバーが単独で車を運転せずに、単独で車を運転していないことを潜在的に意味する可能性があります。
簡単に言えば、電子制御が複雑すぎて監視できないから予選決勝は同じモードを使いなさい。ドライバーへの無線指示でのモード変更は援助にあたるから禁止。
エンジンモードルールの例外
- スタート前のラップ
- セーフティカーの後ろまたはVSC速度でのラップ
- チェッカーフラッグ後のラップ
- 予選フライングラップの前後のラップ
- 関連する予選セッションの最速ラップより20%高い他のラップ
AMuSの直訳なので5番目の意味が解りません。多分チャージラップやアタックラップをやめた時、渋滞で様子見のラップなど、フライングラップ前後以外のラップの事を指しています。
監視されるエンジンモードのパラメーター
- 燃料流量
- 風量
- ブースト圧力
- 燃焼段階
- 注入時間
- スイッチング速度
- 燃料温度
- 空気圧バルブシステム、クランクケース内の圧力
- 油圧
- ウエストゲートバルブタイミングとMGU-H作業時間
- 出力シャフトで測定されたパワーの制御
完全同一エンジンモード適用は3基目から
現在ドライバー毎にパワーユニットの使用状況(損傷度合いなど)が異なります。よって2基目まではドライバー毎に違うエンジンモードを使用できることになります。
3基目からメーカー全てのパワーユニットに対して同一のモードが適用されなければならない。よってチーム毎の変更ができないと言う事になります。
まとめ
エンジンモードに対する厳しいFIAの技術指令となっています。チーム毎の変更ができないってマシンとのマッチングで、かなーり大変だと思うのですが、パワー制御の大部分はドライバーが足でやりなさいって事ですね。
MGU-Hの作業時間、出力シャフトで測定されたパワーの制御が監視される事になっているので、ERSモードの変更すら許されない。レース中は、はっきりってなにもできません。
MGU-Kに関わるエンジンブレーキの設定で、MGU-Kの回生量ぐらいしか変更できないです。
※OTボタンは許されるようです。MGU-Kの出力アップをドライバー操作で行う、昔のKERSみたいな使い方になるようだ。
そういえばホンダは早々に2基目投入していますが、技術指令が適用されるのが時期なのか何基目なのか確定していなかったから、ドライバー毎に違うモードを使える2基目を確保したとも考えられます。
そしてこの予選決勝の同一パワーモードの影響を大きく受けるのは多分ルノーです。ルノー>メルセデス>ホンダ>フェラーリといったところでしょう。
メルセデスは予選モード分と決勝でつかえるパワーモードを、平均的に配分して上手にパワーコントロールしてくるのは明らかであり、結果として今までのレースペースの差が更に増えないことを祈るのみ。
メルセデスのパーティーモードがなくなればレッドブル・ホンダにチャンスが生まれるなんて軽く言えたものじゃないですよ、ホンダはレース中にパワーを変えて、寿命を減らして勝ってきたんですから。
フェラーリにチャンス到来!これが今回の忖度です(笑)
モード変更無しERSデプロイ状態の考察
MGU-HやMGU-Kの出力状態は変更出来ない事から、デプロイは常に平準化しなければならない。OTボタン(MGU-Kの出力最大)は許されるので、レースラップにおいてデプロイは徐々に増えるようなセッティングになると思う。
予選においては各加速区間でOTボタンを使用して、MGU-Kの最大パフォーマンスを引き出す事になるでしょう。
ただこのOTボタンの概要が各チームで違う、押したらそのラップ全てなのか?押している間だけなのか?何秒間なのか?
KERSの頃はドライバーが押している間だけだった、FIAは許すOTボタンの仕様も提示しているのか謎である。この仕様を統一しなければ、また一つ問題が増えるのが目に見えている。まぁ後付けになるんだろうけどね・・。
※AMuSではOTボタンはレースのみって書いてあるっぽい・・。
9/3追記:ERSモード変更は可能
確定情報がまだ得られていませんが、ICE(エンジン)のモード(マッピングなど)が予選フライングラップとレース通常ラップで同一でなければならないとの事です。
統一ECU(マクラーレン製)のエンジン制御に関わる部分であり、ERS用のCEは含まれない。
F1の場合、エンジンやERSはマッピング(ラップのどこでどういう状態にするのか?)でコントロールしています。
スロットルオンの度に追い込んだ燃焼でパワーを上げる必要はなく、特定のストレートでのみ燃焼モードを変えてパワーコントロールできるのです。
ERSモードが変更できるとは言っても、MGU-Hの稼働はエンジンの燃焼に大きく関わるので、これに限ってはほぼ固定されると思います。
ドライバーが変更できるのは、MGU-Kの入出力コントロールだけという事になるでしょう。
「除外ルール #5.」にきまして
“Jede andere 他のどの Runde 周回, die 20 Prozent über der schnellsten 20%が最速を上回っています Runde der jeweiligen Qualifikationssitzung liegt 各予選時の周回”
まず各文繋ぎ、“(予選時)各ラウンド(Q1, Q2 & Q3)は、それぞれのラウンドのうち、最も速いラウンドより20%上(増し)になります.”
意味的に繋げると、おそらく “予選Q1~Q2~Q3間にて、最速ラップタイムが20%速く短縮された場合の周回は除外” でしょうか?
さらに、それが、全3ラウンドの平均、2番目に速いラップタイムに対しなのかは?ですが。
以上、 独語がチンブンカンブンの者なので(・・;)、信頼性はGate. レベルかもしれません。
ラップタイムが20%高い(多い)ではないでしょうか?
つまりスペインのハミルトンであればQ3最速75秒なので90秒以上のラップは除外される。
Q1,Q2,Q3毎の最速ラップより+20%以上のラップは、エンジンモードが変わっていてもいいって事だと思います。
フライングラップの前後は除外されているが、そのままコースにとどまりチャージラップやタイヤ温度低下又は上昇させるためのラップ、アタックを邪魔されたラップの事を指すと思います。
例1、前ラップ⇒フライングラップ⇒後ラップ⇒+20%ラップ⇒前ラップ⇒フライングラップ⇒後ラップ
例2、+20%ラップ⇒前ラップ⇒フライングラップ⇒後ラップ
“F1 engine mode changes target reliability fix claims” より~抜粋~
F 1エンジンモードによるターゲットの信頼性の修正
Different modes can be used for in and out laps in qualifying, and any lap that is 20% slower than pole.
予選では インラップ と アウトラップで 異なるモードを使うことができ、ポールより20%遅いラップであればどんなラップでも使うことができます。(In Lap-トラックに出た最初のラップ. Out Lap-トラックからビットへ戻るラップ.)
以上、英語版リリースがありましたが、コレでしょうか?
NA時代であっても、バルブ調整であったりエンジン積み替えたり、予選モード使ってたようなものだったと思うけど今更こんな技術指令出すのか?って感じしかしない。
しかもシーズン途中でやるかよ(^_^;)
もしかすると、制御してるERSのみ基数制限の変更もあるかもしれませんね。
なおFIAは予選モードの禁止とは別に、8月4日発行の技術指令書TD/036-20を通じて、高電圧回路以外の全ての補助回路の図面・CADを含むERS(回生エネルギーシステム)アーキテクチャに関する詳細な情報を8月21日(金)までに送付するよう4つのPUサプライヤーに指示したとされる。
昨年のフェラーリは燃料流用の測定値を偽るためにセンサーを欺くトリックを使っていたと見なされているが、独AMuSは、メルセデス、ホンダ、ルノー、フェラーリのいずれかのサプライヤーがこれと類似するような方法で、規約で許可された上限を超える電力を不正使用しているとの疑いの目をFIAが持っているようだと伝えている。
安全性に関わる事由でないにも関わらず、シーズン途中にルール変更が行われようとしている事、並びに、非常に詳細な指示内容でPUサプライヤーに情報提供を命ずるところを見ると、いずれかのサプライヤーがライバルメーカーの違法の可能性を示すようなかなり具体的な情報をFIAにリークした可能性もありそうだ。
>F1ニュースに載ってましたがホーナーですかねw妄想ニュースのような気がしますが
ERSモード固定の布石みたいなものでしょうね。監視するためのデータ取りを容易にするためだと思う。
モーターはトルク監視されているので、まぁ難しいですよ。
回転数とトルクによって出力が決まるので、違いを出すには如何にエコなのか?モーター内部の電気抵抗や摩擦ロスを減らす事です。
それによってデプロイが増加して瞬間的ではないパワー(エネルギー)を作る技術開発です。
最終的にはECUと同じくCEも統一するしかないかな・・。
ステアリングに各スイッチ、ボタン、ダイヤルが配置されていますが、ドライバー自身が事前にパラメーター組合せを暗記して(無線指示もダメであるとの事でPUエンジニアからレクチャー受けて)ドライブ中(予選、決勝を別々に)に調整してもOKなのでしょうか?
これによって
複数のモードを使用する事は出来無くてもドライバー自身が調整する事で補える(細かい仕事が増えるがモード切り替えに近い事が出来る)
ステアリングに配置されているダイヤル類でPU関連で調整出来るパラメーターに何が用意されているのか?
ブースト圧、燃料混合比ミクスチャーぐらいしか思い当たりません?
それより何よりアクセルワークが1番のパラメーターですが(^.^)
ドライバー自身の判断で操作、調整出来る内容なら、いくら何でもFIAはダメとは言わないと思いますが、
ハミルトン、マックスも嫌がる処か、逆に歓迎するかも?
まだ完全な規制詳細がわかりませんが、監視されるパラメーターが変更出来ないと考えれば、例え暗記していても操作不可です。
違反にならない調整は、リアブレーキの電子制御に関連してMGU-K回生ブレーキの強さぐらいになりそうです。
FIAが全メーカーPU性能均一化に相当テコ入れしている様子が伺えます。
メルセデスとホンダからの申し入れもあって
ベルギーGPからでは無くイタリアGPから予選モード禁止と言うのも
またまたフェラーリからの圧力?
と想像してしまいます。
今週末から始まる第7戦ベルギーGP、
全メーカーが予選モード使える最後となりますが、
MGU-Kのみ2基目使用のメルセデスPUが、ICEやMGU-H、TCも2基目投入してくるか?1基目を続けて使用するか?
楽しみです。
公平性をと言う意味合いでは予選モード禁止は良いとは思いますが…。気のせいかもしれないけど何だか全チーム全く同じPUを使用しているみたいな感じがします。PUメーカー名のみ違うだけで。どうしたら本当の公平性とは生まれるのだろう?分からないな。
今回の施策は「公平性」とは全く関係ないでしょ。
そもそもF1は競争の場なのであって、同一のルールが適用されていればそれで公平性は十分。今回も別にメルセデスがルールを破っていたわけでも無し。
今回は表向きルール厳格化&コスト削減、実質は単なる興行面のテコ入れ施策(うまくいくかは別として)。
ちなみに技術開発競争という意味では既にF1は破綻していて行き着くとこまで行き着いてしまった感があり(かける莫大なコストに対して得られるものが少ない)、どんな施策を行おうが今後メーカー同士の争いに面白味を見出すのは難しいと思いますよ。最後にとちくるってBoPとかやり出したら本当に終焉でしょう。(WECつまらん。。。)
かといって、コストダウンのために共通部品化を推し進めて1メイクに近くなったらなったでメーカーの参戦モチベーションはますます下がり、ファンからすればだったらIndycarやFEでいいじゃんとなり生きる残る道が難しい。80周年を迎えられるかどうかは微妙な気がします。
一つのシナリオとして、Mercedesとホンダが撤退し昔のDFV的な位置づけでRenaultが各チームにエンジンを供給(なんだかんだ言ってもRenaultはホンダと違って継続参戦しているので残りそう)、Ferrariだけ自社エンジンみたいな形になったりして。