新マシンレギュレーションは、2022年より始まります。

2021年は、2020年マシンの大部分を凍結、トークン制度で変更出来る箇所が、ほぼ1か所でした。

 

全てが作り変えられる2022マシン開発、各チームは予算制限や風洞制限を最大限利用して研究を進めたはずです。

2022ルールの目玉とも言うべく、グラウンドエフェクトを最大化させるトンネルフロアを中心に、CFD解析データを確認しましょう。

 

Sponsored link

トンネルフロアのCFD解析

データ引用元:https://www.f1technical.net/

2020年フロアの圧力分布図は以下です。

 

そして、2022年フロアの圧力分布図です。

フロア全体が負圧になっています。特にフロアへの空気導入部分で大きく向上しているのがわかります。

ダウンフォース量の比較

2020年⇒2022年での変化割合を表した図です。

※赤=ドラッグ、青=ダウンフォース

Under Bodyの項目であるフロアは、約50%もダウンフォースが増加する。

そして、ノーズまでフラップを伸ばす事になったフロントウィングは約36%。

 

幅が広がりビームウィングが追加されたリアウィング全体は約25%増加しますが、大きな翼端板を失いボルテックスを生成できなくなる事によって、ドラッグは約28%も増加する。

フロアダウンフォースの安定と格差の減少

フロアダウンフォースを、多く発生させ安定させる事は、F1において極めて重要な空力開発です。

F1空力学】や【F1メカ学】と題して、様々なソリューションを振り返ってきましたが、それらのほとんどはフロアと路面の距離を一定に保つものや、フロアの空気量を増加・流速を上げるものばかりです。

独自に研究開発できる部分が少ない2022年型トンネルフロアは、各チームの格差を大きく縮める事になるでしょう。

 

特にタイヤと路面に挟まれる空気は、フロアへの流れを邪魔する乱流となります。

フロントはY250ボルテックスやバージボードで防ぎ、リアはリアタイヤ前のフロアから空気を引き込んだり、ブレーキダクトを利用したボルテックスでディフューザーへの乱流進入を防ぐようにしています。

新型トンネルフロアには、その乱流を防ぐフェンス状のスカートが存在するのです。

また、Tトレイが無くなる事によって、その形状に左右される事無く、安定した空気量をフロアに引き込む事ができます。

トンネルフロアのデメリット

フロアダウンフォースの増加と安定化ばかりに気を取られがちですが、フロアの底上げよってサイドポットエリアの重心は上昇します。

現行のトレンドである薄型構造では、ラジエーターなど補器類の収まる場所や内部空気の流れを保つために、大きな努力を必要とするでしょう。

サイドポットが大きくなるとドラッグが増加したり、コークボトルの絞り込みの差によって、リアビームウィングとディフューザーの効率に影響を与えます。

重心を上げないようにしながらも空力的損失を最大限低くする事が、各チームの大きな課題となる。

 

大部分では共通化が進んでいますが、まだまだ開発領域が残っているF1。

限られた予算と時間で賢く開発したものが勝利すると言う「新しい競争」に、私たちは馴染んでいく必要があります。

 

2014年より実効する施策がことごとく格差を広げてきた事実。

格差を完全に無くすのではなく、縮める事がF1の目指すところなのです。

 

※初回投稿日2020.5.18→変更日2021.12.25