2023年モナコGPは昨年同様にフロアデザインの発表会になりました。
フェラーリに始まりメルセデス、そしてレッドブルまで吊り上げられ全世界にその姿を見せてくれました。
マクラーレンのチームリーダーは「脱帽した、速い理由がわかった」などと発言している。
私も少なからずわかっている一人だと自負しておりますので解析していきます。
レッドブルのフロアコンセプト
昨年、RB18の特異なフロアに気づき色々な解析を行ってきました。
- 前後に強い負圧の発生エリアを分割
- 広いセンターフラットエリアの優位性
- 長く角度の浅い内側フェンス
- 広い中間トンネルのボルテックス
今回はなぜそのようなフロアにしているのか?どんな利点があるのか?を説明していきます。
フェラーリSF-23とレッドブルRB18の比較
ベンチュリートンネルの高さラインを簡単に表したものです。
2度路面に近づくキックポイントがあるのを「ダブルベンチュリートンネルフロア」と私は勝手に命名しています。
これはRB18初期ですがRB19と基本的なコンセプトは一緒です。
レッドブルRB19のフロア
ビィブの中心ラインから内側フェンスまでの断面積、最初のキックポイントの断面積を大まかに黄色のエリアで示しました。
かなり前の位置で強い負圧(速い流れ)を発生させているのがイメージでわかると思います。
(ノーズ裏の処理が綺麗すぎて脱帽ですね。)
フロント側キックポイントは、先に解析したメルセデスW14よりも明らかに前にある事がわかるでしょう。
この速い流れは、内側フェンス裏を通りサイドから排出されるもの、広くなるトンネルの上昇面に沿って流れるものに大まかに分割されます。
路面との間がぽっかりと空く黄色ゾーンが一つの問題点ですが、これがないとキックポイントは機能しません。
(リアディフューザーの流れを思い浮かべて下さい、負圧が上昇面に沿って流れる、そして空いた空間には流れ込む大気が必ずあります。)
周りの大気を引き込んでしまう空いたゾーンには、路面側にこぼれる曲面になっている内側フェンスからボルテックス(紫矢印)が流れ込み、そのスペースを埋めます。(このイメージ図の部分だと右回りです。)
センターフラットエリアからも少し引き込む流れがあるでしょう。
センターフラットエリア前方は、フェンスによって高まる負圧とファーストキックポイントで発生する負圧などにより、他チームに比べ強くなります。
- フロア前方の負圧を高める事は、レッドブルが過去におこなってきたハイレーキフロアそのものです。
フロント側で空気の力を使ってしまうのでリア側がどうしても弱くなります。
レッドブルは内側フェンスと2番目フェンスとの空間を大きくして空気量を確保、発生するボルテックスの量を増加させて中間トンネルに再度空気を供給しています。
この強力なボルテックスは周りの乱れる流れを吸引しながらトンネル内部を進みます。
それは広いセンターフラットエリアの負圧を守る事に繋がり、安定した中心のフロアダウンフォースを発生させているでしょう。
リアのダウンフォースに影響を与える後ろのキックポイントには新たなソリューションが盛り込まれている。
キックポイント前にはフロアエッジへ逃がす凹みがあります。
その流れはエッジ後ろとデュフューザーへ戻す凹みへと分割されています。
- 高速度域(車高が低い時)ではキックポイントがストールしないように流れの詰まりをバイパスする
- 低速度域(車高が高い時)ではフロアエッジ側から侵入してくる大気の流れ込みを固定化して整える
ものだと思われます。
これらのソリューションは、RB18よりもはっきりとしたものになり、エッジの高さ15mmアップに対応するものだと思われます。
キックポイントの一部を削ってまでこの様な凹みを作っている事に脱帽です。
fondo red bull pic.twitter.com/LhP1K6L0nc
— Emma❤️ || cl16🇲🇨❤️ (@emma_cl16) May 27, 2023
このツイッターの投稿を見るとリア側のキックポイントは台形的な盛り付けになっているように見えます。
この凹み部分の角にはボルテックスも発生するでしょう。(段差を使ったボルテックスジェネレーターなのかもしれない)
- フロアフェンスボルテックス
- キックポイントボルテックス
- ディフューザースリットボルテックス
3つの同じ回転方向のボルテックスは繋がり、流れの安定度をより一層強める事になります。
レッドブルがフロアの重要視するポイントは前方と中心であり、それは車体の中心である。
バウンシングのきっかけにならない所であり、ロール時にも影響を受けにくい所です。
まとめ
昨年、RB18のフロアを見た時、なんですかこれはと頭が混乱しました。
F1から示されていたベンチュリートンネルとは全く違うものだったからです。
RB19のフロアを見て、その進化の度合いを比較する事で疑問点が解消されたのが今回の解析になります。
いやほんとによく考えられている。
フロント側で使ってしまった空気の力、リア側も生かすためにフェンスの広い間隔が存在して空気量を確保している。
丸みを帯びたフェンス裏に速い流れを守る機能と、フェンスボルテックスを強める機能が備わっているなんてよく考えつくなぁと。
リアの新たなキックポイントにしても、他のチームには無い概念が適用されている。
これを研究して追いつこうとするチームにとっては毒でしかない。
先ずはダブルベンチュリートンネルをしっかりと確立する事が必要であろう。
メルセデスを見ればリア側が弱いのは明らかであり、フロント側キックポイントはもっと前にする必要がある。
どうしてフロア前方が強い方がいいのか?
リア側はリア車高の影響を極端に受けるからです。
空気量が多いとキックポイントがストールする可能性が高まり、強くなりすぎる負圧はリアサスを簡単に縮めます。
18インチホイールタイヤは柔らかめのリアサスが絶対必要条件、車高はバンプ(+起伏)や横G最大値で決定されます。
(車高を高く設定するサーキットではリアウィングやビームウィングが大きくなるので確認してみて下さい)
レッドブルはリア側フロアの弱い部分を、面積が広く曲率が高くドラッグの大きいフラップのリアウィングで補っています。
リアウィングで発生するダウンフォースは車高の影響を受けずセッティングを出しやすいからに他ならない。
DRSデルタが大きくなる特典も付いてくる。
とりあえずこの解析は正解半分だと思って下さい。
このフロアを精巧にモデリングしてCFD解析してくれる方いないかなぁっと思いますね。
詳しくわかり易い考察ありがとうございます。m(_ _)m
RB18 & 19のアンダーフロアの前から後ろまでの空力について、個々の知識がバラバラで繋がっていなかったのが、脳内ビジュアルイメージ的なレベルで理解できたような印象です。
レッドブルはディフィーザーの角のデザインを他車からコピーした。
これは2022ウィリアムズからだと言われています。
下位チームのマシンだからって無視はしない。
貪欲ですね~
今年のレッドブルは、余程追い上げられるような状況にならない限り、大型アップデートは無いかもしれませんね。
バジェットキャップもあるし、空力ハンデもありますから、来年の手の内は見せたく無いでしょうし。
レッドブルの開発陣は色々なアイデアを取り入れる風習、トップがそうだからですね。近年は失敗が無い。
これ以上何があるんだと思うほど細かい改良がされている、軽量化に全力でいいんじゃないだろうか。
ディフューザーの角っこ隅っこのエッジに曲げRが大きく着くのと?小さく着くのと?で、排出引き抜き効果とか影響あるのでしょうか?
昔のF1(フラットボトム時代でしたが)ディヒューザー全体が真ん丸い「バットマンディフューザー」とか呼ばれるモノが有りましたが、今使っているスクエア角形とは排出引き抜き効果が変わっているのでしょうね。
大きなディフューザーの角は流れが悪い、円を描くように回転しながら上昇する気流と相性が悪い。
角に急な曲線を作り抜けを良くする。
ディフューザーの中に小さなディフューザーがあると思って下さい。
バットマンは隔壁の間隔が狭く、効果は最高でしたが、感度が高すぎて没になった。
角が丸い事の比較対象になりません。
結果的にリアウイングは大型化してドラッグが増えているはずなのに、
何故か最高速にアドバンテージがあるんですから手が付けられませんね。
このフロアをうまくパクっても、上側のボディの空気抵抗をどうにかしないと
ドラッギーなマシンができるだけという。今のアストンがそれに近い?
そうですね、その認識で合ってると思います。
大きなリアウィングを使うためにボディドラッグをとにかく減らす。
ノーズ下とモノコックの結合部分なんて芸術ですよ、他チームは段差ありまくりな場所なんで。
改めてレッドブルのフロアの凄さを文字とイメージで表しましたが、今シーズンの絶望感が半端ないです。
second kick point と記されたラインの少しフロント側、スキッドの両側に見える銀色の二つの四角は何なんでしょうか。フロアの画像たくさん見てて気になりました。フェラーリにはないですね。
フロアが金属製になっているだけですね。
負圧で曲がらないようになっています。
車高がギリギリまで下がり1mmでも歪めば負圧が増幅され、手に負えないものになります。
ありがとうございます。なるほど剛性を上げるためのリブのようながついているということですね。メルセデスもフロアは黒一色なので同じようなものはついていない。フラットフロア部の歪みまで対策しているレッドブルがすごいのか、フラット部が幅広なのでつけた方が良い(メルセデスは幅が狭いので不要)のかどちらかなのでしょう。
サイドポッドが長いとフロアを支える強度確保部材を付けれて楽になる。
これらの位置はテスト荷重を受ける位置でもあります。
メルセデスもサイドポッド変更と同時にこの処理をしています。
「バットマンディフューザー」なんですが、
1988年エイドリアン・ニューエイ氏が設計したマーチ881が最初に取り入れたアーチ型丸トンネル形状が元祖でしたね。
その後1990年マクラーレンMP4/5Bの開幕戦アメリカGPフェニックス市街地コースだけに使用された(他のサーキットでは一切使われず)のと当時のライバルチームだったフェラーリF641やウィリアムズFW13には丸いアーチ型トンネル形状ディヒューザーが取り入れなかったのを見ると大きな効果が見込め無かった?と考えるのが自然でしたね。
ディフューザーに頼らなくても強力ハイパワーなホンダV10エンジンを持っていて弁当箱みたいな巨大リヤウイングが有るにも関わらずに
アンダーパネルに巨大なディフューザーが付いていたのを見た時には不思議に思いました(話題作り演出効果を狙っただけの?)
1991年のジョーダン191に使われた2連式アーチ型トンネルのディフューザーは圧巻でした。
マクラーレンMP4/5のバットマンディフューザーは効果がなかったと、当時フェラーリからマクラーレンに移籍したアンリ・デュランが「GP CAR STORY Vol.41 McLaren MP4/6」の中で述懐していましたよ。確か、当時の風洞は模型を支える支柱がディフューザー出口付近にあったが、当時のマクラーレンはそれがあることの問題に気が付かずに、実験で出た数値を信じていた、という内容だったと記憶しています。
もう一つ、ジョーダン191のダブルディフューザーもまた、ダウンフォースが発生していなかったようです。1991年のF1グランプリ特集で、由良卓也氏による最強の空力デザインを探る企画があり、その中で、まず1990年のマクラーレン、フェラーリ、ウィリアムズのマシンのプラモデルを風洞実験にかけ、さらに1991年シーズンの各チームの空力デザインを風洞実験にかけ。それを繰り返してよい結果が出たものを合体させていくというものでしたが、その中でジョーダン191のダブルディフューザーも風洞実験にかけたところ、ダウンフォースが大きく減ったそうです。ディフューザの角度が急だったせいで気流が剥離していたというのが、由良氏の見立てでした。見た目はすごく格好良いのですが。
RB19について語る場所なのであまり答えたくはないですが、191が機能していなかったは嘘ですよ。
スパであんなタイムが出る訳が無い、所詮プラモデルでしょう。
アンリ・デュランか。好きな空力デザイナー(エアロスペシャリスト)でした。
この時代から1人の設計デザイナーがマシン全体を最初から最後まで面倒見る体制では無く必ず、もう1人のメカニカルデザイナーとの共同設計。
マクラーレンではアンリ・デュラン+ニール・オートレイ。
ウィリアムズではエイドリアン・ニューエイ+パトリック・ヘッド。
ラルース・ローラではクリス・マーフィー+ジェラール・ドカルージュ。
頑固親父デザイナーだった?ジョン・バーナードにもスティーブ・ニコルズと言う優秀なアシスタント助手デザイナーがいてMP4シリーズやフェラーリF640系を上手く引き継いで改善改良していった。
現在のレッドブルではエイドリアン・ニューエイと共同でマシン設計を担当するアシスタント助手的な存在は誰になるでしょうか?
ダン・ファローはアストンマーチン、ロブ・マーシャルはマクラーレンに引き抜かれてしまいましたからね。泣
エイドリアン・ニューエイの後継者デザイナー(愛弟子)は存在するでしょうか?
レッドブルRB19に限らず全チームのマシンがディフューザー出口の中央センターにレギュレーションで義務ずけられている衝撃吸収構造体「ストラクチャー」の出っ張りが備え付けらていますね(画像でジャキアップする時に引っ掛ける部分)
あのストラクチャーは、左右のベンチュリートンネルから出てくるエアーが合流する際に仕切り板としての機能も果たしていますね。
この仕切り無ければ左右から排出されるエアー同士がぶつかり合って
排出引き抜きがスムーズにいかない?
左右ベンチュリーが入口から出口まで完全に独立して干渉しない?
形状的には「Mまたはm」字型ですね。