レッドブルRB19からRB20への進化について、中編ではノーズとフロントウィングについて解析しました。
後編では、ビィブ・フェンス・サイドポッド・キャノン型カウルについて確認していきます。
ダウンフォースが増加したフロントウィングによって上昇気流が増加している。
その対策がマシンに加えられています。
レッドブルRB20のビィブ&フェンス
先ずはRB19のビィブとフェンスを確認しておきましょう。
次にRB20です。(まだ見やすい画像がありません)
ビィブ先端の横幅が減少して細くなり、Tトレイが大型化、中間に位置するボルテックスジェネレーターが大型化、1番フェンスの下方がカットされています。
フロア前方の最終的な横幅は変わりなく太いです。
ビィブとフェンスは、トンネルやフロアに流れる空気を加速させる収縮機能を担っています。
RB20は先が細くなり、収縮の度合がRB19より緩やかになっています。
フェラーリやマクラーレンに習い、フェンス下方をカットしている事から、トンネルへの気流を増加させた事がわかります。
これはノーズの変更によって生じるフロアへ届く空気量の減少に対処する為だと思われます。
モノコック下の乱流に対して、大型化したTトレイやボルテックスジェネレーターで流れを安定化させる狙いがあるでしょう。
レッドブルRB20のサイドポッド
サイドポッドは増加したフロントからの上昇気流を抑える為に、先端を最大高さに設定している。
これによって、乱流がサイドポッド上面にほぼ到達しなくなったのだろう。
過去2年間存在した上面から側面への溝がなくなり綺麗な造形になっています。
インレットは下方に存在し、フロントで発生した乱流を吸い込むようになっています。
レッドブルRB20のキャノン型カウル
コクピット後ろのエンジンカウルを低く、リアウィングにフレッシュエアーを導く、これが今までの定説でした。
昨年メルセデスが高いエンジンカウルを導入していたが、その概念をレッドブルが採用してきた事が何らかの優位性がある証明になります。
レッドブルはRB19でエンジンカウル後端を急な曲率で下げるアップデートをしていましたが、RB20ではそれを強めた事になります。
進行方向に隠れる面に急な曲率を使うと流れが速まり負圧になる、負圧は周りの正圧(この場合はその上の大気)を引き寄せる。
コクピット後ろのカウルをほぼ同じ高さと幅のまま維持、乱流をボディに這わせて整流している。
コクピットとインダクションポッドで発生した乱流をエンジンカウルのスライダー(速い負圧な流れ)によって纏めている。
内部空間は増加、内部ドラッグの減少にも繋がるだろう。
エンジンカウルのアウトレット近くに速い流れを集中(上面と側面)させており、内部気流を引き抜く作用をも高めています。
これによってインレット面積が少なくても冷却機能を維持できます。
レッドブルRB20の冷却用インレットを見ていると、インダクションポッド以外の6か所は全て乱流の吸い込みになっています。
インダクションポッドからの空気はラム圧効果によって加速します。(高速域ではカウルが膨らむぐらい強い)
その強い気流によって、他のインレットからの気流を内部で引っ張る事が出来る。
冷却用空気はフレッシュエアーを入れた方が良いと言う定説をも覆すレッドブルRB20です。
RB18からの進化と言ってはいますが、これはエボリューションではなくレボリューション(改革)だと思うのです。
いつも分かりやすい解説をありがとうございます
解説の通りですと、カウル内部の空気の流れはラム圧等によって流速が早められるようですね
その効果を利用して、インダクションポッドを小さく出来ているという事でしょうか?
コックピットの後ろのデザインはよそのチームが真似してくるでしょうか
根本的なデザイン変更になりますので、簡単ではなさそうですが。。。
インダクションポットやそのインレットは大きいです。
インダクションポッドのインレット面積の半分以上はセンターに置かれたラジエーターに使用されます。
その気流が強く、内部でサイドからの気流を引っ張る事が出来る。
この高くて大きなエンジンカバーは真似できないと思います。
再現性が怖くて実行できないでしょう。
そういえば戦闘機F-22のエアインテークが少しボディから離れているのは、エンジン内にスムーズに空気を取り込むためだとか。RB20のボディ側面極細エアインテークも、そうやってボディサイドの流れを整える役割を果たしているんでしょうね。
んで冷却の方は、「空気を効率よく送り込む」ではなく「後ろを負圧にして無理矢理空気を引きずり込む」発想で、乱流だろうと何だろうと空気量が確保できればいい、と・・・
複数のイントレットを乱流吸い込む掃除機のように使うって凄い発想ですね。
内部の構造まで風洞やCFDでシミュレーション出来るものなんですかね?
内部流路の実験は、時間制限が無いのでCFDも風洞も使いたい放題です。
レッドブルが2023年最も力を入れた部分でしょう。(ペナがあったので)
えっ?
制限無しなんですか!
そうなると、今年は無理でも来年は真似するチームがありそうですね。
冷却に関する設計には制限が無い、が正解ですかね。
まず驚いたのはインレットの数や場所って結構自由度が高いんだということでした。
このトータルパッケージが去年の唯一勝てなかったあのコースに対してのひとつの回答、アプローチということですかね。
車高を上げた低速コーナーでもダウンフォースを確保できるパッケージなんでしょうか。
低速ターンのブレーキングからターンインまでが確実に速くなっています。
それでいてトラクションゾーンは一番なので、総合的に低速ターンが改善されています。
ブレーキングからターンインまでなら最速はフェラーリのルクレールですけどね。
レッドブルRB20風を取り入れて真似するチームマシンが出てくるかと思いますが、
現行レギュレーション最後となる2025年開幕からでは時間切れで遅過ぎる?
早くても今シーズン後半から着手しないと間に合わない?
レッドブルと肩を並べるとは行かないまでも差を広げられない様にするためにも。
現在最下位?のアルピーヌA524なんかは、これより下位に落ちる事は無いので早急にレッドブル風を取り入れたら良いのにと思いました。
レッドブルの次に位置するフェラーリやマクラーレンは、レッドブル風を取り入れるとしても様子見ながらなので遅いでしょうね。
アルピーヌに継続性ある開発は、現状体制では無理です。
アルピーヌは+10kgで0.3秒、-10kwで0.2秒、計0.5秒遅い理由は明確です。
車体に目立った性能無し?ルノーPUも劣る?スタッフ人材も流出する?
アルピーヌは2重苦、3重苦の問題を抱えている。
急場凌ぎの改善だけでは最下位脱出も厳しい状況ですね。
現行レギュレーションを諦めて次期レギュレーションに向けて体制整えたほうが良いとも思いましたが、それも難しい重苦しい雰囲気が感じられるアルピーヌです。
メルセデスが捨てたコンセプトを、逆にレッドブルが取り入れて更に性能高めたのでメルセデスにとっては屈辱と言うか?苦々しい思いでしょうね。
現在メルセデスは、カスタマーのマクラーレンやアストンマーチンからも追撃受けてレッドブルやフェラーリと肩を並べるまでには程遠い。
ヘイロー脇のインレットはコクピットまわりで発生する流速の遅い高圧の空気を吸い出して、インダクションポッドやリアへ汚れた空気が行かないようにしているんでしょうか。
そのうえで、さらにスライダーを使って流れを整えてから、きれいにリアで使うイメージなのかな。
ヘイロー付け根のインレット新設とカウルの大型化で、内部の流路の抵抗を減らして、アウトレットでも負圧を作って引き抜いてあげるという冷却周りの変更があったから、サイドポッドの開口は狭くできて、それがフロアのダウンフォース向上に繋がってるってことなんだろうな。
外見をいじるためには内部でかなりの作業が必要だから2026のレギュレーション変更を見据えると、他チームがこのコンセプトを真似しするのは難しいのかも。
ヘイロー脇のインレットの先には小さなラジエーターがあります。
排出方向は内向きになっています。(最初はすぐ脇のルーバーでしたが変更)
2026年次世代PU搭載のF1マシンがレッドブルRB20のようなスタイルが標準になるのか分からないですが1つの方向性を示していますね。
次世代PUの電動化比率50%に上がって内燃機関ICEの出力が下がるので冷却負担が少なくなって小型熱交換機器の配置スペースで済むからサイドポッドやインダクションポッドもコンパクトになるのでは?
でも電動関連(MGU-Kなど)も発熱するから冷却必要(一定温度に保つ)ですね。
果たしてレッドブルRB20が未来F1マシンを先取りしたモノになるか?
レッドブルが開発の手を緩めなければ、
まだ2025年も残っているので更なる変化RB21?も見られるので楽しみです。