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F1を見ていると絶対に出てくる用語として「デグラ」があります。

これはデグラデーション(degradation)の略語で、タイヤの性能劣化の事になります。

 

周回を重ねるF1タイヤのゴムは、驚くべく速度で剥がれて行きます。

主にターン(コーナー)でのスピードが落ちる事でラップタイムが悪くなってしまいます。

 

近年、あまり使われなくなったフューエルエフェクト(fuel effect)を交えて解説していきます。

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デグラデーション(degradation)とは?

F1のみならずレーシングタイヤ全般に言える事ですが、レーシングタイヤは路面との摩擦熱で表面が溶けてベタベタの状態になります。

その粘着力によって路面に張り付きグリップする仕組みになります。

 

タイヤはベタベタになり路面に張り付くため、路面側にゴムが張り付いて剥がれてタイヤが減っていきます。

減ったタイヤは段々とグリップ力が落ちてきて速く走れなくなります。

 

その性能劣化を「デグラデーション」略して「デグラ」or「デグ」と言います。

 

私たちがいつも乗ってる車のタイヤは、路面の細かい凹凸にタイヤが変形し嚙合わせることでグリップします。

レーシングタイヤとは根本的に違うものになります。

フューエルエフェクト(fuel effect)とは?

フューエルエフェクトとは、燃料が消費されマシンが軽くなって速く走れるようになる度合を表します。

F1マシンはサーキット毎に、重さによるラップタイムの減少度合がありますが、平均して約0.3秒/10kgと言われています。

 

燃料のフルタンク(満タン)状態を110kgとして、最終ラップで空になると仮定した場合。

1ラップ目と最終ラップでは、約3.3秒もの差がある事になります。

 

近年はレース中の給油が無くなった為、解説でフューエルエフェクトはほぼ使われなくなりました。

分かり易くする為に、デグラデーションのみで解説する事が多いです。

 

※実際はフューエルエフェクトを含んだデグラデーションと言う事になります。

実例によるデグラの解説

2022年開幕戦バーレーンGPプラクティス2におけるラップタイムを検証します。

※ラップの分は除外しています。タイヤはソフトで数字は使用周回数です。

VER SAI
Lap Time Tyre Time Tyre
1 37.165 S6 38.651 S7
2 37.132 S7 38.438 S8
3 37.137 S8 38.407 S9
4 37.743 S9 38.537 S10
5 37.498 S10 38.576 S11
6 37.618 S11
7 37.818 S12
8 37.512 S13
9 37.624 S14

バーレーンの燃料消費は1.8kg/Lapと言われています。

1周辺り0.054秒速く走れる事になります。

 

大雑把な検証ですが、フェルスタッペンは8周で0.459秒遅くなっています。1周辺り0.057秒です。

これにフューエルエフェクト0.054秒を加味すると、タイヤの本当のデグラは0.111秒となります。

 

サインツはラップタイムの落ち込みがほぼありません。

タイヤのデグラはフューエルエフェクト分の0.054秒と考える事が出来ます。

 

サインツの方がタイヤに優しいと思われるかもしれませんが、ラップタイムの遅さからも抑えて走っていたと言う事がわかります。

一方、フェルスタッペンはラップタイムが速くデグラも多いので、攻めていたと言う事がわかります。

まとめ

実際の解説では、フェルスタッペンのデグラは0.05秒、サインツは無いと言ったものになります。

デグラは、マシンの違い、セッティングの違い、走り方により変化します。

 

レースでは、タイム差が広がっていくから遅いとは言えず、ピットイン回数を減らすためにセーブした走りをしている事もあります。

ピットインロスタイムは大体20秒ぐらいです。

 

オーバーテイクできる前提であれば、最速のタイヤ戦略をとることも可能ですが、前を塞がれラップタイムが落ちてしまう事も考えて戦略を考える事が必要となります。

ガンガン走るトップ争い、中団グループのデグラを考えたペース配分争い、単純な競り合いが無くても楽しめるポイントは沢山あります。

 

2022年はコンパウンドによるラップタイム差が非常に大きいようです。

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主にサスペンションセッティングの違いがタイヤにもたらす影響も大きく、タイヤをいかにして上手く使うかが勝負の鍵を握ります。

 

今回は、F1初心者さん向けにデグラデーションを解説してみました。