マクラーレンへ移籍したダニエル・リカルドが大苦戦中。3年目ノリスに一方的にやられてしまっている。
問題は、マシンへの習熟度とドライビングスタイルにあると思われる。
モナコでリカルドはQ2敗退、ノリスはQ3まで進み予選5位、Q2では0.567秒差がついてしまった。
ドライバーズサーキットと言われるモンテカルロ市街地コースで、この差は大きい。
どのような違いがあるのか解析してみます。
モンテカルロ市街地サーキット:ターン1テレメトリー
モンテカルロ市街地サーキットのターン1のみですが、ブレーキング開始から4秒間のテレメテトリーデータ。
オンボード映像でわかるスロットル開度やブレーキ、ステアリングの角度をグラフにしてみました。
テレメテトリー解析
ブレーキング開始位置は、二人ともほぼ一緒です。
テレメテトリーデータを見ると、ノリスの方がスロットルをかなり残しつつブレーキタッチしているのがわかると思います。これは多分ブレーキへの熱入れなどが考えられます。
そして、最終的な速度の落ち込みはノリスの方が早くなっています。
リカルドは、145km/hでステリング操作を始めますが、ノリスは138km/hです。
ステアリングの角度を見ると、リカルドはスロットルオンと共に徐々に戻すスタイル、それがボトムスピードの位置に決定的な差を生み出します。
ノリスは縁石に乗ったところで最低速度になっているのに対して、リカルドはその先であり、スロットルも40%ほど開けている状態でした。
フルスロットルが遅れ、ブレーキング開始から4秒後には、このように大きな距離の差が生まれています。
ドライビングスタイルの違い
リカルドは高い速度を保ったままターンインしてしまっている、スロットルオンによるオーバーステアを作り出せずアンダーステアとなり、マシンの向きを変えるためのステアリング抵抗で大きく速度が落ちてしまう。
ステアリングやスロットル操作は一見してスムーズに見えますが、アンダー傾向なマクラーレンMCL35Mを曲げることが出来ていない、結果的にフルスロットルが遅くなっています。
テレメテトリーデータは、ブレーキの強弱がわかりませんがノリスの方が高い減速力を持っています。
若干長いブレーキタッチ時間は、フロント荷重状態を保ち、適切なタイヤ温度を保ち、マシンの向きを一気に変える事が出来ていると思われます。
そして、スロットル開度の増加に伴い、素早くステアリングを戻し、マシンを真っ直ぐ加速させる事が出来ています。
レッドブルやルノーに乗ってきたリカルド、基本的にターンインが速いフロント寄りなマシンに慣れてしまっている事が、ノリスと同じように走れない原因の一つでしょう。
ブレーキングに自信がついた時、同じように走る事が出来るかはわからない。
まとめ
モナコでアンダー寄りなマクラーレンのノリスがここまで速いとは予想外でした。これはもっとアンダー寄りなマシンである、アルファタウリのガスリーにも言える事。
曲がらないアンダーなマシンではなく、曲げるためのテクニックが違うだけです。
フェルスタッペンなどにも見られる、スロットルオンと共に素早くステアリングを戻すテクニックも重要だと考えます。
パワーが年々増加しているF1マシンは、早くスロットルを開けるV字型ラインがより顕著になっています。
若いドライバーに、似たようなドライビングテクニックが存在しているのは事実であり、これが世代交代と言えるものなのかもしれない。
テレメテトリーデータ
T1 | RIC | NOR | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Time | SPD | Thr | Bra | Ste | SPD | Thr | Bra | Ste |
0.00 | 289 | 100 | 0 | 0 | 285 | 100 | 0 | 0 |
0.10 | 286 | 70 | 1 | 0 | 285 | 90 | 1 | 0 |
0.20 | 281 | 0 | 1 | 0 | 283 | 30 | 1 | 0 |
0.30 | 274 | 0 | 1 | 0 | 282 | 0 | 1 | 0 |
0.40 | 263 | 0 | 1 | 0 | 267 | 0 | 1 | 0 |
0.50 | 245 | 0 | 1 | 0 | 256 | 0 | 1 | 0 |
0.60 | 234 | 0 | 1 | 0 | 244 | 0 | 1 | 0 |
0.70 | 223 | 0 | 1 | 0 | 218 | 0 | 1 | 0 |
0.80 | 211 | 0 | 1 | 0 | 204 | 0 | 1 | 0 |
0.90 | 199 | 0 | 1 | 0 | 197 | 0 | 1 | 0 |
1.00 | 193 | 0 | 1 | 0 | 187 | 0 | 1 | 0 |
1.10 | 181 | 0 | 1 | 0 | 175 | 0 | 1 | 0 |
1.20 | 175 | 0 | 1 | 0 | 169 | 0 | 1 | 0 |
1.30 | 161 | 0 | 1 | 0 | 159 | 0 | 1 | 0 |
1.40 | 154 | 0 | 1 | 0 | 146 | 0 | 1 | 0 |
1.50 | 145 | 0 | 1 | 40 | 138 | 0 | 1 | 30 |
1.60 | 139 | 0 | 1 | 45 | 133 | 0 | 1 | 50 |
1.70 | 132 | 0 | 1 | 60 | 128 | 0 | 1 | 60 |
1.80 | 127 | 0 | 1 | 85 | 124 | 0 | 1 | 70 |
1.90 | 123 | 0 | 1 | 85 | 123 | 0 | 1 | 85 |
2.00 | 121 | 0 | 1 | 85 | 121 | 0 | 1 | 90 |
2.10 | 118 | 0 | 1 | 90 | 119 | 0 | 1 | 90 |
2.20 | 116 | 10 | 0 | 90 | 115 | 0 | 1 | 90 |
2.30 | 116 | 10 | 0 | 90 | 114 | 10 | 0 | 90 |
2.40 | 115 | 20 | 0 | 90 | 114 | 20 | 0 | 90 |
2.50 | 112 | 25 | 0 | 90 | 114 | 40 | 0 | 70 |
2.60 | 112 | 30 | 0 | 85 | 115 | 40 | 0 | 50 |
2.70 | 111 | 40 | 0 | 85 | 116 | 50 | 0 | 40 |
2.80 | 112 | 40 | 0 | 80 | 117 | 50 | 0 | 40 |
2.90 | 115 | 50 | 0 | 70 | 118 | 60 | 0 | 30 |
3.00 | 117 | 60 | 0 | 60 | 122 | 70 | 0 | 20 |
3.10 | 120 | 70 | 0 | 45 | 125 | 70 | 0 | 10 |
3.20 | 123 | 80 | 0 | 30 | 130 | 80 | 0 | 0 |
3.30 | 125 | 80 | 0 | 20 | 133 | 90 | 0 | 0 |
3.40 | 128 | 90 | 0 | 20 | 136 | 100 | 0 | 10 |
3.50 | 134 | 100 | 0 | 10 | 140 | 100 | 0 | 0 |
3.60 | 139 | 100 | 0 | 0 | 145 | 100 | 0 | 0 |
3.70 | 146 | 100 | 0 | 0 | 152 | 100 | 0 | 10 |
3.80 | 150 | 100 | 0 | 0 | 156 | 100 | 0 | 0 |
3.90 | 153 | 100 | 0 | 0 | 165 | 100 | 0 | 0 |
4.00 | 162 | 100 | 0 | 0 | 169 | 100 | 0 | 0 |
なるほど!
アロンソがオコンに負けているのも、多分これでしょうね。
アルピーヌは、フロント寄りなマシンなのでちょっと違うかな?
中野さんがフェルスタッペンやノリスはカートに乗ってるようにマシン全体で曲げると言っていました
これと関係があるのですかねえ?
ノリスはリカルドよりサインツの方が好みのマシンでない時ベストを出せるとも言っていました
シミュレータやゲームを多くする世代とそうでない世代で何かが違う気がしますね
今回の検証でわかったことは、ノリスの方が鋭くブレーキングしてステアリングを切って、一気にマシンを回転させている点。
それでも速度が高く、スピンしないドライビング・・・極小スピン状態?ドリフト?そんな印象です。
シミューレータはGを感じないで限界点を見極めれますよね、昔ながらにGで限界点を感じているドライバーと差がでるのかな?
怖いと感じるスピードとGの感覚に違いがあるように思います。
はじめまして。
アンダーを苦手としている角田は、リカルドと似たようなドライビングスタイルなのでしょうか?
角田君のテレメトリー付きオンボードが出回らないんで検証不能なんですよね。
ガスリーと角田の差、ノリスとリカルドの差、案外似たような感じだと思っています。
どんなにセッティングをいじろうともマシンの素性であるアンダーは消せない、消せば全体的なダウンフォースレベルが下がり遅くなります。
テクニックで曲げるしか道はないでしょう。
ご回答ありがとうございます。
なるほど、テレメトリーが出回ってないのですね。
角田選手には頑張ってガスリーに追いついて貰いたいものです。
今のハイテクマシンは、ひと昔前のアナログマシンと違って『尖っている』のでしょうね。
移籍したドライバーのほとんどが苦戦していますね。
ほとんどは、タイヤの温度が理想の状態にならず、機能しない事により起こっています。
ウィンドウの狭いピレリのせいでもある。
フェラーリが速くなった理由には、ピレリタイヤの理解が大きい。
タイヤ変形や温度変化をデジタル化したなんて話があります。そういえば昨年フェラーリはタイヤに特化したカメラを導入してテスト走行してました。
タイヤへの熱入れが良く話題に出ますが、F1ドライバーのスキルがあれば効果的なやり方
などは充分理解出来ていると思いますが。
相当ピンポイントでセンシティブな作業なのでしょうね。大変だ..。
メルセデスもタイヤへの理解を進めていますし、マルコもリアウィングよりタイヤが重要と言っていますね
フェラーリの話で思い出したのですが、ノリスが今井さんの事を神と言っていましたし、チームもかなりの信頼を置いてるようです
タイヤを理解してるチームが速い印象ですね
F1チームはドライバー2名体制が基本ですが、
はっきりとNo.1とNo.2が明確になっている場合は、No.1ドライバー好みに合わせたマシンをNo.2ドライバーが合わせる格好となると普通考えますね。
特に以前から所属しているドライバーと後から移籍してたドライバーではマシンの馴れ、不馴れもあると思う。
以前聞いた話でマクラーレン・ホンダのセナとプロストですが、
マシンの好みは二人共に似ていてセットアップは基本同じだそうです(と言うかプロストがセットアップしたマシンをセナが乗りこなした)
レースの戦い方自体は違いますが?
メルセデス、レッドブルホンダに次いで第3の有力チームに一番近い位置であるマクラーレンですが、
MCL35Mも今シーズンからメルセデスPUにチェンジして直ぐにポテンシャルを発揮しているので、リカルドとしては移籍選択したのは良かったと思います(アルピーヌのマシンに引き続きドライブするより)
後は残りレースで違うコースを繰り返しながらMCL35Mに馴れるのを気長に待つしかない。
レッドブルでは何度も優勝した実力ドライバーですから。