オフシーズン恒例のF1ホンダエンジンの開発に関する記事が、Motorsportのテクノロジー 2018 – 2019 [ モーターファンイラストレーテッド 特別編集 ] (モーターファン別冊)に公開されました、発売から1週間ほどたってようやくKindle Unlimited(初回30日無料、月額980円)で見れるようになっています。
今回は過去の特集より内容は薄く、今までインターネット上で出回っている情報のいわばまとめ的なものになっている。メインはポルシェLMP1の徹底解剖で、こちらもF1と似たターボ回生を使用しているので興味がある方は是非ご一読下さい。
ホンダRA618Hの主な開発項目
2018年は2017年のコンセプトを継続する事が主な焦点、またトロロッソへのインストレーションによって得られたゲインについてなど、主だったものについて注目してみます。
吸排気系の改良(スペック1)
吸排気系の改良は、上の画像を公開したF1iでもすでに説明されているが、主だった項目はエアフィルターの拡大とエキゾーストの再設計となっている。各種パイピングが緩やかな曲線に変化して、吸排気系全体で性能向上に寄与している。
圧力損失の低いインタークーラーをトロロッソが用意してくれた事により、単純にマクラーレンから積み替えただけで馬力が出たと言う。トロロッソがホンダのやりたい事を実現させると言っていた通り、車体側からスペースをもらったホンダはそれを最大限利用する形で、パワーをトロロッソに与えた事になる。
またこの左右独立式インタークーラーとプレナムチャンバーにより、左右で温度変化が起こる事が心配されるが、いざ走ってみると思っていたほどアンバランスでは無かったという事です。
ウォーターポンプの損失低減(スペック2)
カナダGPに投入したスペック2では燃焼・排気系・ウォーターポンプの損失低減を行った。燃焼に関してはエンジン開発の肝になる部分であり、スペックが変わるごとに新しくなるのは周知の事実ですが、ここで注目したいのはウォーターポンプの損失低減というところ。
この情報はシーズン中に多分なかったと思う。エンジンの動力はギアボックスを介してタイヤに伝える事の他に、燃料ポンプ・油圧ポンプ・ウォーターポンプなどにも使われる。
初パートナーという事もあり、ラジエーターに繋がるウォーターポンプを大きめにしてマージンをとっていたが、スペック2において余剰の仕事をしていたポンプを小さくした。
新しい燃焼技術(スペック3)
スペック1からスペック2においては継続的な開発で得られたものですが、スペック3は研究所において良いものがみつかったとの事で投入された燃焼となる。これは大きく開発計画を前倒しにしており、皆さんが知っている通り信頼性が損なわれていたものになる。
このスペック3については主だった説明はまだない。2019年に向けたベースとなるもののため情報はまずでてこないでしょう。
SAKURA研究所の折原さんの語りで
「MGU-Hがなければ、リーンにしていくのが正解かもしれません。燃焼だけよくしていくとMGU-Hの回生量は減っていくので、うまくバランスさせる必要がある。」
という部分があった、これはリーン燃焼⇒タービン効率の低下を意味しており、当ブログでも度々指摘させてもらっている技術的に大きく難しい部分です。
まとめ
車体側との折り合いによる性能向上は開発の肝である。トロロッソとの初会談において「ホンダがあまりにも車体側についてマクラーレンから知らされていなく驚いた。」という情報がありましたね。
ハイブリッドエンジンであるパワーユニットは車体とのマッチングが大きく影響する事が、2018年に嫌って言うほど感じた事実でした。
エンジンの動力を使うポンプ関連の損失低減など、パワーが無い、スピードが出ない事はエンジンメーカーだけのせいではないという事です。フルワークスの強みが即座にパワーバランスに影響する現行パワーユニットの難しさがこれで少しでもご理解いただけたらいいと思っています。
レッドブルとはこういった部分でも最強のパートナーであることがわかります。ポンっと差し出されたルノーPUを車体に組み込みあの速さを披露しているチームですから、本気でお互いが良いところを伸ばし、悪いところを改善する事で、驚きのスピードを見せてくれるでしょう。
初年度である今年は、まぁまぁかな思っている私ですが、日に日に期待は高まる一方です。
是非、優勝して今まで4年間苦労してきたホンダのスタッフ達に安息を与えてほしいと思うばかりです。
ウォーターポンプは市販車でも電動化進んでいますが、レギュレーションで縛られているのでしょうか?
5.13.1 10barを超える供給を行うすべての冷却ポンプ、スカベンジポンプ、オイル/空気分離器、油圧ポンプは、固定された速度レシオで、エンジンおよび/あるいはMGU‐Kに直接機械的に運転されなければならない。
上記がレギュレーションです。
固定された速度レシオという事はクランクシャフトへ繋がっていて、MGU-Kはクランクシャフトに常に直結です。
わざわざMGU-Kのデプロイを使って稼働させる事はないので、エンジン本体のパワーを使います。
それにしてもマクラーレン時代のエアクリーナーはホント小さい。ダクトだけ太くたって意味なかろうに。人間で言えば水泳の息継ぎを口ではなく鼻だけでしているようなもんだ。
余談ですが市販車チューニングカーでコンプレッサーにエアクリーナー無しで金網を付けることがありましたが、網をベタに平にして付けるのと茶こしのように半円状にして付けるのではパワーの出方が全く違います。
ニワカでも想像つくような事をマクラーレンともあろうコンストラクターがそんな事も分からずサイズゼロを進めようとしてたのかと思うと情けなくなりますな。
現在のF1マシンの中ではマクラーレンが最もエアダクトが小さいのではと思います。
エアクリーナーはサイズゼロが影響しているのかなとも思いますが。
噂ではマクラーレンのシャシーは空気抵抗が大きいので、少しでも抵抗を減らす為に
エアダクトを小さくしているらしいです。レギュレーションでここに穴空けるんだろう
な感じでPUについて配慮は無さそうですね。今年も同じダクトのようでしたし。
今後は元トロのJKとかポルシェのエンジニアとかが入るようなので変わるかも知れませんね。
エアクリーナーが「小さい」ってのをどの画像見ていってるのかわからないけど、ほんとうに小さい場合、「その程度しか空気を吸入しないから」小さいってほうがありえるんじゃないかな。 初期ホンダエンジンはタービンが小さかったのであんまり効率よくなかったというし。
これは大きくレイアウト変更した617とその継続的コンセプトである618の比較の話で、2016までの言わば初期の話ではありません。
エンジン前面にある太いダクトの上にフィルターが見えると思います。画像が同じ縮尺ではないのでわかりにくいですが、明らかに小さいですよ。
何を言わんとしたいかと言うと、マクラーレンがスペースをくれなかったせいで20kwぐらいは損してたって事ですね。
17年のでけっこう大きいので、その話をしているとは気づきませんでした
画面奥の方向に傾いてるので(エアフィルタの端が「w」状に見えますよね?かなり角度着いた斜めだからです)奥行き方向にけっこう面積あるんですよこれ。
17年と18年のダクトの形状とエアクリーナーの形状を見れば一目瞭然です。
17年より18年の方がダクトの入口が広くなっておりエアクリーナーも表面積を稼ぐ形状になっているのが見えます。
インダクションポットが大は小を兼ねるとは思いませんが、程度の問題はあるにせよエアクリーナーは大は小を兼ねると思います。
15年(初期)と17年とでは話はまた違うのかなとは思います。