2015年から復帰したホンダF1プロジェクトは、トップチームの一角であるレッドブルと共に2019年念願の勝利を手に入れた。

前年度4勝のレッドブルと組む、早めに準備をしていたとはいえパートナーシップ1年目ある事、そしてリカルドの離脱などを考慮し、2勝できればいいと思っていたので、3勝できた事は本当に良かった。

しかしながらF1は甘くない、全てが揃わなければ継続した勝利は難しいと言うのが現実、ホンダはまだトップのパワーを発揮していないのだから。

2020年チャンピオン争いする期待を込めて今一度、復帰した2015年からのホンダF1を見直していきましょう。過去の失敗やその後の試行錯誤など、知らない方に向けた復習的記事になります。

Sponsored link

ホンダF1復帰発表と第1世代PU

項目 日次 備考
パワーユニット規程発表 2011年6月 2014年より導入
ホンダ復帰参戦発表 2013年5月 2015年から参戦
ホンダR&D F1部門完成 2014年1月  栃木SAKURA研究所

上記の表からもわかる通り、ホンダは実質たったの1年10カ月の開発期間で参戦したことになる。継続参戦していた3メーカーは新規定導入までの間、話し合いもされておりその差2年以上、基礎研究の差が非常に大きかったのがわかると思う。

2015年RA615H

HONDA RA615H

復帰初年度は、超コンパクトなRA615H、レイアウト的にはメルセデスと同じように前方にコンプレッサー、中間にMGU-H、後方に排気タービンがあるセパレートタイプと呼ばれるものであるが、全てがVバンク内に押し込んだ形となっている。

あまりにも小さなコンプレッサーであったため軸流式だと噂も上がるほど小さかった。ターボエンジンの肝とも言うべく吸排気系の容量の少なさにより大失敗のエンジンであった。また、トークン制度と言う開発制限によりほとんど改良出来ずに2015年は散々たる結果となった。

2016年RA616H

HONDA RA616H

RA616Hは前年度型の改良版であった。この年まであったトークン制度によりコンプレッサー・MGU-H・排気タービンはVバンクの外に出す事が出来なかった。それらをVバンク内で上昇させ、径を大きくした事で重心は上がったが全長は短い。

第2世代PU

トークン制度の廃止により、全ての領域で新設計できる状態となった。やっとタービンサイズを大きく出来る事になり、ホンダのレイアウトはメルセデスとほぼ同一となる。

2017年RA617H

HONDA RA617H

大きな変更点はVバンクから出たコンプレッサーと排気タービン、エキゾーストの始まる位置が下がっているのが画像からもよくわかる。

主な問題はMGU-Hと排気タービンを繋ぐ長くなったシャフトの軸ブレによるものだった。微振動によりMGU-Hに関わるトラブルが多かった。最終的にホンダジェッドの技術を使い対処している。

前方にあるオイルタンクの問題もあったが、この年ホンダはやっと基本ベースとなるパワーユニットを手にした。

2018年RA618H

新たにパートナーとなったトロロッソに搭載されたRA618H、大まかなレイアウトに変更は無いがエキゾーストが大きくなっている。補器類であるインタークーラーが左右サイドポッドに振り分けになった事が一番大きな変更点だった。

2017年にやっと導入されたプレチャンバー燃焼技術の向上や、レッドブルテクノロジーとの連携強化による車体とのマッチングに主眼が置かれた年となっている。

2019年RA619H

https://www.f1technical.net/

レッドブルにも搭載される事になったRA619Hは外見上で大きく変わっていないが、左右振り分けインタークーラーに対応するコンプレッサーのツインアウト化やエキゾーストの小型化などが大きな変更点であった。

コンプレッサーで圧縮した空気の導線を左右均一にする事で、左右バンクにある3気筒づつの同調性能は向上している。

ホンダジェッドの技術を取り入れたタービン系はその能力を十二分に発揮、スーパーリーンバーン燃焼技術は確実に向上しておりストレートにおける加速勝負では、メルセデスやフェラーリに引けを取らない性能を発揮した。

まとめ

復帰発表から今までのホンダF1を簡潔にまとめてみましたが、2017年まで初期開発段階だった事がわかると思います。また予算が潤沢にあったとしても技術者の育成に多くの時間を要した事で、復帰からの3年間は本当に大変な状況だった。

パワーユニット規定が発表されてからの基礎研究の差が大きかった2年間、メルセデスが2014年から導入しているレイアウトを結果的に真似る事になった2017年からが、ホンダとしてやりたい事ができたと考えるのが妥当だと思う。

 

6年間チャンピオンチームであり続けるメルセデスを倒すためには、ホンダがトップパワーを発揮しながらも耐久性を大幅に上げなければならない。レッドブルとのマッチングは2年目で更なる進化を遂げるはず、2019年の結果から継続した優勝争いをするためにはまだまだ必要なものがある。

メルセデスやフェラーリと大きく違う点では、インタークーラーの水冷化(油冷化)、エキゾーストのサイズなどがあるが、一体どのような施策を講じてくるのか非常に楽しみな部分です。

 

ドライバー、チーム、ファクトリーにおいて、全てが一つになったものを作り出す、そんな人間ドラマに2020年は期待しています。