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F1のギアボックスは8速シームレスシフト、ギア比はファイナルに至るまで年間固定であり、シーズン中に変更する事はできない。エンジン出力の特性やMGU-Kの補助に対して最適のギア比を選択する必要があり、ギアボックスは土日に限り6戦続けて使用できなければ、5グリッド降格ペナルティとなる。

ギアボックスはパワーユニットとセットで供給するのがカスタマーの定番となっており、レーシングポイントは2019年メルセデス製、ハースとアルファロメオは2020年フェラーリ製となる。アルファタウリは2019年レッドブル製。ルノー、マクラーレン、ウィリアムズは自社製になっている。

ケーシングを含めギアボックスは、マシン後方の骨格でありホイールベースに影響を与え、その形状がリア周りの空力性能に大きく影響を与える。パワーユニットを製造するワークスが有利な訳は、このような部分でも表れコンマ何秒の差になっていく。

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各ギアの最高回転数と速度比較

2020-GBR-Q ギア 1(S) 1 2 3 4 5 6 7 8 8(F)
メルセデス rpm 9141 12031 11513 11572 11570 11925 12080 11855 11500 11904
km/h 0 106 129 160 185 222 255 291 321 332
レッドブル rpm 11709 12170 11444 11944 11730 11460 11462 11541 11520 11829
km/h 0 122 125 160 191 219 252 285 319 328
フェラーリ rpm 10092 11487 11143 11103 12111 11772 11781 11645 11509 11669
km/h 0 96 119 154 186 216 252 288 320 325
ルノー rpm 11211 10793 11541 11787 11754 11672 11614 11367 11510 11654
km/h 0 94 130 160 196 226 262 295 330 335
マクラーレン rpm 10521 11231 11151 11417 11456 11434 11401 11487 11452 11452
km/h 0 118 124 159 191 224 257 293 331 331
アルファタウリ rpm 11146 11636 11611 11625 11580 11684 11468 11357 11500 11854
km/h 0 92 129 160 182 224 253 286 319 330

シルバーストンでの予選時、ターン4(3速)~ターン6、ターン13~15(8速最高速)のテレメトリーデータを元にしています。1,2速はレーススタート時のためホイールスピンなどのため正確なデータと言えません。

1速Sは、スタート時のクラッチミート寸前の回転数です。

回転数11,500rpm前後の速度

2020-GBR-11500 ギア 1(S) 1 2 3 4 5 6 7 8 8(F)
メルセデス rpm 9141 12031 11513 11509 11508 11594 11518 11500 11500 11904
km/h 0 106 129 158 180 215 245 283 321 332
レッドブル rpm 11709 12170 11444 11488 11548 11460 11462 11541 11520 11829
km/h 0 122 125 148 185 219 252 285 319 328
フェラーリ rpm 10092 11487 11143 11103 11462 11537 11511 11510 11509 11669
km/h 0 96 119 154 176 213 247 284 320 325
ルノー rpm 11211 10793 11541 11618 11419 11518 11509 11493 11510 11654
km/h 0 94 130 155 191 223 262 299 330 335
マクラーレン rpm 10521 11231 11151 11417 11456 11434 11401 11487 11452 11452
km/h 0 118 124 159 191 224 257 293 331 331
アルファタウリ rpm 11146 11636 11611 11625 11557 11584 11468 11357 11500 11854
km/h 0 92 129 160 178 220 253 286 319 330

比較用2019年11,500rpm前後の速度

2019-ITA-11500 ギア 1(S) 1 2 3 4 5 6 7 8 8(F)
メルセデス rpm 9605 12049 12000 11562 11353 11522 11516 11548 11508 12538
km/h 0 102 129 148 180 206 242 282 317 348
レッドブル rpm 11739 11309 11732 11614 11458 11525 11502 11546 11506 12895
km/h 0 101 109 143 174 216 249 279 319 357
フェラーリ rpm 8955 12019 11281 11525 11504 11512 11506 11511 11516 13108
km/h 0 100 128 149 175 204 246 280 316 365
ルノー rpm 11195 11090 11565 11532 11496 11527 11445 11522 11502 12233
km/h 0 91 119 157 186 219 260 299 329 350
マクラーレン rpm 10455 10737 10934 11399 11582 11503 11475 11506 11507 12532
km/h 0 92 111 147 181 212 244 281 320 358
トロロッソ rpm 11087 12026 11434 11397 11571 11458 11539 11502 11523 12810
km/h 0 84 110 147 169 218 250 284 316 356

ギア比分析

メルセデスは昨年に比べ3,4,5速が高くなっている、このギアは特にコーナー立ち上がりに多用されるもので、高くなると言うことは低い回転域でトルクが向上していると考えられる。

今年特に際立った強さを見せているコーナー立ち上がりの鋭さはギアにも表れている。

 

レッドブルは昨年1~4速までが低い設定だったが高くなっている。ホンダPUの進化に合わせ、ギアに頼らずに加速性能を補えるようになったためと思われる。

フェラーリは5,8速が低くなっている、パワーダウン対策のギアセッティングだろう。

 

ルノーは昨年同様全体的に高め、マクラーレンもルノーPUの特性に合わせるように高め設定に今年はなっています。

アルファタウリがレッドブルと違う点は、4速が若干低い設定だというところ、ホンダPU同スペックのため大きな違いは余りない。

 

メルセデスが昨年に比べてかなりギア比を変えてきている、4速ぐらいまではエンジンを回して加速している印象だったが、今年はギアに頼らずにパワーで加速している。

速度が200km/h以上になる5速からは、他PUよりもギア比が低く高回転域まで回している。

ドラッグが大きく上昇する速度域のエンジン高回転化は、現行PUにおける燃料流量制限100kg/h(10,500rpm~:回転数が上昇しても燃料は増やせない)において違った何かを発見したのかもしれない。

MGU-Kの強さが今年アップしたと噂されており、フルパワー120kwを持続できる、もしくはKの電気抵抗低下やフリクションロス低下など、何かがあるのだろう。

 

※追記:高速度域でのエンジン高回転化について

排気速度の上昇により排気タービンの回転数アップ、MGU-Hのエネルギー回生の増加、MGU-Kへのエネルギー供給増加に繋がるかもしれない。

なぜ高速度域でアップさせるのか?それは冷却用の空気流速が上昇するため、冷却効率が上昇するためと考える事もできる。電気エネルギーの効率化は常に熱との闘いでもある。