https://www.pmw-magazine.com/

2022年の空力において最大の関心事であるトンネルフロアは、謎のベールに包まれたものでした。

2戦が終わり、クラッシュやトラブルによる緊急ピット作業にて、フロア底面のデザインが見えるようになってきました。

 

雁字搦めのレギュレーションとはなんだったのか?

フロアフェンスのデザインは実に多彩です。

確認すると共にその効果について考察します。

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フロアフェンスの比較

現状でフロア底面のデザインがわかるのは4チームです。

それぞれデザインを確認していきましょう。

ウィリアムズFW44

@Albert Fabrega

フェンスの始まる間隔は広く狭まって行く、曲率が急でサイド方向へ曲げるデザイン。

 

アルファタウリAT03

https://www.auto-motor-und-sport.de/formel-1/

フェンスの間隔がウィリアムズより狭く見えます。

そして、鋭くサイドへ曲がっていきます。

 

ハースVF-22

https://www.racefans.net/

ハースのは間隔が広いまま、サイドへ曲がって行きます。

 

このフェンスがどのような機能を持っているのかCFDを確認します。

フロアフェンスのCFD

フェンスはサイドに空気の流れ吹き出すだけでなく、路面との間に負圧を発生させます。

 

上半分はトンネルへの間隔が広く、フェンスの間隔が狭くてなだらかな曲率の場合。

下半分はトンネルへの間隔が狭く、フェンスの間隔が広く曲率が急な場合です。

https://www.thomaswarren-portfolio.com/

トンネルへ繋がる部分では無いフェンスとフェンスの間の空気は、フェンスの下側から路面へこぼれるように乗り越えて行きます。

路面とフェンスの端の間は狭く、流速が上がり負圧となる。

 

https://www.f1technical.net/

 

中団で活躍中のハースのフェンスは間隔が広く、強い負圧の発生ポイントが分散されると考える事が出来ます。

路面との距離を一定に保つのが難しくなったサスペンションと相まって、強い負圧のポイントを分散させる事で、ダウンフォースの安定性があると考えられるでしょう。

 

また、曲率が急なものは正圧が増加、ドラッグが増える事も考慮しなければなりません。

異質なフロアフェンスを持つレッドブルRB18

レッドブルのフロアフェンスは、今までの3台とは違い、曲率がなだらかです。(ほぼ直線にしか見えない)

 

 

 

側面から2枚目のフェンス(青矢印)は、途中でカットさせて強力なボルテックスジェネレーターになっています。

トンネルに一番近いフェンスは異様に長く、途中で折曲がり路面に対して平面状(緑矢印)になっている所があります。

このフェンスを乗り越えた空気は、路面とこのミニフロアとも思える平面部分で負圧を多く作り出すでしょう。

 

このフェンスの出口はフロアサイドのかなり後ろで、トンネルに繋がっているのに空気が抜ける通路(赤矢印)が見えます。

https://www.autosport.com/

フロアサイドにあるS字ボルテックスジェネレーターに吹付けるように空気が出てきます。

 

このS字の後ろの曲面は、ターン中にアウト側が路面に張り付きダウンフォースを発生させます。

その後ろに発生するボルテックスはフロアをシールすると共に、リアタイヤ下側の正圧部分を吹き飛ばしドラッグを低減します。

まとめ

いや、もう、わけがわからないレッドブルのフロアフェンスです。

最初に確認してきた3台とは、全く違う思想であり、異様で異質で変態的です。

 

さすが、ニューウェイ空力大先生と言ったところですね。

 

今年から導入されたフロアフェンス。

フロントタイヤで発生する乱流をトンネルフロアから遠ざけるバージーボード的な役割だけかと思えば全く違い、それ自体で負圧を作りダウンフォースを発生させるものでもあります。

 

フェンス自体の長さ、形状にかなり自由度があり、最適解と思われるデザインへは簡単にたどり着けません。

各チームの思想が色濃く出る部分です。

 

今年のレギュレーションは自由度が少ないよ~なんて言葉は全くの嘘です。

予算制限、空力実験時間ハンデキャップなど、昨年のチャンピオンシップ上位チームはかなり大変です。

 

足並みが揃うのは、おそらく3~4年かかるかもしれません。