F1マシンの空力において「アウトウォッシュ・Y250ボルテックス」はなくてはならない存在となっている。
フロントウィングはただ単純にダウンフォースを発生するものではなくなり、各部に流れる空気を適正に保つために、渦流(ボルテックス)を多く発生する。
フォーミュラマシンにとって一番邪魔な存在であるフロントタイヤは、ドラッグを大きく発生し空気の流れを乱す。フロントウィングデザインはフロントタイヤ周りに発生する乱流をいかにしてマシンから遠ざけるかがキーポイントとなっている。
アウトウォッシュやY250ボルテックスについては今まで何度か触れてきましたが、今回はそのまとめ的な記事になります。
F1iに非常にわかりやすい画像があったのでそれらを引用しつつ説明していきます。
フロントタイヤの乱流
フロントタイヤの特に前面下側は、路面とタイヤに挟み込まれるように空気が行き場を失い高圧ゾーンとなります。そしてその空気は回転の影響も受けて乱流となってしまいます。
この高圧の空気①②は低圧ゾーンに流れ込みます。特にフロア下に向かって流れてしまうので、これらを防ぐためにアウトウォッシュとY250ボルテックスにより遠ざけます。
アウトウォッシュとY250ボルテックス
フロントウィングのノーズ近くのフラップ切り欠きで渦をつくる①がY250ボルテックス、翼端板側で渦をつくる②がアウトウォッシュとなります。
この切り欠きの位置が、車体中心線Yから250mmの位置の為、Y250ボルテックスと命名された。
2018年までのフロントウィングはカスケード呼ばれるパーツや翼端板側後方を空気が通り抜ける構造になっており、アウトウォッシュ発生量はかなり大きかったでしょう。
アウトウォッシュ②とY250ボルテックス①を使いフロントタイヤで発生する乱流を車体から遠ざける。
CFDを使った実験でもこの図解のような流れが形成されています。
Y250ボルテックス動画
2013年雨の走行で見えたRB9のY250ボルテックスです。白い龍のような気流がはっきり見えます。
下のGIFはRB8のY250ボルテックスです。
Y250ボルテックスは、飛行機の翼の端で発生する回転方向と同じで、リフト方向に作用する力を生み出します。リアタイヤ脇を通過する時には、かなり上昇しているのがわかります。逆にリアウィングで発生するボルテックスは下降しているのわかります。
2019年現在ではこの通り道にはバージボードが存在します。バージボードで作られた細かな渦がこれに融合して、更に強力な渦を作っている事は容易に想像できるでしょう。
まとめ
2019年のフロントウィング最適解は一体なんなのだろうか?
- アウトウォッシュを多く発生させるであろうフェラーリ型なのか?
- ウィング面積が広くフロントダウンフォース発生量が多いレッドブル型なのか?
- ウィング面積が広く、そしてアウトウォッシュも適度に発生させるであろうメルセデス型なのか?
2019年5月14日時点で、5戦連続1,2フィニッシュであるメルセデスが、答えを導き出しているのは言うまでもない事なのかもしれません。
フロントウィングの大きなデザイン変更はマシン全体の空力学構築に関わる大仕事、今年中に追いつけるチームは居ないのかもしれない。