メルセデスW13は、アゼルバイジャンGPが行われたバクー市街地で異常なポーパシングに見舞われた。
2.1kmもあるスロットル全開区間のほとんどをバウンシングしながら走行していた。
ラッセルはその内重大の事故が起こると警告、ハミルトンは腰を負傷してレース後コクピットから直ぐに降りられないほどだった。
メルセデスチームはレギュレーションを改定しようと目論んでいるが、他チームは拒否している。
いつまでたっても原因を解明する必要があると白を切るメルセデスさんに、他チームの対策を提示しようと思います。
ポーパシングの原因とは?
ポーパシングの原因は、フロアとディフューザーの境目(キックポイント)でストール(流れが剥離)する事で生じる。
ディフューザーの斜面に沿って流れが上っていかなくなる事で、キックポイントの流れが停滞し負圧が失われる。
車高が低くなりすぎたり、フロアが変形するなどしてトンネル断面積が狭まると起こる。
- キックポイントの流れが停滞する
- 負圧を失いダウンフォース荷重が減る
- ヒーブサスペンション(ピッチングサスペンション)が伸びて車高が上がる
- キックポイントの流れが速くなる
- 負圧が復活しダウンフォース荷重が増える
- ヒーブサスペンションが縮み車高が下がる
これを高速で繰り返す事でポーパシングとなります。
解決策はキックポイントの流れを停滞させない事のみです。
メルセデスW13の車高が直ぐに下がる理由
メルセデスはリアサスペンションに付いているヒーブサスペンションが簡単に縮んでしまう。
フロア・リアウィング・リア周りで発生するダウンフォースが多いと言う事になります。
- フロントフロアフェンスでトンネルへ入る空気量が多い
- ディフューザーが大きく吸い出し効果が高い
- 絞りこまれたリアエンドによってディフューザー上面へ空気が大量に流れる
- ディフューザー上面とビームウィングの効果が高い(斜面に沿って上面に正圧、下面に負圧)
- ディフューザーの吸い出し効果が更に高まる(3,4によって)
メルセデスのディフューザーですが、左右の角は開幕時よりも低くなっています。
後方は最後にラッパ状になるのですが、規定のいっぱいいっぱいの大きさとなっています。
これによって、メルセデスのディフューザーは上面も下面も空気を流す力が強く、ダウンフォースが非常に高くなっています。
ダウンフォースが速度の2乗で増加する事を加味すれば、その増加率が非常に高くなる事は想像できるでしょう。
これがたったの250km/hで始まってしまうポーパシングの原因です。
ダウンフォースが高いからこそ、失った時と復活した時の差が大きく、バウンシングが大きくなってしまいます。
バウンシングが収まりにくい原因の一つ
メルセデスには規定の解釈を突き詰めて、サイドインパクトストラクチャーを利用したミラーステーウィングがあります。
このウィングは主にダウンウォッシュと言う下がる流れを作りだしますが、極端に言えば揚力を発生する翼です。
とにかく振動する今年のマシンは、空気を狙った通りに流せない。
中空にあり上下動する翼の流れは乱れます。
綺麗に空気を流す事が重要なF1において、制御できない流れは邪魔者です。
特にこれはリア周りの流れに影響を与えるので、制御できないリアダウンフォース荷重が増加する事になってしまいます。
比較用レッドブルRB18のディフューザー
ポーパシングの少ないレッドブルRB18を見てみましょう。
フロアから繋がるディフューザーの角度が浅い事がわかります。(最後のラッパ状の部分はなだらかな曲面)
中央から左右の角への形状が全体的に、かなり斜めに下がっています。
レッドブルはアゼルバイジャンでビームウィングの上部を外し、下部の角度を浅くしています。
ダウンフォースが減る、ドラッグも減る、ディフューザーの吸い出し効果も減ります。
上面で作るダウンフォースを減らし、高速域ではフロアを出来る限り路面に近づけてドラッグの少ないダウンフォースを得ます。
まとめ
本当に全てが誤った方向へ開発してしまったメルセデスW13、今シーズンの優勝は絶望的です。
しかし中団チームも2強に比べて良い所が無く、メルセデスが3番目のチームである事は疑いが無い事実でしょう。
圧倒的なダウンフォースがあるので、バルセロナのようなスムーズな路面と短いストレートがあれば2強に迫る事が出来ます。
ポーパシングを無くすには、一つの対策としてトンネルフロアから一部の空気を抜かなればなりません。
このアルファタウリのようにすれば、トンネルからキックポイントへ流れる空気を減らせるので、感度を下げる事が出来るでしょう。
後は車高を上げてフロアをストールさせなければいいし、キックポイントを広げればいいし、ビームウィングを減らして角度を浅くするなどの対策があります。
他のチームは冬のテストで起こったポーパシング問題に、突貫工事で取り組み今のマシンになっています。(ほとんどのチームはパフォーマンスを犠牲にしている。)
それらの数々の対策を見ていれば、しなければならない事は少し空力の知識があればわかります。
今のままのマシンなら、車高を上げてダウンフォースを減らせば何とかなるでしょう。
出来る対策をしないでポーパシング(バウンシング)させて、ドライバーが苦痛にあえぐ姿をメディアに露出させ、レギュレーションを改定しようとするなんてまったくもってお門違いです。
2007、2008年ワークスなのに下位を走り続けたホンダのように、潔く失敗を認めて黙って走り続ければいい。
それが8年連続コンストラクターズチャンピオンチームに求められる事でしょう。
jinさんメルセデス記事は控えていたそうですが、
今回のロビー活動で車体レビュー解禁ですね笑
メルセデスほどのチームがポーパシングの原因がわかっていないはずないのに、今回の政治ゲームの流れを見るとトト筆頭に昨シーズンからなんらスタンスが変わっていないんだなと、少し寂しく感じてしまいました。
打倒レッドブルで謙虚に技術力で開発していって3強筆頭に競い合うスポーツであってほしいと思いますね。
見出しにメルセデスが無いだけで、すでに指摘してきた内容のまとめみたいなものです。
フェラーリとレッドブルの比較にメルセデスは数多く登場しています。
ツイッターのご指摘反応が凄かったので記事化したにすぎません。
2020年までの紳士面に騙され続けた自分が情けないですよ。
いつも楽しく拝見してます。
王者が激しい肉体疲労で勇退されないか心配です。笑
トムスだった東條氏がベテラン関谷さんは気持ちよく疲れさせないセットアップが良い結果に繋がると説明されてた事を思い出した、F1ではありませんが。
私は今年のレギュレーションチェンジがなぜ行われたかぼんやりとしか理解していないのですが(追い抜きがフラットボトムカーより容易になるから?)、古くからF1を見ている自分にはなぜ昔と同じことを繰り返しているのかと思ってしまいます。当時もサスが固くなりすぎて多くのドライバーが文句を言って、結局アクティブサスを使用することで解決しました。今回はポーパシングを回避できる新しいテクノロジーの見通しがついたからウイングカーに戻ったのかと思っていました。
ハミルトンとラッセルはチームの発言を信じてるんですかね?
実は信じて無いからこそ、ラッセルは何とかしてくれ!と悲鳴を上げているようにすら見える。
ラッセルが求めているのは、レギュレーションの変更ではなく、チームに対する不満を直接言えないからこそ、言ってるように感じます。
ところでルクレール車はポーパシングが少なく、サインツ車は酷い。
これはルクレールは車高上げてダウンフォースを削ってもマシンを操れているのに対して、サインツはルクレールほど上手くやれないから車高を下げてダウンフォースを稼いでいるからだと思ってますが、あってますか?
多分そんな感じでしょうね。
サインツの方がリアダウンフォースが微妙に多い、その分車高が下がる。
アゼルバイジャンではトラップで2km/h違う、300以上で2km/h変わるダウンフォースって結構大きいですよ。
この記事、できれば英語化して英語圏で普及させたいですねw
しかしハミルトンがマシンから出られない様子は衝撃的で、流石に今の状況を続けることは出来ないと思います。メルセデスのブランドイメージにも傷が付くので。
個人的にはメルセデスはもうバルセロナの結果でゼロポッドコンセプトには内部的には見切りを付けたと思っていて、あとは来年に向けた開発と、将来のレギュレーションを有利にするための政治ゲームをするのが今シーズンなのだろうと思います。
今までもそんな感じだった気がしますけどね
いつまで経ってもレッドブルに勝てないタイヤ交換も危険だ危険だ騒ぎ立ててシステムを変えさせて
タイヤに対しても自分たちが合わせるのではなくタイヤ側に合わせさせてきたのですから
今回も少し前からラッセルが愚痴愚痴と言い始めてああまた始まったなと思ったものです
初めてコメントさせて頂きます。
私のように機械工学に疎い者にも何となくイメージできる解りやすい技術解説、いつもありがとうございます。
Jinさんのサイトに出会えて本当に良かった!
メルセデスさんチームはあれですね…
分かりきったポーパシング対策を施さずにパフォーマンス重視のまま政治ゲームに持ち込むのは結局、親会社の役員さんや株主さん達が怖いんでしょうね(笑
ハミルトンさんはメルセデスAMGチームの社員ではなく契約選手なので社員保険の適用はないでしょうが、あれで彼が慢性腰痛持ちになったら立派な「労災レベル」です(笑
くだらないコメント失礼致しました!
今後とも当サイトのご発展お祈り申しあげます!!
原文やそのままの発言を英語で聞いていると、ラッセルとハミルトンはどちらも極めて○○○的で優等生発言をしようとしているけど同時に損得を計算して言葉を選んでいることが伝わってきますね。ラッセルに関してはノリスがネタにしているくらい。
ポーパシングの問題は別としてメルセデスの「ゼロポッド」ですが、
昨年までのステップボトムカーW12に使われていれば違う効果結果が出ていたのかなぁと思いました。
昔1983年ブラバムBT52と言うフラットボトムカーが有ったのですがドライバーの左右両脇のサイドポッドを無くした(全く無くなったのでは無くリヤ側に下げた?)
通称「アローシェイプ」と呼ばれた三角の矢をイメージしたフォルムのマシンでした(コークボトル形状とは全く真逆のマシン?)
メルセデスのジェームスボウルズによると、スペインGPでポーパシングは解決できたが、それで車高を低くしたらバウンシングが激しくなってしまった、これはポーパシングによって覆い隠されていた別の問題だ。と語っていましたね。
確かにポーパシングの振幅はメルセデスはトップクラスに小さく、アルピーヌはとんでもなく大きいですが、アロンソはドライバーの健康問題に手を加える必要は無いと唯一言えるほど問題にしていないようです。
つまり他のチームがポーパシングと折り合いをつけた車高を選んでいるのに対し、メルセデスはとにかく究極に低い車高を目指しているようです。
理想主義なのか単純思考なのか分かりませんが、エンジニアとトトにかなりの責任がある気がします。
なぜならドライバー達は快適と速さを天秤に架けられたら速さを選ぶに決まってるから。不快を通り越して危険になったらトトが止めるべきでしょう。終わったあとにハミルトンに謝るとかかなり卑怯な物言いだと思います。
ポーパシングは空力的に起きるもの、バウンシングは路面の凹凸などが原因で起きるバネの共振運動、ボトミングはサスがいっぱいまで縮む事で底打ちをする事。
だいたいこのような認識であっていますか?
似たような現象だけど違いがいまいち把握出来ていません
またメルセデスはポーパシングは解決出来てバウンシングが酷いと言っています
イナーターを導入した場合今メルセデスが設定してる車高でバウンシングは起きなくなりますか?
油圧ヒーブを導入したらボトミングが起きなくなりますか?
よろしくお願いします
詳しい分類は難しいですね。
ポーパシングもバウンシングもヒーブサスが起因となります。
ひっくるめて考えていいのでは?その違いが分かっても対処方法は変わりませんよ。
車高を上げるか、ダウンフォースを減らすかです。
同じギアボックス、同じサスペンションを使うアストンやウィリアムズが出来ているのだから、出来ないなんて事はないです。
アゼルバイジャンの車高は他チームより低速域で低い設定だっただけなので、今の車高でイナーターや油圧ヒーブは使いません。昨年と同じレーキを付ける感じに戻るだけだと思います。
メルセデスF1のチーフストラテジスト ジェームス・ボウルズがバクーのあれは、ポーパシングでは無くバウンシングだと言ってますね。
ポーパシングが改善されたと考え、車高を下げたところ、路面の凹凸にフロアがぶつかりバウンドしたのだと。
で、あんな攻めたセッティングはもうしないとも言っています。
これって、レギュレーションを変える必要は無いとメルセデスの人間が言っているのと同じ事のような。
車高が低くすぎた事を認めたと。
上げたらならないと。
あまりにも世論反発にあって、慌てて出した発信かな?
ジャーナリストの皆さんもチームの責任だと発信しまくってますからね。
レッドブルとフェラーリの2強からは離れていますが、
いちよ3番手の立ち位置にいるメルセデスが優勝するには(優勝するとすれば)通常コンディションでは無理?
雨のレースで、さらにレッドブルとフェラーリが4台ともに全滅でも無い限り自力では不可能?
もしラッセルとハミルトンがワンツー体制を確立でもしたら、トトがどちらに優勝させるか(チームオーダー発令)見てみたいものです。
マックス、ルクレール、ペレス以外に優勝するドライバーが出るか?
サインツ、ラッセル、ノリスが初優勝ドライバー候補と見ています。
こんにちは。アゼルバイジャンでの、ゴール後のハミルトンに往年のソウル歌手ジェームズ・ブラウンを思い出してしまいました。彼はライブで「ステージ上で倒れ、マネージャーに付き添われてステージを去ろうとするも、それを振り切って歌い続ける」というパフォーマンスで喝采を浴びていましだ。特に他意はありません。
さて、今後メルセデスの政治力によって最低地上高が規定されるとすると、
何ミリに規制されるのか
いつから適用されるのか
メルセデスは一列目に復活するのか
が気になります。
>車高を上げるか、ダウンフォースを減らすかです。
>同じギアボックス、同じサスペンションを使うアストンやウィリアムズが出来ているのだ>から、出来ないなんて事はないです。
⇒とても簡単な対応方法ですが、この対処によるビハインドはどの程度でしょうね?
神様級の運転手でも、マクラーレン/アルファロメオと、とんとんなレベルになって
しまうかもですね。
アルファロメオC42:それがポーポイズ現象がすぐに解決された理由です。
https://www.formu1a.uno/alfa-romeo-c42-ecco-perche-il-porpoising-e-stato-risolto-velocemente/