F1マシンにおいて、いやレースカーにおいて、いやいや道路を走るもの全てにおいて風洞テストは欠かせないものになっています。

現在のF1においてはコスト削減とチーム間の差をなくすために、厳しい風洞実験制限が設けられています。これについては度々私も触れてきた話題ですが、F1Technical.netにかなーり気になる事実があったので参考にして説明していきたいと思います。

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空力テストに関わる制約事項(ATR)

風洞試験については、2017F1スポーティングレギュレーションの56ページ~付則8に記されている。部分的に抜粋していきます。

  • 空力テストに関わる制約事項:ATR(Aerodynamic Testing Restrictions)
  • 制限を受ける風洞実験:RWTT(Restricted Wind Tunnel Testing)
  • 制約を受けるCFDシミュレーション:RCFD(Restricted Computational Fluid Dynamics)

制限を受ける風洞実験(RWTT)

  • RWTTはフルサイズの60%より大きいスケールモデルを使用して実施されてはならない。
  • RWTTは50m/sを超える大気速度で風洞にて実施されてはならない。
  • RWTTは、競技参加者がFIAに指定した風洞施設のみを使用して実施される。各競技参加者は12ヶ月に使用する1つの風洞のみを指定することができ、それをFIAに書面にて宣言する。
  • RWTTで使用される流体は、大気圧に保たれた空気でなければならない。
  • RWTTの間、風洞風速が5m / sを上回るたびに1回の実行が開始され、風洞風速が5m / sを下回ったときにはじめて終了する。
  • RWTTの間、1回の走行につき1つのモデルのみが使用され、24時間ごとに競技者ごとに1つのモデルの変更のみが許可されます。

制約を受けるCFD(RCFD)シミュレーション

  • RCFDシミュレーションは、競技参加者がFIAに指定したハードウエアを使用してのみ実施できる。
  • 各競技参加者はRCFDシミュレーションのために採用されているコンピューター設備について、FIAに書面にて宣言しなければならない。

RWTTとRCFDのリミットライン

1週間につき最大60時間の風洞占有率に制限され、最大65回の個別テストを実行できます。25時間のウィンド実時間は、風速が15m/sを超える時間の長さで定義されます。

リミットラインとは、次のように定義される:
WT<=WTリミット(1-CFD/CFDリミット)

WT=ウインド・オン・タイム
WTリミット=25時間
CFD=CFDテラフロップ使用
CFDリミット=25テラフロップ

簡単に言うと、1週間で25時間の風洞実験か25テラフロップのCFDシュミュレーションしかできないとの事です。

また、宣言された風洞には、常にオンラインなカメラによってFIAに監視されます。

風洞モデル

過去20〜30年にわたる風洞試験の違いの大部分は、風洞モデルを作成するための製造方法です。90年代には、車は手作りで、主に木材をいくつかの金属(アルミニウム)部品とともに使用していました。

2000年代を通しては、実車とおなじくカーボン製の物が多く使用されている。これは作成に多くの時間を費やす事になる。

現代の風洞モデルは、リア・ウィング、フロント・ウィング・メインプレーン、サスペンション・メンバなどの構造的なアルミ・コンポーネントを使用していますが、フルサイズ・カーの製造に使用されたCADモデルから直接3Dプリントされています。

https://www.f1technical.net/

より大きなスケールモデルは精度を向上させる上で望ましいものです。これはスケールテストの表面フローフィーチャーがフルサイズのマシンと一致するときに達成される、動的類似性と呼ばれるものです。

動的類似性は、レイノルズ数(Re)、速度(U)および長さ(L)対粘度(v)の比、

Re=UL/v

簡単に言えば、モデルのスケールが50%の場合、空気速度はレイノルズ数と一致するように2倍大きくなければならず(同じ大気条件を仮定して)、同じ空力プロファイルを生成します。

RWTTがチームを50m / sで60%スケールのモデルに制限するので、チームは108km / hで走行するフルサイズのマシンとの動的類似性しか達成できません。

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風洞ではたったの108km/hしか再現できない

私が驚いた事実は、この108km/hの動的類似性しか達成されないという事実です。

風速50m/sは180km/hであり、スケールモデル60%なのだから、割合から300km/hまで計測できるのだろうと思っていました。

そこに関わる大気の量が関係するんですね、流体工学などの化学式は理解不能な私です・・。

 

F1マシンの平均速度は約200km/hな訳ですから、それに近い風速50m/s(180km/h)は理にかなった数値だと思っていました。それが一般車でもクルージングできる108km/hの高速道路程度の速度類似性だとはね。

 

こりゃ大変だ!

ニューウェイ先生の様に空気の流れや力を、頭の中で想像できる能力が必要な訳が、より一層理解できました。また、高度な走行シミュレータソフト技術なども重要ですね。

 

ルノーに行った元FIAの技術監視員ブゴウスキー氏は、トップチームのリミットラインの使い方を熟知している。これが一番の懸念事項だとホーナーやウォルフも言っていましたし、トップチームがトップチームである所以は、空力実験制限も大きく関係しますねぇ。