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F1の収益は開催権料と放映権料と広告やスポンサーなどから成り立っています。

グランプリを開催出来なければ収入が得られない構造になっているのは、誰の目から見ても明らかな事でしょう。2020年においてこのまま開催できないとなれば、果たしてどうなってしまうのか?

フォーブスの記事などから、色々な情報をまとめました。F1の財政状況を把握してみましょう。

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F1の収益と利益

2017年よりリバティ・メディアが運営する事になったF1ですが、経営的には累積赤字となっています。多額の収益があるF1においては問題になるような赤字では無く、翌年のキャッシュフローで償還されているのが現状です。

開催数 収益 分配金 経費 利益
2017 20 1,783 919 901 -37
2018 21 1,827 913 982 -68
2019 21 2,022 1,012 993 17

※単位:100万ドル

2019年度の収益内訳は、開催権料6億210万ドル、放映権料7億6280万ドル、スポンサー(トラックサイド広告など)3億110万ドル、その他(ホスピタリティなど)3億5600万ドルとなっています。

 

2018年から2019年の収益増加は、主にskysportsとの契約による、イギリスの放映権料の上昇に伴うものです。また、F1開催に対してサーキットや開催国が払う料金は、平均して2,867万ドルでした。

開催権料とチケット総売上

2019年にF1が得られた開催権料は6億210万ドル、チケット総売上は6億7,300万ドルとなっています。

開催国やサーキットは開催権料に対し、チケット売上で一応カバー出来ている計算になります。無観客となればチケット売上は0となるので、場合によって(サーキット単体で負担しているなど)開催権料の大きな引き下げが必要になります。

 

バーレーンは2020年の開催権料を既に支払っているとの事、2011年に開催されなかった時でさえ5,800万ドル支払ったままになっています。アブダビも裕福な国であり、これに同調する可能性が高いそうです。

放映権料とスポンサー

通常、F1の放送契約には、イベント数が15未満の場合、F1に支払う料金を削減する規定が含まれています。F1が最低15戦は開催すると発言しているのはこのためです。

仮に15戦未満となれば、放映権料は契約されている金額が15等分され、1戦ごとに発生する可能性が高いです。

 

イベントが開催されない場合、キャンセルされる場合、または国際テレビの取材を受けられない場合、関連するトラックサイド広告およびスポンサー契約に基づく料金は削減される可能性が高い。

分配金の支払い

分配金は、前年の結果から決まっている配分でチームに支払らわれます。4月から9回に分けて支払われるのですが、これはあくまで今年の収益基盤での事になります。4月からとなっているのは、3月に開催された収益より支払いがスタートするためでしょう。

(フォースインディアは、4月の入金を待って新パーツを作成し、完全な新車へとアップデートする試みが、過去に何度も見られています。)

 

イギリス系のチームの従業員は平均年棒が10万ドルとも言われ、イギリス政府が6月まで補償する月間上限2,900ドル(イギリス平均給与)を大きく上回り、残りはチームが負担します。最低賃金のチームでも給与は政府補償金額の2倍以上となります。

 

大きな後ろ盾の無いプライベートチームでも年間約5,000万ドルを受け取っている分配金、チームが4月からあてにしていた分配金がどうなっているのかわかりませんが、約500人のスタッフを抱えるプライベートチームの財政は破綻する可能性が、高まっていきます。

F1の現金と借入金(ローン)

フォーブスによれば、2019年末のF1の現金は4億200万ドル、リバティがF1を購入する際に発生した41億ドルのローンは、29億ドルになっており、F1の純負債は25億ドルとなります。

F1のローン契約には、純負債は営業利益の8.25倍を超えてはならないと規定されている、25億/8.25=3億300万ドルとなり、今のところこのレベルを下回るリスクはありません。

 

ローンは毎年4.3%の利子が発生し、F1は2018年に総額1億4,200万ドルを支払いました。これは1ヶ月あたり1,180万ドルになるため、F1の4億200万ドルの現金でほぼ3年間の分割払いをカバーできます。

今後の動きなど

現金4億ドルを使い分配金の前倒し支払いによって、逼迫しているチーム財政を下支えるする。そしてF1は現金確保のためローンを増額する計画があるようです。このまま何もしなければ、F1はチームと共倒れするリスクが高まっているので仕方がない措置となる。

また、ローン契約の不履行のために、デフォルトになる事も免除されるとムーディーズにより言われています。

 

これらを実現するために、F1は来季のコストカットをチームに言明し、1億5,000万ドルの財政予算承認を得ています。今年は大赤字となっても来季22戦開催出来れば、分配金などの基礎収益から償還してF1全体を立て直す計画なのでしょう。

開催さえできれば多額の現金収入があるF1は、今年完全に開催出来なかったとしても、流動性の余裕の評価は複雑でありムーディーズによればF1が失われるリスクは低いとの事です。またリバティメディアコーポレーションからのサポートも利用できる可能性を示しています。

 

根本的なコスト削減、予算の上限などの絶好の機会であり、人員削減は否めない状況。

例えパンデミックが収まっても開催国やサーキット、自動車メーカー、スポンサーの関り方が変貌し、収益の悪化は予想できます。それはチームの財政にも直結している。

勝つ為に多額予算を注ぎ込む時代は、終焉を迎えたのだと私は思います。