F1のES(エナジーストア)と呼ばれる回生エネルギー用のバッテリーが、全固体電池である可能性が非常に高くなった。
ホンダが2021年の第12戦ベルギーGPから投入、フェラーリは第15戦ロシアGPから新型ESを投入している。
フェラーリは、電圧を400Vから800Vまで押し上げたと言われ、F1におけるバッテリー開発と電動モーター開発には、最先端技術が投入されている。(メルセデスやホンダは既に800V)
ホンダの新型バッテリー
F1パワーユニット開発責任者 浅木氏
「新型ESの開発プロジェクトは、エネルギー効率の改善と徹底した軽量化の両立を目標に、数年をかけて進めてきました。」
「Hondaとしては、今年でF1最終年となりますが、そのシーズン後半戦になんとか間に合わせて、低抵抗で高効率な超高出力軽量バッテリーセルを搭載した新型ESを実戦投入できました。」
「悲願である、打倒メルセデス、そしてチャンピオンシップ獲得を実現するためには、さらなるパフォーマンスの改善が必要な状況でしたから、当初の開発計画では2022年シーズンを予定していた新型ESの開発計画を大幅に前倒しして、2021年シーズン中の投入を達成しました。」
「この新バッテリーセル(エネルギー)技術は、F1活動終了後も、レース以外においても『移動』と『暮らし』の新価値創造によるカーボンニュートラル社会の実現という、Hondaの将来技術に大きく貢献していくことになります。」
引用元:https://honda.racing/ja/f1/post/new-energy-store-f1
フッ化物イオン電池
2018年12月、ホンダはカルフォルニア工科大学とNASAと協力して、フッ化物イオン電池の開発に成功したとサイエンス誌に論文を発表していた。
フッ化物イオン電池は、リチウムイオン電池の10倍のエネルギー密度があり、バッテリーパックを大きくすることなく、電気自動車の航続距離を伸ばす事ができる。
この種の電池化学の主成分であるフッ素の原子量が小さいため、フッ化物イオン電池の性能が向上すると述べています。
この材料の潜在的な利点は以前から知られていましたが、大きな欠点がありました。バッテリーが機能するには、摂氏約150度の温度が必要でした。
しかし、ホンダはこれらのバッテリーを室温で動作させる方法を見つけたと主張している。これは、研究者によって開発された新しいフッ化物電解質(バッテリー内で電気を伝導する材料)のおかげです。
カーボンナノチューブ
2009年 Honda Research InstituteUSAのプレスリリース
ホンダは、車両開発の飛躍的進歩につながる可能性のある新技術に取り組んできました。
パデュー大学とルイビル大学の科学者と共同で行った同社の最初の研究では、微細なカーボンナノチューブがより速くより効率的に電気を分配できる可能性があることが示されました。
「これらの小さなカーボンナノチューブが金属伝導性を示す場合、鋼と比較して並外れた強度を持ち、銅よりも高い電気的特性を持ち、ダイヤモンドと同じくらい効率的に熱を伝導し、綿と同じくらい軽い。」
フッ化物イオン電池とカーボンナノチューブは、海外サイトで注目されているホンダの技術です。
全固体電池の量産実用化が始まると言うタイミング、ホンダが将来的に内燃機関を止めると発表した事、これらの時期的な繋がりを考えれば、F1と言う予算豊富な実験場において、全固体電池が投入されている事は事実だろう。
ホンダのアメリカ研究所が、新素材や電気技術に対して大きな役割を担っている。
NASAとも協力している関係からも宇宙事業への進出は、自然な流れなのかもしれません。
フェラーリのERS進化
motorsport.comイタリアでは、フェラーリが電圧を800Vに上げ、全固体電池を投入したと発信している。
現在、私たちが多く使用しているリチウムイオン電池は、電解質が液状であるために、膨張したり熱を多く発する。不良品や取り扱いを誤ると爆発したり発火したりと問題が大きい。
全固体電池は電解質が個体であるが故に、これらの現象が大きく抑えられ、エネルギーの熱損失が非常に小さくなる。
小型に作る事が可能となり、レギュレーションで定めれているES(20~25kgの範囲内)の規定ギリギリ20kgにする事が可能となるようだ。
この重量にはバッテリーセルのみならず、冷却システムも含まれる。(空対水ラジエーターは除く)
肝心の性能はと言うと、ロシアGP決勝レースにおいてルクレールとサインツの同条件のクリアラップ時に、ストレートで約0.1~0.2秒の差が常にあったと海外ジャーナリストが分析している。
ルクレールのマシンは、MGU-Kサポートが長くなりディレートが減少していると分析していた。
ルクレールが新品に対してサインツは3~4戦使ったPUのため、この分析結果の信憑性は若干低くなるが、確実に進歩していることは間違いない。
電圧を高めれば、電流を減らせて抵抗損失が減少するから当然の結果となるだろう。
まとめ
全固体電池の投入は、小型化、低重心化、熱損失の低下、冷却システムの小型化などに繋がって行き、来年以降のマシンではモノコックのスペースに余裕を与え、ボディの空力的損失にも寄与していくことになる。
これはフェラーリのみならず、ホンダのバッテリーを受け継ぐレッドブルにも言える事である。
メルセデスやルノーがどうなっているのか情報は無いが、メルセデスは使っているとは思う。
MGU-K・ES・CEは2022年9月1日が最終ホモロゲーション期限となるので、それまでには何かしらの用意があるだろう。
ホンダの電動化宣言、これは全固体電池や高効率なモーターなどの技術的な目途が立った事によるものだと言えるかもしれない。
自動車の電動化は確実に行われていく、最も重要なバッテリーの高効率化は、どのメーカーも喉から手るほどほしい技術です。
フォーミュラEでは、バッテリー開発が出来ないからなのかメーカーの撤退が後を絶たない。電気技術においてF1の方が先行しては元も子もないだろうに・・。
※ホンダの2021年のバッテリーはリチウムイオン+カーボンナノチューブでした。
いつも楽しく拝見させて頂いております
今更で申し訳ないですが、ESからMGUーKに放出可能な電気量は1周あたり4MJで
ESの容量に制限は無いのですよね
もし放出の制限を無くせば、とんでも無くラップタイムが早くなりそうですね
一度魔改造してやって貰いたいものです
年間2基規定のため、使うセルを限定してバッテリーの最高状態をできるだけ維持しているはず。
全てのセルを使った満タン状態がどの程度あるのか?3~4倍ぐらいはいけそうなきがしますね。
夢の全個体電池がすでに載っている?
いやあ、走る実験室は健在なのですね、ロマンだなあ。
…しかしF1で電池に興奮する日が来るとは考えもしなかったですw
本当に時代は変わるものですね。
ハイブリッドなんて乗らねぇって思ってる私ですが、完全な電気自動車で軽いなら乗ってみたいです。
私たちの手元に来るのは10年後ぐらいですかねぇ。
私もロータス49Bのデザインで500kg以下のev出たらほしいです
バッテリー性能向上は重要なテーマですね。
リチウムイオンバッテリーは、通信機器用にも使われていますが、良く自宅ではコンセントを差して充電させながらモバイル機器も使う(充電しながら放電もさせる)やり方は、バッテリーの寿命を極端に縮めてしまうと言われた事があるのですが(バッテリーを長持ちさせるためには充電が完了してから機器を使用する)
F1のPUでも、1つのバッテリーだけで充電と放電を同時に早いサイクルで行うのでしょうか?
だからMGU-Hで起こした電気を、ES経由せずにMGU-Kに直接送る事もある(必要以上に電気を起こして余ってしまう分をESに一旦貯める)
それによってESが早く劣化して新品に交換する事になってしまうのでしょうか?
また一度使い切ったリチウムイオンの素材は劣化してしまって、再生リサイクルさせても完全には復元出来ない代物でしょうか?
リチウム素材などレアメタル埋蔵量も地球上に豊富にあるわけでは?
F1だけでなく様々な分野にも使われるので大変興味が有ります。
理科でも習ったアルカリ、マンガン、ニッカド、リチウムに続く新しい素材のバッテリーは?
基本的に放充電を同時に行うのを極力避けてると思いますが、ERSマッピングはわかりませんね。
ウィリアムズが何年か前にES1基を終盤戦まで使っていた記憶がある。
私たちが使っているものは冷却装置がある訳じゃないので劣化が激しい、ESにはセルと液冷システムが組み込まれている。
リチウムのリサイクルについてはよくわかりませんが、基本的にやる気は無いでしょう。
乾電池は別として、家電に内臓されてるものを、絶対に捨てないでリサイクルに出してくれなんて自治体から聞いたことも無いです。
新素材に関しては各社が、独自に色々な事をしている最中、情報は統制されています。
論文や特許をくまなく調べればわかるかもしれません。
ウィリアムズのESが長持ちしたのは、1個のESでもセルが凄く細かい(多数化)からですかね?
リサイクルについては、確かに全国自治体が一律では無いですね。
消費者任せのところ有りますから。
私もせいぜい水銀ボタン電池や鉛蓄電池バッテリーの処分の時に、環境配慮を気にするくらいですね。
昨今モバイル機器のほとんどが完全に電池を密閉内蔵していて個人で電池交換出来ない構造になっているので処分する事も無いですね。
全個体電池の課題は寿命の短さだと、つい先日、何かの記事を読んだ記憶が。
F1の場合、シーズン通して同じES使う訳ではありませんし、市販車のように何年も同じバッテリー使うのでは無いので、寿命の短さは課題では無いのでしょうね。
toyotaの記事で私も見ましたね。所詮は1企業だけ、日本だけの話。
全世界であらゆるタイプの開発と改善が進んでいる状況、どこが一番凄いのかはまだまだ先の話です。
全固体電池では?
おっと誤字だったわ(笑)
ありがとうございました。
最近、こんな記事を見たばかりでして
……
https://www.honda.co.jp/news/2021/c210930b.html
なんか全ての線と線が繋がったような気がします(笑)
ガスタービンハイブリッドって凄いな。
考えてみれば開発凍結がある度にF1撤退してる。
F1では縦だった部門を横に繋げたりと、時代に合った求められる体系になっているのかも。
いつの間にか車屋では無くなっていたって感じか。
市販車は完全に一般向けで、レーシングに直結するスポーツカーが無く、採算が合わないカテゴリーはやらない。
近頃「出川哲朗の充電させて下さい」を良く視聴しています。
電動バイクが欲しくなりました。笑
予備バッテリー持って飲食店や旅館で充電出来れば、ガソリンスタンドに立ち寄らずに休憩時間を上手く活用してエネルギー確保出来る。
F1は常に走りっぱなしで休憩出来ないですが?泣
次期PUではMGU-Hは廃止される代わりにMGU-Kが350kwhまで強化されるっていう記事もありますね
そうなるとバッテリーの開発がf1で肝を握る可能性があるのにホンダは応用性がほぼ無いMGU-Hに数百億円を投入し、一般車でもこれからはバッテリー性能で違いが出せる環境のなかでf1から撤退とは…。
これじゃ余りにも参入の時期と撤退の時期が真逆じゃないかよって言いたくもなります(外野ですがねw)
フォーミュラEから自動車メーカーが離脱している中で数社がF1に興味を見出しているのは実はバッテリーが関係していたりしてw
350kwはやりすぎなきがしますね、エンジンは発電機か?(笑)
MGU-Hに関しては、今後市販エンジンに採用される可能性はありますよ。
ターボメーカーが安価に大量生産出来る体制を模索中なはずです。
F1では使い方を無制限にした事によって高騰化しただけです、単純なEブーストとスロットルオン時の発電機としてとらえればこれ以上ないものでしょう。
小排気量ターボエンジン+ハイブリッドでエネルギー効率は高まると思う。
MGU-Hが無くなってMGU-Kだけになるとの事ですが、
クランクケースの片側だけに(左か右?)寄り添う様に配置しているMGU-Kを両側に配置(2個使い?)するとどうなるでしょうか?
1個あたり175kwにして2個トータルで350kwにする。
制御の仕方で、両側を出力(駆動モーター)にしたり、片側だけ入力(発電機)に切り替えたり。
もし片方1個が故障して使えなくなっても、もう1個が使える。
2個とも故障する可能性は少ない?
レギュレーションで1個だけと決められていますが、2個使いにすれば面白いかなぁと思いました。
片側にバカデカイ1個のMGU-Kを、小型にして左右に振り分ければ
全体的にコンパクトになる?
話がずれて申し訳ありませんが:
MGU-Hが(F1以外に)応用性が無いという意見を掲示板やコメント欄で非常に良く見ますが、これは一体なぜなんでしょう。
MGU-Hと同じ構造のターボは市販車にもあるし(アウディなど)、上記ホンダさんのサイトのガスタービンハイブリッドってほとんどMGU-Hだし(黎明期のジェットエンジンはたいていレシプロエンジンの排気タービンを流用)。
市販車にも既にあるし、将来性もありそうなのにMGU-HはF1以外に使いようがないという意見は何を根拠にしているんでしょうね。
何も調べてないだけじゃないですかね。
ボルグワーナーなどのタービンメーカーが市販電動タービンを発表しています。
https://response.jp/article/2021/05/20/345984.html
VWあたりのターボに組み込まれるんじゃないかな。
ラグ解消のためのもので、回生に関しては少ないけど、熱効率は確実に上がります。
今後、MGU-Hが廃止になることでアウディ、ポルシェの参戦が決まりそうですが、やはりF1の世界ではとんでもない使い方をしているのでしょうね。
MGU-Hの市販化については、既出かも知れませんが、こんな記事がありました。(あくまで、計画ですが)
https://jp.motorsport.com/f1/news/mercedes-reveals-first-use-of-f1s-mgu-h-in-road-cars/4808437/
日本語で調べてもロクな情報は無いです。
electric turbo
などの英語で調べましょう、日本は所詮ガラパゴス社会で、世界的には遅れすぎています。
今さらながら本当にMGU-Hの存在は凄いなぁと思いました。
排気タービンで発電して給気コンプレッサーも回す、1つで2役。
これが無ければメルセデスとホンダが採用しているセパレート式TCも無かった(MGU-Hが中間にある)まさにコロンブスの卵的発想の産物。
MGU-Hの無い普通のターボに戻ってしまうと、
余分に発生する熱エネルギーを回収出来なくて効率悪く感じがする?
ハミルトンもトルコでエンジン交換の話が出てますね!これも嘘なのでしょうか?やはりメルセデスはキツイのか?
マシンの遅れをパワーで補って、マイレージ削りすぎな気がしてます。
コンサバ設定なら走り切れるけど、勝つためにはもう1基必要かな?