ホンダブランドとして参戦する最終年である2021年、本来2022年より使用予定だった新骨格エンジンを1年前倒しで投入した。

3日間のプレシーズンテストが終了し、目立ったトラブルは発生していない。準備期間が短かったはずなのだが、参戦6年目ともなると、事前準備を完璧に行うことができたようだ。

驚くべきことに、HRD Sakura の浅木氏は、どのような開発を行ったのか、それで得られた効果について説明した。

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新構造エンジンの開発概要

  • カムシャフトのレイアウトを大幅にコンパクト化して低重心化
  • バルブのはさみ角を変えた(広げた→狭めた)
  • 燃焼室の形状を大きく変えた(この為に他が変わった)
⇧90°V型エンジンの図解例(赤丸部分がヘッド部分、青ラインはバルブのはさみ角)
  • ボアピッチを縮めてコンパクト化
⇧V型6気筒エンジンブロック例(青矢印がボアピッチ)

 

HONDA RA621H 新骨格エンジンの考察

カムシャフトやバルブが収まるシリンダーヘッドが、全体的に低く、両端の幅が狭まり、低重心化とスペースを生んだ。

コンパクト化と低重心化は、燃焼室を理想の形へと改善した事による、副産物として出来た事だと浅木氏は説明している。

バルブ角を変えたは、広げたのではなく狭めたが正しかったようです。

 

バルブ角を広げた事に対する考察です

バルブのはさみ角を広げたと言う事は、燃焼室の中央上部が上昇するだろう、半円形状になる方向へ変えたという事になる。(シリンダー内ヘッド中央スペースが広がる)

その部分にはプレチャンバーがあり、その形状にも影響を及ぼす、インジェクターによる燃料噴射角度と共に火炎ジェッド角度の自由度が生まれたと推測する。

バルブのはさみ角は、近年の高効率市販エンジンにおいて20°ほどだが、TOYOTAはコンセプトモデルで41°とかなり広げたものを発表、吸気側バルブの傘にあたって吸気が乱れる事で、強いタンブル流が阻害されるからだと言う。

 

F1エンジンにおいては、はさみ角はかなり狭いものが予想されるが、少しでも広げる事でスワールやタンブルと言った、タービュランス効果を上げるものへと進化しているだろう。

それに合わせ、自由度の生まれた中央部分にあるプレチャンバーの通孔角度を調整すれば、シリンダー内のタービュランス効果を増幅させる事も可能だと思う。

 

※シリンダー内に入る吸気を、高速且つ様々な回転を組み合わせる事で燃焼速度を上昇させる。

市販系エンジンでは、吸気ポートからインジェクターの噴射圧力を利用するが、F1は1つでヘッド中央にあるプレチャンバー内に噴射している、このため噴射圧力を利用したタービュランス効果は少ないと予想される。

バルブ角を狭めた事に対する考察

当初の考察では広げたとの情報を元に行った訳ですが、それは近年の熱効率の高いエンジンがその方向性だったからです。

https://www.mazda.com/

 

マツダのスカイアクティブエンジンのピストンはこのような形になっており、圧縮比は14と高い数値になっています。

F1は市販車と違い、軽さを主に追及するため、このようなピストンは使いづらい。ある程度前時代的な、平たい方向性のピストンだったのではないかと予想しておりました。

 

 

 

この考えが全くの逆だった事になり、ホンダエンジンは従来のレーシングNAエンジンに近い形の方向性に、振った事になるのでないかと思われる。(お山型から平たいピストンへの方向性)

 

https://motor-fan.jp/

上画像はTOYOTAのF1用V8エンジンです。バルブの挟み角は推定20°以下、カムはフィンガーフォロワーロッカーアーム式でニューマチックバルブを叩きます。

 

こちらがホンダのF1用V8エンジンの断面図です。圧縮比13.0、バルブの挟み角は推定18°ぐらい、カムはTOYOTAと同様にフィンガーフォロワーロッカーアーム式でニューマチックバルブを叩きます。

低重心化は、上にある吸気側カムシャフトの位置を下げなければ達成できない。

HONDA RA621Hのヘッドカバー

引用元:https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2021113012SA000/

旧を見る限りでは、V8エンジン同様にカムの間にロッカーの支持支点があるように思える。そしてバルブの挟み角やバルブ長は左右対称に近い形だろう。かなりオーソドックスな燃焼室である事が伺えます。

ヘッドのコンパクト化は、もしかしたら、フィンガーフォロワーロッカーアーム式をやめて、直打式に変更したのかもしれない。しかし直打式はバルブリフト量=カム山の高さとなり、コンパクトにするためにはやはりロッカーを使う必要がありそうだ。

 

旧のヘッドカバーは620と言う事ですが、画像から解析したところ、このボルトの固定位置は619の右ヘッドカバーと同じでした。

ホモロゲーションルール上は同じ固定位置な620と621ですから、619も620も621も同じボルト固定位置?

 

619に620と621新骨格のヘッドカバーを重ねてみました、斜めに設定されていたプラグ用だと思われる筒状の出っ張り部分が、シリンダーに対して垂直になった。(クランクセンターは推定です。)

しかし、こんなカム位置設定あるのか?!

 

V8を見ると吸気側の方がシリンダーから離れた位置にあるから、無いとは言い切れない。コメントで指摘があったCBR1000RR-R(SC82)のシンリダーヘッド断面図を確認します。

https://www.honda.co.jp/factbook/motor/CBR1000RR-R/202003/202003_CBR1000RR-R.pdf

ヘッドカバーラインとシリンダーヘッドのラインを引くと、似たような形になってきました。

バルブの挟み角は、620で20°を超えていたと予想、621はおそらく20°を切っています。この角度はV8NAエンジンと同様クラスとなります。

本当にこのような形状であれば、吸気側バルブが長くなり重量が重くなるなど色々な問題はあるでしょうが、ホンダは面白く革新的な事をやってくれたと感心します。

メルセデス F1 Engine

これは多分2015年型メルセデスPUだと思われる。今更気づいたんですが、カム位置だと思われる二つの丸いカバーが、かなり近いです。

下画像は2020年、基本的構成が大きく変わった印象は無い。

ホンダはこの路線へ向かった事になるかもしれません。フェラーリのSF21発表動画で公開されたもの(多分2020年型)は、2020年型ホンダ並みに離れています。

 

 

 

各バンクに並びあうシリンダーのボアビッチを縮める事は、全長を短くする事が出来る。これは昨年から導入されている、熊製メッキ(熊本製作所のメッキ)による強度に裏付けされた改良だろう。

熊製メッキにより、燃焼室の損傷は大幅に抑えられマイレージが増加している、その分エンジンブロックも薄く出来たと言う事になる。

 

2021年よりパワーユニット総重量は、145→150kgとなったが、増加分でエンジンブロックのシリンダー部分強化には使わず、エンジンの低い位置に使用して低重心化させていると推測できる。

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HONDA RA619H

HONDA RA619Hが公開された。

出典:auto sport – オートスポーツ – 2021年 3/26号 No.1548

エンジン前部にあるコンプレッサーはやはりツインアウト構造だった、タービンはツインスクロール(+ダブルボリュート?)

RA620Hの問題点

浅木氏は、大きく2つの問題点を上げている。

1.開幕戦のオーストリアで予定していた発電量を確保するための制御ができないという規制

これは多分、TD026/20のパーシャル時燃料流量規制の事だろう、エンジンの出力に流量を一致させ、50kW未満では、燃料流量は10kg /時間を超えてはならない。

ホンダは2020年プレシーズンテストで、パンッパンッとアンチラグシステム(オフスロットルで燃焼)を起動させていた。その時に発生する排気ガスでタービンを回しMGU-Hで回生する予定だったと思う。

 

もう一つは、TD018/20のERS電力測定に適合する新しい暗号化電流センサーの導入。

チームが電力を要求できる頻度の制限でした。したがって、これは事実上、チームが電力レベルに頻繁に突然の変更を加える範囲を制限します。

ホンダ独自のハーベスティングモードが封じられた可能性が高い。

ハーフスロットル時に、MGU-Kで発電したエネルギーでMGU-Hを回す、その力を瞬時に回生してバッテリーへ送る。

これのHz(周波数)が下げられたとすれば、エネルギー収穫が減少する。

2.  TD/037-20 単一エンジン燃焼モード

各ドライバー毎に自由なセッティングをしていたため、全て同一の制御モードにする対応遅れは大きかった。

まとめ

カムシャフトがある部分のコンパクト化は、エンジン中間部分の幅を狭める。これによりボディカウルを絞る事ができ、尚且つ内部空気の流路を確保できる。

エンジン自体の全長を短くできる改良をしているが、取り付けボルト位置が変更できないため(アルファタウリは2019年製ギアボックス)実際にはホイールベースが変わるものでは無い。

しかし、部分的にスペースが生まれる事で、車体内部の補器類などの取り付けに自由度が生まれる。

 

ペレスのカウルが飛んだ事で、エキゾーストマニホールドはRA619Hで採用されていたタイプに近いものである事は確認できる。HONDAの文字の下にある谷間のような窪みが、シリンダーヘッド部分だが、カバーされ内部空気の流路になっているのがわかると思う。

大きめのセンタークーリングで上がった重心はエンジンの低重心化でカバー、空力やマシンの運動性能を上げる事とパワーアップを両立させる領域まで、ホンダとレッドブルが協力している事が頼もしい限りです。

エキゾーストマニホールドの取り回しや大きさ、ボディにバルジができるプレナムチャンバーの幅増加など、メルセデスの考え方と真っ向から対立するコンセプトであるホンダ。

 

単純なピークパワーではメルセデスが一番だと思うが、少しパワーを犠牲にしたコンパクトさが勝つ要因となれば、過去に曰くの付いた「サイズゼロ・コンセプト」の完成と言えるのではないだろうか。

 

 

ヘッドカバーの公開という重要な情報により、再分析と再考察を行いました。

ターボエンジンというよりは、もはや高回転型NAエンジンに近いコンセプトに思える。浅木さんがクランクパワーか、排気エネルギーか迷ったら、クランクパワーの方を取ると語っているし、少し盛り上がったピストンクラウンで逃げてしまう爆発力を取った形なのでしょう。

今回の考察にあたり、他当たり次第検索していくと、バイクの知見が大きな役割を担っていると感じました。

ニューマチックバルブは直打式が当たり前と思っていたら、MotoGPはフィンガフォロワーロッカーアーム式になっていて、F1のV8NAエンジンでも既に使われていた事を知ったりと、聞いていた思っていた事とは違う事も多かったです。

また、色々な情報をくださったコメンターの皆様に感謝します。