2022年新規定F1マシンの設計自由度を分析!の第2弾です。
ギアボックスは、ケースとギアカセットがセットで年間4基、油圧システムとデフなどのドライブラインが年間4基になりました。
マシンの設計に関わるところでは、ギアボックスケース内部のカセットやドライブラインのレイアウトが規制を受けています。
今回はギアボックスとリアサスペンションレイアウトについて分析していきます。
ギアボックスのレイアウト規制
簡単に説明するとデフの高さはほぼ一緒、ギアカセットの位置も一緒、ギアカセット先端からデフセンター間に35mmの自由度がある。
これは思っていたより大きな影響があると感じています。
2月にどのような規制になるのか投稿していましたが、指摘していた通りプルロッドを採用しているチームにスペース的なデメリット生じている可能性があります。
プルロッドのリアサスペンションレイアウト
上図はフェラーリが2021年まで採用していたトーションバーが収まる位置です。
重いギアカセットを前方にして、デフまではシャフトで距離を取る事でリアサスの収まるスペースを確保しています。
ディフューザー近くのギアボックスを細く出来るメリットがありました。
これが出来なくなった為、トーションバーはギアボックス前方に移動しています。
プルロッドはトーションバーの上部が突き出すように前方に倒れる、かなりのスペースが必要です。
プッシュロッドはトーションバーの傾きが逆になります。
主要なサスペンションパーツがギアボックスから出ており、内部のスペースはあまり必要になりません。
レッドブルはギアカセットが見えています。
フェラーリのギアボックス
フェラーリPUとギアボックスの接続部分を確認してみましょう。
フェラーリPUはエンジンとの接続部分にタービンとコンプレッサーがあります。
スプリット型に比べて後方にスペースが必要になる、しかしリアサスがある、どうしよう?
タービン位置を少し上げて避けよう・・・。
これによって、フェラーリPUのタービン軸が上昇したと私は考えています。
メルセデスのギアボックス
メルセデスのエキゾーストは独特で、なるべくタービンに対して各々の燃焼排気パルスを届ける作りになっています。
このエキゾーストとタービンは結構スペースを使っていますね。
トーションバーは上部に逃がしていますが、この方式だとギアカセットからデフまでの距離を最大値にする必要があり、横に盛り上がるような形状になっています。
レッドブルやフェラーリに比べるとギアボックスが太いです。
メルセデスPUのエンジンブロック自体は短くなったように感じていますが、前方に円錐状の水冷インタークーラーがあり、ここでもスペースを失います。
その結果、燃料タンクが横に張り出し、横幅のあるモノコック後方になっています。
ラジエーターの一部を押し込む凹みがそれをさらに助長させている。
前も後ろも太いメルセデスと言ったところです。
まとめ
フロントアクスル位置を分析した時に、リア側が長い理由まではふれませんでした。
フェラーリやメルセデスをもう一度確認してみると、ギアボックスが長くなってしまう理由がある事に気づきます。
ギアボックス内部にサスペンションを収めなければならないプルロッドは、こういう部分で自由度を失うのです。
レッドブルはギアボックス内部で重いカセットを前方に、後ろはその分余裕が出来て長めに使える可能性が高いです。
35mmを最大限長く使えば、ケースの横幅を狭める事が出来ます。
その辺を比較できる材料はありませんが、mm単位で空力のメリットを得られる可能性が高くなります。
ホイールベースが一緒であればフロアの長さは変わりませんが、フロアのキックポイント位置は変わります。
少し前にあるレッドブルの方がバランスを取れている現状です。
マシンの基本ベース決めるギアボックスケース、そしてパワーユニット、全体最適化を出来る人にだけ女神が微笑みます。
ギアボックスに直接関係ないと思うんですが、サスペンションってコイルバネのイメージでした。
トーションバーとよく書かれているので、最近のサスペンションは、もうバネはないんでしょうか?
トーションバーはねじって使うバネ、コイル式→ベルビル式へ変更になっています。
トーションバーはロッカーを使う時に別軸を持たなくていい利点があります。
ベルビルスプリング(皿ばね)はカーボン系素材でできていて、コイルより細く出来ます。
スペース確保と軽量化のために進化するのがF1の真骨頂です。世界最先端の技術が使われます。
コイル式はマクラーレンで生き延びています。
ヒーブサスペンションが太いコイル式です。
マクラーレンのトーションバーは上部に逆ハの字で水平に置かれているみたいだ。
画像のように
左右トーションバー2本を平行(開き角0度)では無く、ハの字(開き角?度)に配置する意図的な狙いとかあるのでしょうか?
単にレイアウト状コンパクトにした結果でハの字配列になっただけなのでしょうか?
昨年レッドブルRB16Bのフロントサスペンション(プッシュロッド式)でも左右トーションバーは平行では無かったでしたね?
フロントだとノーズ先端部分を細くする(ナローノーズ)ために絞り込む必要が有ってハの字になったのか?と思いました。
トーションバーは長い、それを水平に置くのが基本です。
フロントは左右リンク機構が後端に無い事が多いので角度が付いて離れても良い。
リアでそれをやるとスペース確保は出来ても後端のリンクが失われると思うのですが・・・画像が少ないのでこれ以上はわかりません。
そうですね。
F1は、技術の最高峰ですからね。
そこが魅力です。
技術の極みには、際限なしですね。
それがまた良い。
それをわかりやすく解説していただける。
本当にいいブログを見つけたものだと思います。
いつも、有り難う御座います。
F1に初めてトーションバースプリング(捻り棒)が使われた時(1989年フェラーリF640?)は無垢のシャフト材だったと思いますが、
現在では軽量化のために中空シャフトが一般的でしょうね?
昨年(2021年)メルセデスW12がフロントサスペンションに使っていた左右ロッカーの回転軸からトーションバースプリングを抜いたとか言われている噂の「ゼロ・トーションバー」の現在は?
メルセデスが燃料タンクを左右に膨らませて横方向に張り出させてる事からもホイールベース3600mm以内に収めたい意図が伺えますね?
それと燃料タンク横側面を凹ませてまでラジエーター熱交換器を左右に張り出せないようにする(ゼロポッド追及のために?)
エキゾーストパイプの取り回しですが、
タービンへの接続を見ると以前にモタスポGP管理者様が指摘されていた2気筒分ずつをタービンに導く3スクロールを採用しているのか?と思わせる(2スクロールは確実だと思いますが)
メルセデスのセンタークーリングは、レッドブルほど大きな熱交換器をプレナムチャンバーの真上に置くようなレイアウトは採用していませんですね(重心が高くなるのを避けたい)
本当メルセデスは、他チームマシンとは一線を画していますね?
各パーツを上手くおさめる為には、ゼロポッドが無理筋だったのが判りますね。
ゼロポッド前提で、他のパーツを無理な配置にした為に、アップデートで全体のバランスを調整するのも難しくなった。
そんな印象を受けます。
その点、レッドブルのマシンは最初から全体のバランスを考えて作られていた。
基本がしっかりしているマシンは速い。をそのまま体現したって事ですね。