https://www.auto-motor-und-sport.de/

ホンダは、2020年まで2017年の骨格を使い続け、改良する手段を用いていた。

2018年後半に発見した自着火を伴う高速燃焼、更にパワーを得てMGU-Hによる回生エネルギーを確保する為には、新たな強い骨格が必要となっていた。

 

そこで投入されたのが、新骨格パワーユニットRA621Hとなる。

内燃エンジン(ICE)のパワーアップ、2020年のTDによるMGU-Hの回生エネルギー不足を補う新デバイスが投入されていた。

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ホンダエンジンのパワーアップ推移

ホンダが公開したエンジンパワー推移表にパワー差を足してみました。

https://www.webcg.net/

2018スペック3→2019スペック4の差は、なんと41hpにもなっている。

2020スペック1では+10hpに留まりパワーアップ幅は縮小、新骨格2021スペック1では+20hpを達成している。

 

MGU-Hの回生エネルギーは、2020年遅れた開幕までに発行されたTD(新しい監視センサーの増加と暗号化)で大幅に低下。

ホンダ特有のパーシャル回生とエクストラハーベスト回生の効果が縮小した為に起こっている。

また、オフスロットル時の燃料流量10kg/h以下も関係している事が某雑誌で語られている。

 

2021年開幕ではその遅れた分を取り戻し、新バッテリー(ES)によってメルセデスを上回ったと試算している。

F1エンジンパワーの推移

F1エンジンパワーは、1,600ccターボエンジンとMGU-Kモーター(161hp)の合計となる。

ホンダの推移表と昨年の数値を基に、2018年からの各メーカーの推定パワーを表にしました。

メーカー 2018 2019 2020 2021 ICE単体
メルセデス 980 995 1,005 1,015 854
ホンダ 943 984 994 1,014 853
ルノー 915 945 985 1,000 839
フェラーリ 980 1,030 970 1,000 839

 

何だか盛り過ぎな気もしますが、昨年のホンダ994hpを基準に考え直した数値です。

自着火による燃焼を手なずける事によって、大幅にパワーが上昇している。

 

メルセデスはかなり前から、現状ではルノーやフェラーリもその域に達している。

自着火によるホンダの高速燃焼

引用元:F1速報特別編集 Honda RA618H&RA619H ─Honda Racing Addict Vol.3 2018-2019

ピストンで圧縮空気を更に圧縮して燃料を噴射、爆発寸前の圧力状態にジェット火炎の圧力が加わり、シリンダーの端から自着火。

こんな感じでしょうかね?

 

 

そして、こちらが一般公開されたホンダエンジンの燃焼動画です。

 

ジェット火炎点火だけでは、パワーは頭打ちとなっていった2017年、実験数値の誤りによって偶然発見された高速燃焼だった。

 

その高速燃焼を突き詰めていくと圧縮比を上げる必要があり、ピストンが△型だと理想の燃焼状態とならない。

RA621Hでは、バルブ角を極端に狭めてピストン表面を、より平坦になるよう変更している。

 

圧縮比は、レギュレーションで許される18.0:1に限りなく近い。

エンジンブロックは強度確保のため、アルミ合金の削り出しとなった。(以前の鋳造より7割も疲労強度アップ)

HONDA F1 RA621H

引用元:Honda RA620H & RA621H HONDA Racing Addict Vol.4 2020-2021 (F1速報 別冊)

上記引用元雑誌の表紙を飾ったRA621H、各部の説明を付け足しました。

 

コンプレッサーアウトの横に、奇妙なパイピングがあり、エキゾーストへ繋がっています。

これが新デバイス「CAC Bypass 2」です。

CAC Bypass 2(Charge Air Cooler Bypass 2)

チャージエアクーラーとは、インタークーラーの事です。

インタークーラーを通さない(バイパス)と言う意味になり、2 は2代目なのか?2本なのか?

ホンダとレッドブルの間では、CB2と呼ばれています。

 

過剰な過給圧を解放するPOV(ポップオフバルブ)は、インタークーラーを通過した後、プレナムチャンバー前からインダクションポッドに戻す設定になっている。

CB2は、インタークーラーを通る前にエキゾーストへ接続されている。

POVは、コンプレッサーで圧縮した後の空気をインダクションポッドに戻すので、圧縮する為に使ったエネルギーを捨てている事になる。

CB2は、圧縮した空気の過剰分をエキゾーストに接続して、排気タービンを回す力にしているのでエネルギーロスが少ない。

 

付け加えれば、インタークーラーで冷やすこと自体がエネルギーの消費である。

冷やした空気を接続するよりも、熱い空気の方がタービンにとっては良い事、この単純なデバイスには複数のエネルギー効率改善効果がある。

 

全開時の回生エネルギーに換算すると計算上10%以上増える事になると言う。

「これ、いれてなかったらちょっとまずかったなと」by ホンダエンジニア山田さん

 

※CB2は2021年のみ使用できた。(2022年からは使用禁止)

バンクのオフセット

https://www.motorsport.com/

 

ボアピッチも縮めて全長を短くしている。

右バンクを前にした訳は、コンパクト化を促進する為かな?

 

タービンに入る排気パルスを最小限に抑えるために点火順序を変更した事も関係するのか?

はっきりとした理由は説明されていない。

 

ホンダF1のテクノロジー (モーターファン別冊  )

ホンダF1のテクノロジー (モーターファン別冊 – モーターファンイラストレーテッド )が、2022年3月26日に発売。

F1パワーユニットの全てがわかる一冊です。

 

他のメーカーはこんな事しません。

ホンダだけ、海外ファンからも熱い視線が注がれています。

まとめ

パワーは推測なのであしからず。

RA621Hの主要な開発部分を抜粋して、解説してみました。

これ以上の詳しい事は、雑誌を購入するか、Kindle Unlimited読み放題になるのを待つなど、ご自由にして下さい。

 

やるべき事は全てやったホンダ、今まで公開してくれた数々の技術的な概念は、他のメーカーに影響を与えるだろう。

世界的に見ても、このような情報を提供してくれるのはホンダだけなようです。

 

メルセデスがやったパワーアップ方法などから推察してみても、パワーと言う面では8年たってようやく頭打ち。(圧縮比上限に達した為)

 

シリンダー内圧力に耐えられるようにピストン・コンロッド・各種ピンの重量を上げれば、回転が重くなりパワーが低下します。

圧力に耐えられる材質が許可されない限り、これ以上はほとんど無いでしょう。

雑誌には書かれていない裏話

カムシャフトの再配置・ピストンの再設計・バンクのオフセット、これらのアイデアは他のエンジニアよりも30才以上も上な非公式なチームによってもたらされた。

開発に携わった方の話では、必ず反対するキーパーソンが居てかなり大変だったらしい。

 

「1番シリンダーは左側にあるはずです。」

と言うような既成概念や固定観念で反対とかね(笑)

 

最終的には実現している訳でして、浅木さんによるマネージメントが素晴らしかったと言えます。

 

2022年元日

新年あけましておめでとうございます。

今年もF1モタスポGPをよろしくお願いいたします。

 

ホンダはレッドブルパワートレインズから製造を請け負い、パワーユニット全てを2025年末まで製造します。