ホンダが2017年に改善をしていたのは、ハードウェアであるエンジン(パワーユニット)だけではなかった。
ソフトウェアであるERSのエネルギー回生についても大幅な進化を遂げている。
デプロイメント担当の2年以上にもわたる研究の成果が、昨年終盤の強さに繋がっていたようです。
今回は、回生エネルギーについて解析していきます。
回生エネルギー規定
主な規則(1周単位) | エネルギー方向 | 量 |
---|---|---|
使用できるエネルギー | ES⇒MGU-K | 4MJ |
回生できる運動エネルギー | MGU-K⇒ES | 2MJ |
回生できる熱エネルギー | MGU-H⇔ES | 無制限 |
回生できる熱エネルギー | MGU-H⇔MGU-K | 無制限 |
これがFIAが提示している内容。MGU-Hの無制限がキーポイントになるのは、ご承知の通り。
以後、K(MGU-K)・H(MGU-H)とします。
パーシャル回生
2016年にホンダが導入したパーシャル回生は、Kを使った加速時に回生するというもの。
アクセルON時の全開になるまでのわずかな時間を利用して回生していた。
Kでの回生は減速時だけと思われていたが、一部のコーナーでこのパーシャル回生を導入してデプロイを確保している。
これはやりすぎると燃費が悪くなるが、適度に行う事によってデプロイを増加させて120kwアシストを使う量を増やす。結果としてラップタイムが向上した。
またHでタービンを回すEブーストは積極的に行ってレスポンスを向上させている。
2016年ではデプロイが余る事が多かったためこのような設定をしている。
2017年はデプロイ不足
マシンの規則改正に伴う全開率上昇とドラッグは、デプロイ不足を露呈する事になってしまった。
2016年で積極的に行っていたEブーストはあまり使用せず、Hは回生をメインに稼働させることが多くなっている。
デプロイが足りない状態になってしまったため、新たな回生方法であるエクストラハーベストという手法を導入している。
エクストラハーベスト
2017年のイタリアGPから本格稼働させたエクストラハーベストは、Kでの回生を積極的に行う手法。
KからES(エネルギーストア)へは1周あたり2MJと言う規制がある。
これを超える分をどうするのか?
驚きの解決策は、KからHへ送り、HからESへ送る事。
K⇒H⇒ESと言う流れになる。
この流れは確かにレギュレーションには記載が無いし、まさに抜け穴的手法だ。他メーカーとはこんな部分でも差がついていたと思われます。
簡単に手法を説明すると、Kはパーシャル回生してHへ送る、Hは一瞬Eブーストを行う、Hは一瞬回生してESへ送る。
これをスロットルが全開になるまで断続的に繰り返す事でデプロイを増加させる。
この時、単純にHを電線として使ってはレギュレーション違反。
電気の流れを簡単に書きます。(+は消費、-は回生)
- K (-)⇒〖 H (+) ⇒ H (-) 〗⇒ ES (-)
「Kの回生エネルギーでHを回す⇒その回った力をHで回生しESへ」
これを1秒間で20~40回行っています。(20~40Hz)
Hの耐久性に問題がでるために、投入が遅れたとホンダは説明している。
まとめ
ホンダの躍進はハード面だけでなく、ソフト面でも確実に進歩を遂げている事によって支えられている。
まだまだ伸びしろを感じられる今の状態は、今後の開発によって改善され、確実に速くなっていくと思います。
止まるな!ホンダよ!
私の電気的な知識ではこの説明が限界でした、申し訳ありません。
参考文献
この問題は、MGU-Hの発電量が十分に確保出来ないので、色々工夫して絞りだしてますよって話ですね。MGU-Hの発電量が、必要な分確保出来れば、要らない技術ですが。現状は、MGU-Kは2MJよりも、多くの発電量があり、MGU-Hは必要な(50KW以上)発電量を、上手く引き出せない状態見たいですね。
此処で既定の隙間を考えてみました、規定では1周当たり、ES>MGU-Kへの供給は4MJで、ES>MGU-H(Eブースト)の規定はありません。そこで、ESをES+αと考えこのα部分に
α=(MGU-K-2MJ)+MGU-H(余り分)
を蓄えて置き、Eブーストに使えば面白いかもしれません。私の計算では、ESは7MJ以上の容量があると思うので、可能です。ずるいメルセデスは、前からやってる技術かも知れませんがね。
BL17さん その節は空力学のコメントありがとうございました。
ES自体の容量がそこまであるんですね。貯めておければEブーストをもっと使える訳か。
コントロールライン通過時にリセットさせれるのはあくまでES⇒MGU-K(4MJ)の部分だけですから
それ以上蓄えておくのはレギュレーション違反にはならない。
ホンダは2017年Eブーストが減ってしまっているので、改善できれば加速とその後の速度の伸びが増加する。
2018年のERSでの開発のポイントは案外そこだったりしますね。
ご教授感謝いたします。
「ESの最大と最小充填状態の差は、車両が走路上にある時常に4MJを超えることはできない」
レギュレーションにはそう書いてありますね。
レギュレーション確認しました。
ESは放出も貯蔵も4MJしか許されないのですね。
容量が7MJあってフルでスタートしても、3MJは残っていなくてはならないって事になる。
ご指摘ありがとうございます。
HとESは相互無制限って図で説明しているのがややこしいですね。
となるとH用のEブーストはKから直接送られてきたものを使う。だから断続的に繰り返すって事になるのかな。
なんでもかんでもバラすな~よそがマネしたらどうすんねん!って感じですが、ホンダの情報は少ないので興味深い話ですね。
熱で発電効率が落ちてるって話しもあったのでトロロッソのシャーシでクーリングがうまくいけばMGU-Hの発電効率は改善されるかもしれませんね。
AS.WEBでマクラーレンの去年と今年の比較ってのがありましたが、ルノーも覚悟しないとこのあたりの問題は相当悩まされそうですね
ホンダさん相当自信があるんでしょうねw
過去の開発情報をここまで公開するとか、ちょっとやりすぎです。
他が既にやっている事なんじゃないかなと思いますが。
今年はそれ以上があるのか?あってくれなきゃ困ります。
レギュレーションで定められていない部分でタイムが稼げるなら何でもやる世界ですから、直近だけでも、オイル燃焼、ステアリング操作時の車高変化、カスタマーへの同一PU供給、ルノーのブロウンリヤウイング問題など切りがありませんね。今回のERS関連については、まだまだ未開拓ゾーンですから、他チームからクレームがつく位の物を開発してほしいですね。ところで、STRの年間PU基数につてはどう考えてますか?私は、できれば4基で乗り切ってほしいと考えています。ロシアGPでペナルティ消化し鈴鹿で勝負!(案)
まずはモナコまで1基目がいけるかどうかがポイントかと思います。
その1基目はできれば延々と金曜日エンジンにする。
早めに2基目をいれてやりくりしていくのもあり。
スケジュール的にはロシアでペナ消化はありそうですね。
どうやっても今のホンダでは3基は無理でしょう。
私の予想では5基です。
パワーがまだまだ足りないし、それだけアップデートもして欲しいとの希望も含んでいますけど。
「ICE, TC, MGU-H & K, ES and CEと多彩なPower Unitの話は興味深いですね!」
噂の雑誌「特編Moter.Spoテクノロジー’17~’18」の内容ココで知る初聴きのMGU回生系の話楽しませていただきました。
ますます雑誌欲しくなるけどAmazonプレースで狙っているのですが価格下がる気配が無い。もしかして、ココで内容について盛り上がるから…(笑)。
確かに、本の内容は公表しても問題の無いもはや次の段階が導入されている様なレベルの技術なのでしょうね…。自分も、メーカーが公表はまだ絶対にしないけれどアレは既にF1では実用化されていると思う様なものもあります。この世界は、こちらが発想として気付いた時点で既に研究どころか水面下で実用化されている世界で、本当にいつも「まいったな~!」で感心します。
エンジニアさんもファクトリー内でオフ無く常に耐久系レースやっているって事ですよね!。
最近常々思いますが、F1で開発される技術って凄いですね。パワーユニットになってからは特に顕著です。
考えられないほど予算も使ってますけどね。
ウィリアムズなんかは他分野の技術開発に転用して売ってますし。
差がありすぎるって騒ぐ人達が多いけど、やっぱりF1はこうでなきゃいけない。
共通パーツ化がどんどん増えてワンメイクに近くなったらF1は終わるな。
ホンダは回生含めてアドバンテージを作れる方法を見つけてると思います。
トロロッソがホンダはハイテクとコメントしてたのはその部分だと推測できますしね。
きっと何かしてくる今年の鈴鹿を楽しみにしてます。
と勝手に期待してます(^^)
昨年迄、空輸出来ないバッテリーはマクラーレンからの物を使ってたようなので、今年、何を使っているか興味深々。
このあたりも何かあるかもしれませんよ…ふふふ^ ^
エネルギーストア(ES)=バッテリーですけど、今思えばなんでバッテリーって言わないんだろう?w
FIAは最低重量20kgと規定しているけど、これこそ共通パーツでいいような気がします。
マクラーレン・アプライド・テクノロジーズ(MAT)のフォミュラE用バッテリーにはソニーや村田製作所が関わっているようですし。
ホンダは何を使っているのかは今のところ不明と。
>これこそ共通パーツでいいような気がします。
確かバッテリーはルール策定の時に共通パーツにしようとしたら
PUメーカー側が反対した経緯があったような・・・。
電気自動車(ハイブリット)の基盤部品であるバッテリーを共通パーツにしたら
技術開発できないじゃないかという感じだったと思います。
ハイブリッドのバッテリー技術は進化の途中か・・。それもF1の一部と言えば一部ですもんね。
ホンダはマクラーレンの使うとは思えないし、いいパートナーがいるなら問題ないですが。
バッテリー関連はパートナーメーカー名があまり出てこないし独自開発がやっぱり多いのかな?
全個体電池・・・
ホンダもトヨタも狙っている技術ですよ