バーレーンにて開幕した2021年のF1、レッドブル・ホンダのハイレーキマシンが予選において圧倒的な速さを見せてくれた。
決勝ではタイヤ残数の違いなどで、戦略的に負けてしまったがトータルスピードでは勝っていた。
全世界のホンダ・レッドブル・フェルスタッペンファンが大いに沸いた週末になった。
今年の急遽施行されたレギュレーションは、フロア面積削減・リアディフューザー周りのストレーキ削減などで、全体ダウンフォース総量が10%も削減される予定だった。
現実的にはエアフローの再構成などで、5~6%の削減に落ち着いているようです。
2021年フロアレギュレーションの影響
上図は、2018年マシンを基準にした各部分のダウンフォースとドラッグの発生量を示すものです。
2019年にレギュレーションが変更されたが、2020年には再びこのぐらいの値に戻っているだろう。
フロアとディフューザーで、全体の65%のダウンフォースを発生しているが、ここが55%になってしまうと言う事です。
上手く開発できたチームは約60%になります。
ハイレーキはディフューザー効果を高める
リア車高をわざと上げる、ハイレーキ角セッティングのレッドブルRB16Bは予選最速であった。
ハイレーキこそフロアシーリングが、上手く出来ず苦戦すると思われる見解もあったが、テストと開幕戦の結果からも影響が一番少なかったと判断できます。
元々ハイレーキは、路面からフロアやディフューザーが大きく離れているため、フロア下を流れる低圧の空気を守るのが難しい。
しかしこの離れている事が、リアタイヤ乱流からディフューザーの気流を守る事に繋がっていると考えられる。
リアタイヤと路面に挟まれた高圧空気を、赤色で適当に表現してみました。
ローレーキであるメルセデスとアストンマーチンは、この高圧空気とディフューザーが非常に近くなります。
そして、影響の少ない中心エリアを重点的に高める必要があります。
メルセデスのトト・ヴォルフは、
「2021年にレースをしている新しいタイヤがあり、まだスタートしていないので、レーキだけが私たちが苦しんでいる可能性のある唯一の影響だとは思わない。」
「それは物理的に不可能です。レッドブルのようにサスペンションと設定を実行することができなかったので、それを最大限に活用し、利用可能なもので車を調整する必要があります。」
とコメントしている。
何年も続くメルセデスのローレーキコンセプトを変更する事は困難だという事です。
ディフューザー効果を高める上面処理
もう一つ重要な要素として、ディフューザー上面を流れる空気量を増加させ速く流す。
それにより、ディフューザー下面の空気の流れを加速させるという施策も重要なポイントです。
この画像を見ると、RB16Bのリアサスペンションのロアアーム類とディフューザー間の空間が恐ろしいほどあるのがわかります。
ここまでやるにはデファレンシャルの位置を上げ、ドライブシャフトを斜めに取り付ける必要があります。
上画像は、フェラーリのギヤボックス改良を表したイメージです。フェラーリはこの施策により、ディフューザーの効率を大幅にアップさせています。
メルセデスは、デファレンシャルとドライブシャフトとタイヤセンターをなるべく水平に保ち、トルク損失を無くそうと言う試みを続けています。
逆にレッドブルは以前からドライブシャフトを斜めに取り付けており、この分野では一日の長があるのです。
このような状況から、メルセデスが簡単にレーキ角を増やす事はできません。
前面投影面積増加による効果
ハイレーキは、常にあの高さを保つものではありません。
速度ともに上昇するダウンフォースを使いリア車高を下げていきます。そうする事によって高速度域において、ドラッグを減らします。
低速度域のブレーキングからターンインまでは、極端にリアが上がりフロントがわずかに下がります。それにより前面投影面積は最大値となります。
低速度域では、空力効果が最低まで薄れます。
この速度域で効果を発揮するダウンフォースは、表面実効圧力の高い、ウィング角度を目いっぱい立てた状態でなければなりません。
それを車体全体で行うのがハイレーキセッティングの最もおいしい部分です。
バーレーン予選における、フェルスタッペンとハミルトンのミニセクタータイムの比較では、ターン5,6でフェルスタッペンが0.1秒速く、ターン9,10でフェルスタッペンが0.2秒速かった。
ターン4以外のきつく回り込むコーナーはレッドブルの方が速い、ハイレーキの特徴であるターンインの速さを最大限に発揮できている証拠です。
ターン5,6は高速コーナーの切り替えし、ターン9,10はステリングを切ったままブレーキングする低速コーナーですが、メルセデスのおぼつかないリアスタビリティの弱さを露呈しています。
フロアとディフューザーだけで、全体ダウンフォースが5~6%下がったため、ウィング角度を上げる必要がでています。表面実効圧力を増やしダウンフォースを高めるとドラックも増加します。
ハイレーキは、速度域によってダウンフォースとドラッグをコントロールできるのも有利に働くポイントです。
ブレーキダクトフィンカットの影響
フロアカットの影響はもちろんの事、ブレーキダクトフィンの下方カットで、ディフューザーの端との相互作用が弱まった事も大きく影響している。
これにより今年ハイレーキは、高速度域において、極端にリア車高を下げるようなセッティングをしない可能性があります。
バーレーンのターン1への2台の並走、約290km/h付近におけるレーキの角度が、それを示しています。
まとめ
10年以上もハイレーキセッティングを続けているレッドブルが、一気に優勢になった今回のレギュレーション。
ウィング面積が少なかった2009~2016年までは、特徴がよく表れる結果が多かった。
2017年に車体やウィングが大きくなり、フロアダウンフォースが大幅に増加したため鳴りを潜めたが、こんな事になるなんて予想できませんでした。
もちろんこれは、レッドブルの力だけではなく、ホンダのパワーアップとコンパクトさも寄与しています。
2014年よりパワーユニットとドライブトレイン至上主義を貫いてきたメルセデス、ある意味いい落とし穴になったのではないだろうか。
いつも興味深く拝見させて頂いております
大体シーズン5〜6戦位は、細かい問題に対処していく必要があり、本当の戦いは夏前頃からと聞いた事がありますが、今回のメルセデスの問題は根幹に関わる事ですので、そう簡単には解決出来ないでしょうか? 素人考えですが、ウイングのダウンフォースに頼り、短命覚悟のパワーセッティングで速さを追求し、ペナルティーを見越してシーズンを戦う事をしたりはしないでしょうか?
それでも、空力の問題は解決しないかもしれませんが・・・・
メルセデスはウィング角度がかなりついてましたね、リアも柔軟性がなく跳ねるような挙動でした。
それと新しいブレナムチャンバーが上手く機能せず、MGU-Hの回生に問題があるような噂もあります。
まぁそれでもトップレベルな事に変わりないチームです。
対策は早いですよ、ただ対策で解決出来ない問題は残るかもしれない。
私も同意見で、事前テストや開幕戦には間に合わなかったメルセデスですが、早いうちにキッチリ対応解決してくるだろうと思います。
それまでは取り合えず予選で最低でもフロントロー2番手(ハミルトンが)確保して決勝重視の戦略を取ってくるのではないでしょうか?勿論ポールポジション獲得した方が良いですが?
ハミルトンはともかく、ボッタスの方がメルセデスに在籍して5年目とは言えW12の特性に対応出来なければハミルトンが1人でマックスと一騎討ち直接対決しないといけないですが(その方がファンとしては喜ぶ?)
レッドブルホンダのマックスも開幕戦でポールポジション獲得したのは良い事ですが、これが連続して決勝でもハミルトンよりも上位フィニッシュ(ずばり優勝ですね)が確実となればRB16Bの優位性信じます。
まだ開幕戦の1つが始まったばかりなので?
お久しぶりです。m(_ _)m
Hondaの様に、Mercedes F1は組織的にも公正な開発やメディアへの情報展開を行っている印象てす。しかし、今回の“Low-rakeタイプが不利な事は判っていた”というTotoWolf 氏コメントは少なからずSandbagging を含むのではという印象です?。例えばJamesAllison氏がブレシーズンテストが開始される迄、ICEパワー面だけでなく空力面も自信満々のコメントを繰り返し、決して不利だというコメントは有力海外誌の記事含めその様なコメントは見ませんでした。また、テスト後にLewisHamilton選手も我々を遅くするなどどコメントしていましたが、全チーム同じルールなので決してその様な事はないはずです。
なお、’21 Pre Testing 以前に、MarkHughes氏やGaryAnderson氏はハイレーキが不利とは限らないという特集記事をリリースしていました。
さて、確かに昨シーズンとのタイム比ではHigh-rakeチームのギャップが少ないた傾向を示していました。しかし、FerrariはPUのパワー自体が大幅に改善されてあるし、RedBullもHonda PUのEVエネルギーのリカバリーとICE形状の小型&低重心化含めPUパワー面の改善がされてあり、少なからずレーキアングルの影響もあるとは思いますが、ロングホイールベース&ローレーキ、ショートホイールベース&ハイレーキの荷重特性の変化などの物理的変化の影響含め車体全体の空力のそれぞれの長所短所を上手く活かし開発したチームが、現在、優れたレースカーを手にしていると理解しています。
参考に、2018シーズン迄のRedBullはショート&ハイレーキコンセプトにより低速と中速域の特に低速ターンでは元々得意としていた(Max Verstappen & Daniel Ricciardo Duoも非常に強力だった)。この点は、’21 RB16Bの空力開発が順調に進み元に戻った印象てす。そして、中速と特に高速域ではPUの優位性もあり、これまでハイブリッドエラは終始Mercedesが速かった印象です。また、’20年HONDAのICEはほぼMerceとクローズであったがERSに差があると云われました。しかし、今’21シーズンはICE&ERSも上回ったと云われ、少なくともハイブリッドエラで初めてRB車体が低中高速域の全てで優れる様になったと理解しています。なお、ここでターンインの優位性とある様に、レーキアングルだけではなく、上述されている様に、車体の荷重変化の特性上ショートホイールベース及び前傾姿勢の特性が上手く活かされていると理解しています(イメージ的には小型車が小回り効く的な…)。
トト様の発言は、誇張表現すぎましたかね?
Mercedes: Low-rake concept affected more by new F1 aero rules
メルセデスがテストで躓いて、開幕でなんとか盛り返した。
レッドブルは開幕から速い、でも速さを引き出せるのはマックスのみ。
あまりにも乗り方を限定されるマシンは、変わっていないと言う事実はあります。
ペレスのQ3での本気アタックがまだ見れていないのでなんとも言えないですね
レースペースではフェルスタッペンやハミルトンと同じだったようなので期待したいです
To Mr. Toto Wolff of Mercedes.
First of all, I must APOLOGIZE to Toto Wolff. This is because You did not actually comment on the comments here(Knew before the season that Low-rake was at a disadvantage), but a certain motor magazine mistakenly wrote it between Toto’s comments as if it had commented.
To Jin氏
上記の指摘の点、再確認すると確かにToto氏自信はコメントしていませんでした。
日本の某モーター誌のその記事では、トト自身の「コメント」と「コメント」の間に、その記載があり、再度みるとその部分だけ「カギかっこ」が外れて記載されてありました。なお、F1 Gateではありません。
なるほど、どうもありがとうございました。
いつも記事コメント拝見させて頂いています。
テクニカルな話ではないのですが、
レッドブル最強コンビは、今でもマックス&リカルドだと思っています(セバスチャン・ベッテル&マーク・ウェーバーのコンビも良かったですが)
リカルドがレッドブルを出た理由には様々な説があると言われてる
(チームがマックス重視になったとか?ホンダPUに変更したとか?)
2018年までのレッドブルは非力なルノーPUでしたが?
チーム体制が充実していてRB13、RB14も強力でした。
ペレスと言う新しい相棒が加わりましたが、ペレス自身もRB16Bに馴れるまで時間が必要と言っていますね。
今シーズンは、新しく移籍したベテランドライバーが数多いですが、
メルセデスのように2人のドライバーが同じ体制であるメリットも大きいかと思っています。
元レッドブルのドライバーだったベッテルとリカルドの明暗がハッキリ分かれそうです(今のところリカルドが調子良い感じです)
ペレスは自ら望んで前チームを出たのでは無いですが、1年契約とは言え上手くレッドブルホンダのシートを手に入れたので必ずチャンスを生かすと思います。
グリーンメルセデスのセバスチャンが少し心配です?
参考
YouTube(動画) ‘Have F1’s new rules hurt Mercedes’ low-rake car concept?’ by The Raceで Rake angleの変化におけるダウンフォースCG!?の前後バランス変化などのイメージV付き解説がありました。
今季は風洞の使用制限、人員削減、来季へのリソースの割り振りなのでメルセデスといえども例年のように戻って来れるのかと疑問に思っています
今まで2チームで開発を行なってたのが難しくなり、W12の改良に集中出来ないかもしれない
レッドブルはイモラで少しアップデートをポルトガルでメジャーアップデートをすると言っているので、効率良く開発を進めないと来季へ被害が出るかもしれないですね
レーキ角の差による優劣はまだ分からないと思います
ミドルレーキのマクラーレンが例のディフューザーのおかげかは分からないですが、レッドブルやアルファタウリと同等の下げ幅でだったからです
もしメルセデスが同じようなディフューザーを導入した場合問題が解決するかも…
ただハイレーキコンセプトに戻ってきたフェラーリがバーレーンでマクラーレンとバトルしていたのを見ると、やはりハイレーキが有利なのかな?
昨年マクラーレンがハイレーキに見切りを付けて、メルセデスに追従する形でフラットレーキを目指すのを方針転換してきた。レッドブルほど極端なハイレーキに戻すと言うわけでも無く最適なレーキ角度を設定する?各チームの個性が現れる所なので、このレーキ角度が正解と言うのは無いと思う?
2019年レギュレーション3年目で最後のシーズン集大成です。
ジェームス・キーが crach.net で「ハイレーキが最適解なのか見極めるには早すぎる」というようなことを言ってますね。
https://www.crash.net/f1/news/973027/1/mclaren-not-clear-if-highrake-best-solution-new-f1-rules
理論上でどちらのコンセプトに影響が大きかったのかは難しいところですが、メルセデスから出てくる「リアが不安定な様子」のコメントはこれまでハイレーキのチームに見られた「あるある」の症状で、レーキ・コンセプト以前にリアをシーリングする空力設計の部分でうまく行ってなさそうな気がします。つまり今までローレーキでは目立たなかったシーリング部分での空力技術・経験の差が出た説。
2019年にガスリーが乗っていた頃のマックスは対全車平均で-1秒、それが中盤にフロントウィング等をアップデートして、アルボンが乗ってた時期のマックスは対全車平均-1.5秒と大幅に改善しましたから、メルセデスも劇的に改善してくる余地はあるかも知れません。
やはりBの付くニューウェイさんのマシンは速い(笑)
リアデュフューザーを加速させるこのエグリが貢献してますね
パワーアップもそうだけど真正サイズゼロのPUパッケージもかなり貢献しているのでは?
バーレーンでレッドブルのマシンに起こったデファレンシャルの不具合ってのは、極端な取り付けレイアウトが原因だったりしますかね?
今年は更に上げましたからね、問題があるかもしれませんが、レース中に修正できているので、オイルやら熱やら色々な可能性があります。
何かが発生して、デフの設定を変えたのだろう。
デフはドライバーで調整可能ですから、設定よりも実際の値がずれた。そんなところじゃないでしょうか?
大問題が起こるような事は無いですよ、AVLダイナミックベンチでみっちり走った上で搭載されていますから。
幾何学的な質問なのですが、
ハイレーキで画像(リヤ後部から見た)で、アームが「への字」に垂れ下がっているのが、ストレート直線でレーキが下がってくる状態だとアームは平行になるのでしょうか?
アームの角度を保ったまま(への字のまま)リヤ車高下がるとか?
前から気になっていたので教えて頂けると助かります。
アームの角度は水平側に変化しますが、水平にはなりませんね。
メルセデスは、ストレート後半で\/にみたいになる。
なるほど。ありがとうございます
メルセデスは逆への字になるのですね。
以前モタスポGP管理者様が言われていた、
メルセデスのマイナスレーキ(フロントよりもリヤが下がる状態)
にはビックリしました。
そのメルセデスが迷走している?
フラットレーキで解決方法を模索中ですね。
既出かもしれませんが、autosportの記事で、フロア面積の縮小は「フロントタイヤ軸から180cm後方から始まり、リヤタイヤ軸前方17.5cmまでとする」というレギュレーションの説明がありました。ショートホイールベースのレッドブルの方が影響が小さかったのでは、とのことてす。
元記事 auto motor und sport誌 Nicolas Carpentier氏の翻訳記事とのことで、誠におこがましくなりますが、他に、サスペンションとダウンフォースとのマッチングによるメカニカルグリップとPU性能改善の影響についても記載しているので、レーキ角度のみで評価すると少し意図が異なるかもしれません。
また、その記事の計算の仕方の整合性が?で、確かに、フロアカット分の面積量はロングホイールの方が多くなると思います。しかし、ショートホイールベースはロングに対し元々の総面積がいくらか小さいため、各々シャシーの元々の総面積からカットした部分を引いた計算の比率でないと整合性がとれないのではないかと考えます。また、長さのみピックアップし、レーキアングルによる具体的な影響についての内容が書かれていないという印象もありました。
参考、2019年時点では, メルセデス W10とレッドブル RB15は、約7.8cmほど長さが異なり、面積比Merc 100% vs RB 約98% ?ほどであったと思います。