アルファタウリAT04は近年で最低の出来と言っていい。

2022年型AT03は最低重量+約10kgによって平均ラップタイム+0.3秒となっていたが、今年も軽くなったようには見えない挙動を示している。

空力に関してはフロアの部分的な最低高さが上げられ、その分のフロアダウンフォースを失ったようなマシンになっている。

 

大問題はダウンフォースが無くドラッグが多いと言う事。

多くのコメントご要望に応えAT04の問題点を解析します。

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ダウンフォースが無くドラッグが多い!?

https://www.autosport.com/(2023AUSGP update floor)

空力とは、物体で空気の流れを変えて、その物体に与える力の向きを変化させる事です。

空気(大気)はコース上に留まっているだけ、物体(マシン)が動く事で大気が動かされる、動かされた大気にはエネルギー変位が起こり物体にそれが伝わる。

 

マシンの周りを流れていく大気を乱さない事がドラッグを減らす事に繋がります。

(※空気をあえて大気にしたのは、その場から動かないものとのイメージが強いと思ったからです。)

 

マシンに当たった大気はその形状通りに動かされますが、強い曲率の後方には回り込む乱流が出来ます。

よく空気を引きずると言いますが、全くもってその通りです。

 

ダウンフォースはマシンやエアロパーツの下面に負圧の流れ、上面に正圧の流れがあり、それらがその後ろ側で交わる事で発生します。

 

その気流の中に乱流があったら?

 

ダウンフォースは発生せずにドラッグだけが発生すると言う事になります。

 

アルファタウリAT04が陥っている状況は正にこれで、ボディのいたるところで気流の剥離があり乱流にさらされていると考えられます。

アルファタウリAT04のドラッグはどこにあるのか?

AT03からAT04になり大きく変わったところはフロント周りです。

ノーズ下面の後方を上昇させて、先端を前のメインプレートまで伸ばしました、そしてフロントサスペンションアームの配置を変更しています。

 

レッドブルと比較するとノーズ先端から違う事がわかります。

  • ビィブの始まるライン(黄色点線)
  • フロアエッジウィングの始まるライン(黄色点線)
  • フェンスの終わるライン(黄色点線)

  • AT04のノーズ周りは最先端メインプレートの前後幅が長く、気流の上昇ラインが上向きで終わる
  • RB19のノーズ周りは最先端メインプレートの前後幅が短く、気流の上昇ラインが緩やかに終わる
  • AT04のフラップは全域で気流が上昇ラインを描く
  • RB19のフラップはノーズ周りが気流を横に逃がす形状になっている
  • AT04のエンドプレートは直線的でアウトウォッシュが不足している
  • AT04のサスペンションアーム後方取付位置はRB19に比べて前方になっている
  • AT04のフロアエッジウィングはフロントタイヤから大きく離れている
  • AT04のサスペンションアームはフェンスから大きく離れている

 

ノーズとフロントウィングの全体的な表面形状は下面形状に共通します。

AT04のフロントウィングは全体的に空気を受け止める形状になっており、後端は上昇気流を作る終わり方をしています。

ノーズ下面の前方空間は狭く負圧を上昇させる力が弱い、更にノーズ下面はただ平たいだけで気流を左右に切り分けるような形状になっていない。

 

 

RB19のフロントウィングとノーズ下面の上昇ラインは早く始まり、後端は気流の上昇を抑える終わり方、そして中央のフラップは全体的に横に導く形状になっておりアウトウォッシュを促進する。

 

ノーズの下面は極端に言えば逆三角形▽になっていて、上昇気流を左右に切り分けてアウトウォッシュを促進します。

RB18でも同じ概念を用いていましたが、RB19ではそれを強めています。

 

レッドブルは極端な言い方をすれば、ノーズから空気を左右に切り分けるようなマシンです。

空力はフロントから始まる!

AT04のフロントウィング自体はドラッグを多く発生している訳ではありません。

その終わり方が悪いのです。

 

フラップが全体的に上昇気流を作るラインで終わっており、これの後方にある全体の流れに影響を与えます。

フロントの上昇気流を下げるサスペンションアームがこれまたお粗末で全体的な前後幅が短い。

 

同じようなポジションを走る事が多いウィリアムズFW45の方がまだ頑張っている方です。

FW45のフロントウィングは前後幅がかなり長い、あまり良いとは言えない形状です。

これには狙いがあって気流を下げるサスペンションアームに出来るだけ近づけた結果なのです。

 

前からステアリングロッド、アッパーアーム前、プッシュロッド、アッパーアーム後、4つが綺麗なラインで下降気流を作っています。

FW45はロードラッグマシンであり、それはフロントからの気流を上手く制御しているからに他ならない。

AT04よりフロントからの流れに繋がりがあり乱流を抑制します。

 

 

AT04はフロントウィングの上昇気流をサスペンションアームで下げるのですが、後端が前過ぎて下げきれずに一旦途切れ、その後フェンス周りへ気流が流れ込みます。

下げる気流を作る範囲が狭すぎて感度が高くなってしまうし乱流も発生するでしょう。

フロントタイヤ乱流を外側へ弾く気はあるのかい?

AT04のフロアエッジウィングはフロントタイヤから遠く離れた位置から始まる。

フロントウィングエンドプレートは外側へ曲がっていない、フロントタイヤ乱流を外側に弾く気はないようです。

 

 

共通のフロントドラムディフレクターがある、共通なんですよ・・・ええ共通です。

共通ならその周りも他チームと似たようになってなければおかしいでしょ?

 

 

フロントの上昇気流はサイドポッドへ流れます。

サイドポッドはその上昇気流を抑え込めずに上方へ逃げているのがフロービズでわかります。

フロアフェンスの上面は形状にそって下向きに流れますが、アウトウォッシュがほとんどない事に気が付くと思います。

 

サイドポッド周りの流れの本流が上下に分かれて・・・ではその間の空間には何が流れてくるでしょう?

 

  • フロントタイヤ乱流です。

 

フロービズが全く流れていない側面は乱流によって剥離しているでしょう。

ボディの流れが剥離する事で、それを起点として空気を引きずりドラッグとなります。

 

そして、アウトウォッシュをほとんど確認できないフロービズからわかるのは、フロアエアロシールが出来ていない事に繋がります。

RB19のフェンス上面の下降ラインがバックミラーから始まっているのに対して、AT04の旧型フロアはヘルメット位置でした。

 

新型フロアでは多少なりとも前に移動させましたが全く足りていません。

 

 

 

マクラーレンでも指摘したフェンスと路面で起こるストール(チョーク)も発生しているでしょう。

フェンスの入口から出口までの距離が短く感度が高すぎる、路面側も昨年同様なら空気を逃がすような捲れもないでしょう。

まとめ

アルファタウリAT04は、今まで積み上げてきた空力概念をことごとく無視しているマシンです。

他チームは無くなったY250ボルテックスやバージボードの代替案を実行しているのに対して、全くしていないと言われても仕方が無いデザイン。

 

新しいフロントサスペンションアームのジオメトリーは、テストの走り出しでステアリングが振動しまくる粗悪品。

サスペンションが機能せずに路面からの微振動が全て伝わっていた。

 

今はどうしているか分からないが、フロントのメカニカルグリップは多分最低ランクです。

空力どうこうでは無く低速域ではメカニカルグリップが必須の18インチホイールタイヤでは曲がりません。

 

来年はフロントサスペンションもレッドブル製を買う、買えるパーツは全て買う宣言をしている事からも何が問題なのかはわかります。

基本的にF1チームが自ら開発しなければならないのは、モノコック、ノーズ、エンジンラジエーター、ホイールドラム、空力パーツ全般です。

 

 

1年遅れの中古品であれば実走データもあり、その他の開発にリソースを割けます。

 

AT04のアップデートに期待したいのはわかるけど、ノーズとフロントサスペンションアームだけはどうにもならない。

メルセデスW13みたいに後方の取付位置を盛り付けて伸ばす事は出来ないだろう。

 

 

要望に応えて分かり易く順を追った解析に努めました。

こんなにも一つ一つの流れを繋げられていないのは珍しく、根本的に実験データの間違いがある可能性が高まります。

 

重大な要素としては2022年型マシンの開発からレッドブルの60%風洞に変更している事です。

風洞の変更に加えて、スケールも50から60へ変更、アルファタウリのような小規模チームにそれらの相関を取る技術力と知見があるとは思えない。

 

レッドブル風洞はレッドブル本家ですら2017、2018、2019年の3年間で一部の流れに間違いがあり剥離していたなど、癖(くせ)が非常に厄介なものです。

開発失敗を擁護出来る大きな理由です。