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2021年F1世界選手権は、大詰めラスト2戦となりました。

前半戦はレッドブル・ホンダの優勢となっていたが、後半戦はメルセデスが巻き返して接戦となっています。

今年のマシン開発の方向性、セットアップの変化からどのようなバランスが必要となっていったのか考察してみます。

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レッドブルRB16BvsメルセデスW12

急遽施行されたフロア面積縮小とディフューザー周りの空力パーツ削減は、ダウンフォース面でハイレーキ車の有利をもたらしました。

レッドブルはフロアダウンフォースを更に機能させる為、フロント周りのアウトウォッシュ強化、ディフィーザーによる拡散強化をシーズン前半戦に次々と投入していった。

 

対して、メルセデスはディフィーザー周りの小改良で前半戦を戦う。

その後、リアウィングの柔軟性テストの変更、リアタイヤの構造変更があった。

イギリスGPでバージボード・サイドディフレクター・フロアの大きな改良。そしてレーキ角を上げるセッティングへと変貌している。

カタールで起こった最高速度の怪異

セッション FP2 FP3 Q3
ポイント S/F T1 S/F T1 S/F T1
メルセデス 304 315 306 318 310 319
レッドブル 301 310 313 323 310 319

レッドブルのFP3は、フラップに問題が無かったペレスの記録です。ミドルダウンフォース仕様で速度は伸びている。

そして、予選に向けてハイダウンフォースウィングに変更したが、メルセデスと同等になった程度で大きく速度が落ちていると感じられない結果だった。

レッドブルの主張は、いつもメルセデスが大きなウィングなのにストレートが速いと言ったものだが、自らが大きなウィングに変更したのにも関わらず同等だという事実。

ここからわかる事は、車高とレーキ角によってドラッグは調整可能だと言う事。

レーキ角制御がポイント

メルセデスがリアサスペンションで大きく車高を落とす事に注目され過ぎているが、レッドブルもそれを過去数年にわたり行ってきた。

今年は、それを上手く生かせていないと言う事が浮き彫りになったカタールだったと思う。

 

メキシコで見せた快走からもわかる通り、それらを最大限に使用した時のダウンフォースは計り知れない、引き換えにドラッグが大きく増えてしまう諸刃の剣。

ハミルトンが、クルマのセットアップは非常に困難だと言っている事からも、全てはバランスの上に成り立っている。

レーキ角 1.0° 3.0°
フロントウィングDF +39.28%
フロア&ディフィーザーDF -4.1%
ダウンフォース総量 -1.7%
フロントエアロバランス 43.40% 53.1%
ドラッグ総量 +15.82%

この表の数値は、1.0°のレーキ角マシンを3.0°にした時のCFD実験によるものです。

速度上昇→ダウンフォース増加→レーキ角の減少→ドラッグ削減、この流れを上手く使いこなす事が重要となる。

レーキ角をシーズン中に上げていったメルセデスに対し、専用設計のレッドブルの方が上手く対処出来ていない事が多い。

まったく曲がらないメルセデスのリアウィング

これはフェルスタッペンに並びコースアウトした時のハミルトンのリアウィングです。

メインプレーンの後ろの頂点は、スリップとDRSで330km/hでている高負荷で変化無し、速度差27km/hあったんだとのホーナー氏のコメントにも・・・当たり前だろと言いたいわ。

 

ウィング全体が全く下がらない事もわかり、フレキシブル性が全くない事が逆に凄い。300km/hを超えてからメインと右エンドプレートに隙間っぽいのが出来る。

この角は一番負荷がかかるところ、エンドプレートの後ろが内側に曲がる事によって起こると推測される。

[ |⇒  (  ]←こんな感じに、これが常用されていて圧力を抜けるとしたら? 多少なりともドラッグは減るかもしれない。カメラアングルの関係で左側がどうなっているかわからないので推測に過ぎないです。

ホンダPUvsメルセデスPU

ホンダが投入した新骨格エンジン、高圧縮型でシリンダーの爆発力をクランクシャフトに多く伝えるものだった。

テストから素晴らしいパワーを発揮、エネルギーマネージメントも改善されメルセデスに匹敵する性能を見せている。

 

1基目を6戦目までフルで使えるマイレージ、コンパクトで素晴らしい出来だと思う。

2基目には信頼性アップデートが施されて、フランスGPでの優勝を含む5連勝に貢献している。

 

メルセデスは2月頃にエンジンの信頼性に問題を抱えてるとのニュースが実はあった。

これは1基目から起こっていた可能性があるが、イギリスあたりからパワーマッピングを使用してレッドブル・ホンダとの差を逆転してきた。(メルセデスの信頼性問題は2019年フェラーリに対抗するべく開発を推し進めた事が原因とされる?)

しかし、その代償はマイレージを大きく削り、昨年まではありえないペナルティを伴った新規投入を増やしている。

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上の表は、レースにおいて各ギアで使用しているエンジン回転数の中間点を数値化したものらしい。

簡単に言えば、エンジンの常用回転域の高さを示すものとなる。

メルセデスが速くなったイギリス、そしてハンガリーでのハミルトンの速さに呼応した結果になっているのがわかる。

 

ブラジルで圧倒的な速さがあったハミルトンだが、驚くべきことにエンジンの常用回転域が大きく下がっている。

元々高すぎるぐらいの回転域を使っていたメルセデス、高回転高負荷状態がエンジンにダメージを与えていたのを修正した可能性が高い。

予選時の各ギアの最低と最高回転数を表にしてみました。ブラジルのハミルトンは確かに下がっています。

カタールでは4基目だったとの事なので納得の数値かな。

 

次にフェルスタッペンを確認してみます。

ホンダはどのサーキットでも7,8速の使い方が変わりません。アメリカの落ち込みようは・・・3基目なのかな?

カタールは、かなり頑張っていたような回転域となっています。

まとめ

メルセデスは、レッドブルのようにレーキを上手く使ったセッティングをして来てから、コーナーで速くストレートでも速い状態を作り出している。

レッドブルは、この分野において先駆者としての強さがあるはずなのだが、タイヤの温度を理想の状態に出来ず迷走する事が多くなっている。

推測に過ぎないが、やり過ぎたリア周りの空力が関係しているだろう。

 

リアロアアーム後ろをかなり角度のついたウィング形状にしていたり、ディフィーザーエッジの鋸歯状化によるドラッグなど、リアの上下動に対する変数が高すぎると思う。

それでも決まった時は速い、これはどちらのマシンにも言える事です。

 

ラスト2戦、ジェッダ、新ヤスマリーナ、どちらも全開率が非常に高い。

ハミルトンは5基目をセーブしているのは確実、エンジン面では有利だと思われる。

ホンダも昨年の最終戦で見せたようなギリギリまで追い込んだ状態で使ってくるだろう。

 

パワーとドラッグのトレードオフ、それをマシンセッティングに生かし切り、タイヤを機能させたチームが勝つ。

得意不得意サーキットが、今までのデータと違ってきていて全く予想のつかない展開です。

 

以上、どっちが強いかは結局わからないのです。