2022年F1日本GPが終わりました。

今年初めて鈴鹿サーキットでF1エンジンの生音を聞いた方も多いと思います。

 

NAのような甲高い音では無いけれど、とても迫力ある音だったと思います。

そんな中でもフェラーリエンジンがコーナー立ち上がり時に、音色が変わる事に気が付いた方も多いでしょう。

 

今回はその理由を解説します。

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タービンにはウェイストゲートがある

タービンにはウェイストゲートバルブが付いており、高い圧力がかかった時に壊れないようにバルブを開けて圧力を逃がします。

あらかじめ圧力の値が決まっていて機械的に勝手に開くようになっています。

但し、これは一般的なものに言及されます。

 

F1の場合は、全てが電子制御です。

 

F1の場合、排気エネルギーを無駄なく使うためにモーター(MGU-H)があり、圧力を逃がす必要が無く全てを回生できる設定になっています。

エネルギーを極端に分割して例えると、タービン(100%)=MGU-H(50%)+コンプレッサー(50%)と考える事が出来ます。

ウェイストゲートバルブは電子制御され自由に開閉位置を変更出来ます。

 

さて何故ウェイストゲートを開けるのでしょう?

ウェイストゲートオープンでエンジンパワーを最大化する

F1のNAエンジンが好きな方ならわかると思いますが、普通ならエキゾーストは直管です。

排気抵抗を極力少なくする事で高回転域のパワーを上げます。

 

ターボエンジンはタービン自体が排気抵抗になっていて、エンジンにとっては邪魔者なのです。

そこでウェイストゲートを開けて排圧を下げます、それでは空気を圧縮するコンプレッサーのエネルギーが不足するのでMGU-Hで補います。

 

俗に言うe-Boostを行うのです。

ホンダF1のテクノロジー (モーターファン別冊 – モーターファンイラストレーテッド )86ページより

 

e-Boostを行う時、排気圧は低くなりますがタービンを少しだけ回せる力はあります。

これによるエンジンパワーの増加は約20kw(約26.8hp)と試算されています。

ウェイストゲートパイプ位置の変化

ウェイストゲートパイプは2021年まで、下画像のようにエキゾーストパイプとは別になって大気に放出されていました。

これによりウェイストゲートオープン時には音量の変化が顕著にわかったのです。

 

2022年からはエキゾーストパイプに繋げて大気に放出する規定に変わりました。

この規定変更によりウェイストゲートオープンによる音色の違いは非常にわかりにくくなっています。

フェラーリのウェイストゲートオープンがわかりやすい理由

フェラーリPUはエキゾースト規定の限界を突き、ウェイストゲートパイプの繋げる位置を出来る限り後ろにしています。

これのメリットは、ウェイストゲートオープン時にエキゾースト全体の容量が増加する事、2021年までとほぼ同等な性能を獲得すると思われます。

デメリットは重量面、スペース面となります。

ウェイストゲートオープンの違いが分かる動画

2017年までの音、パワーが欲しい低速加速時に音色が変わります。

2017ホンダのウェイストゲートオープンが少ない、この頃はそれどころでは無いからですねぇ。

 

 

2021年ハミルトンのオンボード、マイクの位置によってはこのようにはっきりとわかります。

 

 

2022年フェラーリだけ音色が変わる、はっきりとわかります。

他のエンジンも低速コーナーからの加速ではやっていますが聞こえない、今年のフェラーリは速度域に関係なく結構聞こえるんですよね。

それだけ加速時にパワーを上げている(エネルギーを使っている)、よってストレートエンドでデプロイ切れ設定になります。

 

フェラーリは加速が良いですねぇ~と解説がよくありますよね。

向きが早く変わりスロットルを踏むのが早い事もありますが、パワー設定やエネルギー設定がそうなっているんです。