開幕戦が終わっただけですが、チャンピオンチーム・レッドブルと追うチームの差は歴然だった。
メルセデスのコンセプト間違い、フェラーリのリアの不安定さとタイヤ摩耗の酷さ。
昨年、現規定に必要な事を解析してきましたが、新車発表時にダメだと感じていた事が現実となっています。
レッドブルを追うべき2チームの失態は非常に腹立たしい事です。
アストンマーチンの快走はこれに対応出来ている事に他ならない。
マクラーレンもフロアエッジ+15mmへの対応が約4週間遅れたとインタビューに答えている。
フロアエッジに起こった変化
フロアエッジの最低高さは昨年までZ=0(マシン底部の基準面)でした。
今年からは以下の画像のようなイメージになります。
車高が上がる事でも正圧空気が入り込むフロアエッジ周辺、それが15mmも上昇させられました。
レッドブルは昨年からこの分野で一歩抜け出ており、特定のバンプサーキットでは無類の強さを発揮しています。
レッドブルが2021年まで採用していたハイレーキセッティングは、フロアエッジのエアロシーリングがポイントでした。
Z=0まで下げられたフロアでも、それは変わらずに必要な事だとわかったのが2022年の驚きでもあった。
イナーターや油圧ヒーブを失った影響が非常に大きかった。
油圧ヒーブはダウンフォース荷重量が設定値に達すると車高を下げてそれを維持、振動などの不確定要素はイナーターが機能して上下動を緩和していた。
2022年規定サスペンションは、ばね要素の非線形レートが禁止、荷重量に対して線形レートで伸び縮みするので、速度によってリニアに車高が変化します。
速度が上がれば上がるほど車高が下がりフロアの負圧が増加してダウンフォースも増加する。
そして大問題となったバウンシングが起こるきっかけになります。
それを回避しようと車高を上げればフロア機能が低下、トンネルのキックポイントを高くしてもフロア機能が低下。
約300km/h以上で発生する最大ダウンフォースを減らそうとする試みは、約200km/h以下の速度で必要なダウンフォースが得られない状況を作り出しています。
レッドブルはなぜ車高を高くして速く走る事が出来たのか?
それは気流によって作り出された疑似的な壁をフロアエッジにまとわせていたからです。
他チームもこれを行っていますが、レッドブルのものはそれが強く機能性が他を圧倒している。
フロアとディフューザーの流れ
フロアで加速された気流はディフューザーの傾斜を上がっていきボディを流れてきた気流と合流します。
流れと流れが合流して初めてエネルギーの循環の条件が満たされ、その間で発生した圧力差が力の向きを決定付けます。
(フロアダウンフォースを失うとは、フロアを流れてきた気流がディフューザーの傾斜を上がる事が出来ず、ボディを流れてきた気流と合流できない為に起こるのです。)
ディフューザーの下方には、マシンサイドから空気が流れ込んできます。
この流れ込んでくる空気は、タイヤの後ろに流れ込んで発生する乱流と同じように損失扱いになります。
2022年より大型化されたディフューザーの上昇するポイントは、リアアクスル前方700mm~350mmの間から始まります。
一番前から傾斜を始めればディフューザーの効果は高まりますが、その分流れ込みが早まります。
ディフューザーが機能するには、この流れ込みが必要です。
矛盾してますね。
損失となる流れ込みが早すぎるとフロアの綺麗な流れを破壊します。
※この画像のフロアエッジとディフューザーは何の対策も無いオーソドックスなものなので、キックポイントのすぐ後ろに流れ込みが発生しています。
ディフューザーの傾斜を上がるフロアの気流を邪魔しない流れ込みが必要となるのです。
ディフューザーの前の小さな切れ込みは、
- ディフューザーの側面が路面に接触して流れ込みが停止しない為
- 車高変化の影響を受けずに流れ込む空気を安定させる為
- 流れ込む位置をキックポイントから離した位置に固定する為
などと考えられます。
フロアエッジエアロシール
2020年までフロアエッジにあったスリットは、アウトボードから下方へ流れを導き、フロアエッジから路面へ向けて流れを吹き出すような形状をしていました。
※今見てもこの動画は凄い、コクピットから漏れた煙がサイドポッドを下りアンダーカットの流れと合流、アウトボードフロアを流れ、スリット辺りで渦巻き、リアタイヤ外側まで流れる。
2021年にスリットは禁止されましたが、代わりにアウトボードに多数のボルテックスジェネレーターを配置してこれを再現しています。
2022年からアウトボードにボルテックスジェネレーターは配置出来なくなりました。
路面側へ落とす様な流れを作り、それを強く持続させるにはどうしたらいいのか?
流れを外側へ下側へ移動させる。
それって広いアンダーカットの事じゃないか!
フロントタイヤロックのスモークが外側へ押し出されているのが分かります。
しかもこれはマシンがイン側へ少しだけ向いているのにこの状態を作っています。
フロアエッジ付近には濃い煙がありません。強い気流が煙を弾いています。
とりあえずダメな例は以下
AMR23のフロービズ
アンダーカット内でしっかりと下がる流れが確認できます。
フロアエッジ付近にも下がる流れがあります。
RB19のフロービズ
RB19のフロアエッジは隙間のある長いセクションがあります。(レギュレーションでは離れたセクションが二つ許されます。)
その隙間に流れる軌跡が見えます。
発生しているボルテックスをイメージで示しました。
このような回転方向でフロアに流れ込もうとする空気を防ぎます。
レッドブルとアストンマーチンは共にこのフロアエッジ辺りに流れる空気量が多くなる事も特徴の一つです。
開けたこのエリアはフロアのように空気の行き場が失われる事はありません。
アンダーカットで外側へ下側へ空気が移動していると言う事は、その周りの空気をも押し出している事になります。
レッドブルのタイヤスモークが路面を這うよう流れている事でもそれは確認できます。
RB19&AMR23&SF-23のサイドビュー比較
フェラーリを見ると、アンダーカットで下げた強い気流がディフューザー上面方向へ流れてしまうのがわかります。
レッドブルとアストンマーチンはその気流を抑え込む為にサイドポッドの側面が垂直ではっきりと通路が別れています。
(似たような形でもここまではっきりと分かれているのはRBとAMRだけ)
この表面的に見える部分だけで、フロアエッジエアロシールが強くなる訳ではありません。
フェンスから始まるフロアの形状との融合が一番大事な事です。
まとめ
フロアフェンスやエッジで作られるボルテックス、それをフロアエッジの形状で持続させます。
それだけでは、ディフューザーの上面に引き込まれるので、サイドポッドの後端を伸ばしアンダーカットをロング化してサポートする流れを作ります。
サイドポッドの側面はギリギリまで外側に張り出して空気を外側に弾きます。
サイドポッド全体を使って、外側に下側に空気を移動させているのです。
それが、アウトボードフロアから路面側へ吹き出すような流れを作り出し、ディフューザーへの流れ込みを出来るだけ遅らせる。
これら全体的な流れのエネルギーが他チームよりも多い為、車高を高くしてもディフューザーの機能が安定している。
そして、フロアダウンフォース全体が安定していると考えられます。
フェラーリはせっかく作ったアンダーカットからのフロアエッジ上面の流れをディフューザーへ引き込んでしまっている。
これではフロアエッジボルテックスやエアロシールが不安定になり、結果的にディフューザー機能が不安定になると思われます。
ディフューザーの機能が不安定になる事は、繋がりのある流れ全てが影響を受けます。
戦うフィールドが同じでリアが不安定なマシンは、この辺りが一つの見極めるポイントになります。
ただただRB風アンダーカットにしてみたでは、最大限の機能はありません。
今後のGPで気にしてみて下さい。
ニューウェイ先生の脳内風洞は本当に素晴らしいですね
一方で最大のライバルになる予定だったフェラーリは2戦目にしてルクレールのCEが3個目になりグリッド降格
ICEやMGUH系は去年から改善したのでしょうが今年は電気系…
また何か電気系でゴニョゴニョしてるのですかね?
この記事で指摘されている問題を解決すればバスタブ型も良いコンセプトだと思います
まあビノット派の離脱やCEOの過干渉で去年より酷い御家騒動してるらしいのでそれどころではないのでしょうけど
フェラーリ復活には赤いベネトンの再現しかないですかね
グラウンドエフェクトカー(ウイングカー)は、今も昔もサイドシールが肝心であるのは変わらない。
ただ昔のウイングカーは、平板プレート構造体によるスカートを地面に接触(擦って引き摺りながら?)させる事で密閉遮断させていた。
そのスカートが外れたり動かなかったりすると大変な事になるので一旦ウイングカーが禁止されてフラットボトムカーやステップボトムカーに変わった。
現在のグラウンドエフェクトカーは、スカートが使えないけれども一種のエアースカートみたいなモノですね。
少し気になるのが、メルセデスの動きで、彼らはすでにこの辺りの課題対策は出来ていて、まだ出していない気がしています。
なぜ出し惜しみをしているのか、多分ですが、RBの風洞制限でかRBが追加開発できないタイミングを見計らっているのではないかと思います。24,25年のアドバンテージを得るために、今は13Bでしのいでいる。そんな気がします。
メルセデスがどの様な対策をしてくるのか?
ヨーロッパラウンドが始まればわかります。
気長に待つ事にしましょう。
毎回すごい記事なんですが、今回は私のような空力よくわかってない人間にも滅茶苦茶良く分かりました。
すると、アストンの開発がうまくいくと、RBとアストンの争いもあり得ますね?
あと、アルファタウリのダメ出しも読んでみたいです。
ありがとうございます。
文章と画像だけで理解してもらう為に、必要なものを組み合わせました。
アストンがRBに迫るのは、、、今は言及を避けましょう。
アルファタウリのだめ出しは今後やるつもりです。
サイドポッド見ても一回り小さくて、流れに対してどっちつかずなところとか色々あります。
つまり、フェラーリはコークボトルの考え方を変えないと、せっかく作ってる効果が発揮されない。って事ですね。
あれを修正するには、マシン全体のバランス変えないとダメな感じがしますが、何処かで修正してくるとは思ってます。
ピンクゾーンに送りたい気流がディフューザーの方向へ引っ張られる。
フロアエッジ周辺の流れも引っ張られる。
サイドポットの側面がレッドブルと逆なのがわかりますね、そういう事です。
フェラーリがやったセッティング、フロアを路面に近づけるため基本車高を下げる、稼働が狭まった上下動に対応するためサスペンションを硬くする。
それによりバンプでバウンシングが止まらない。
サスペンションが硬い為タイヤが摩耗する。
サイドポッド上方に大きな溝を作るアストンとそうではないレッドブルではどちらが最適解か(あるいは違いはないか)が楽しみです。
溝を掘るタイプの方がアルピーヌ始め人気みたいですが。
バスタブフェラーリはハース以外のフォロワーがいないので、形勢不利ですがみんなレッドブルかアストン形状になるのもつまらないので、バスタブ勢には頑張って欲しいです。
メルセデスは、、、、なんでしょうかね?2013年以前のヘッポコアエロに戻ってしまったようです。結局PUパワーに頼って、エアロダイナミシストのリクルートに失敗したんでしょうかね?
去年まではサイドを細くするソリューションはマクラーレンやウィリアムズもいましたけど、今年まで引っ張ったのはメルセデスだけですし。
かえすがえすも去年トトがやれ「どこそこはフレキシブルフロアだ」とか「ドライバーの健康が」などと言ってルールを変えさせなければ、もう少し戦力が拮抗してたと思うと本当に残念です。
お陰でエアロシールの技術的ノウハウを最も備えたRBが突出した速さになってしまった…
しかも当のメルセデスは変えさせたルールに自分達が苦しめられる始末。
策士、策に溺れるとはこの事、トトはもっと正攻法で立ち向かう事を覚えた方がいいと思います。
「ディフューザーの傾斜を上がるフロアの気流を邪魔しない流れ込みが必要となるのです。」というのが難しいポイントなんでしょうね。
ただそれをクリアすることが車高・サスペンションの設定、さらにはメカニカルグリップやタイヤの使い方に繋がるというところでしょうか?
多分メルセデスやフェラーリもディフューザーの効率化を最大の目標としているという点では、レッドブルと同じなのでしょう。しかし、そこに落とし穴があるのがこのレギュレーションのように感じますね。