イギリスGPに待望のアップデートが施されたメルセデスW12、イギリスGPでは予選1位となり優勝、次のハンガリーGPでは予選1位で決勝2位となり結果を残している。
何より重要な事は、新しい空力とマシンセットアップの最適化のために、自分には必要無いと言っていたハミルトンがシミュレータ作業をしたというところ。
イギリスGPでは、土曜の朝にファクトリーに戻りシミュレータに乗っている。
新エアロパッケージは0.2秒の改善
フロントウィング、バージボード、サイドディフレクター、フロアなど見える部分の改良、私たちには見えない部分のエアロパーツを調整している。
ハンガリーGP後トト・ウォルフ氏は、多くのグリップを見つけたと言っていた。
とあるメルセデスのエンジニアは語る
「それは本当です、私たちはまだそれを見つけています。それはアリの仕事です。
まず、フロントウィング、フィン、アンギュレーションをいじくり回します。それから、車の残りの部分の詳細をいじくり回し、同じ量のドラッグを生成しないダウンフォースを探します。
しかし、それでも、それは常にストレートを傷つけることになるいくつかのドラッグを生成するため、マッピングを修正するという考えがあります。
ダウンフォースで車を埋めるのは非常に簡単で、コーナーで見栄えがしますが、ストレートがまったくないため、このバランスは非常に敏感であるため、常に困難で徹底的な作業です。」
※アンギュレーションとは大まかに姿勢の事で、F1の場合レーキ角の事を表すでしょう。
フロアダウンフォースやディフューザーを生かす為に、その手前で空気の流れを曲げる、その行為にはドラッグの発生がつきものだと言う事です。
レーキ角も微妙に増えたような印象がある。
ここで興味深いのは、それに対応するためにマッピングを変更すると言う発言です。
エンジンとERSマッピングの改良
イギリスGPからメルセデスのパワーが上がったように見えるが、ピークパワーを上げる事は出来ない。
メルセデスは開幕からストレートエンドのディレート(MGU-Kサポート切れ)問題を抱えていた。
とあるメルセデスのエンジニアは語る
「それは良くなりました、しかしそれはパワーが供給された場所と方法であり、それの増加ではありません!」
「ブリックスワース(メルセデスHPP)の人々は、ホンダがアップデートでより多くのパワーを解き放つことを私たちが知っていたポールリカールの前から新しいマッピングに取り組んでいました。
これで、シルバーストン以降の全てのトラックにプログラムされたオリジナルとは異なる新しいマッピングができました。」
「いつものように、私たちのパワーはかなり直線的ですが、私たちの最大の問題はターン出力であることがわかりました。
ホンダは低回転と中回転で私たちの前でスリングしていました。
ブリックスワースの人々がしたことは、燃料流量100kg /hの限界までのエンジンの出力と、これらの回転での電力の放出の両方を変更することでした。」
これらを簡単に言うと、ドライバーが加速し始めると直ぐにパワーが出るようになるが、ドライバビリティは悪くなる。
※とあるメルセデスのエンジニアの発言は、いつも内部情報でお世話になっているこちらから引用しています。
ターン立ち上がりでフルパワーを解析した動画
エンジンパワー最大+MGU-K最大+Eブースト最大(ウェイストゲートオープン)=パワーユニット最大出力
まとめ
メルセデスPUは、これまでスロットル開度に対してパワーカーブグラフが直線的で、ドライバビリティ重視のセッティングだった。
それを行うにはターボエンジン特有のラグを解決するために、Eブーストや100%未満のスロットル開度に対してもMGU-Kサポートを行い電力を消費していた事になる。
これらの部分を大幅にカットする事により、ストレートエンドまで続くデプロイを確保したものと思われる。
Google翻訳の関係で意味が解りにくい「ホンダは低回転と中回転で私たちの前でスリングしていました。」
これは多分ホンダ特有のスロットル開度が100%になるまでは、電力サポートせずに回生するエクストラハーベストモードの事を表していると思う。
今まで必要としなかった回生方法をメルセデスがホンダから学び取り入れたと考えてもいいかもしれない。
メルセデスの空力とマッピングの重要なアップデートは、どちらもレッドブル・ホンダ由来である。
対戦相手の良いところを学び取り入れて、自らのフィールドで最適化して力とする。
チャンピオンチームメルセデスの底力恐るべしと言ったところです。
レッドブルはハンガリーでドラッグが多すぎて低迷、パワーとのバランスを見失っている。馬鹿みたいにデカいフロントブレーキダクトやドラッグが強すぎるリアウィング(金曜日まで)を使っていた。
フロントエンドの鋭さが消えた空力を最適化する必要があるが・・またやっちまってないか?フロントウィング問題。
メルセデスは今後大きなアップデートは無いが、空力の微妙な最適化は続ける。パワーユニットに関しては予算外なので、年間各5回まで許されるエンジンとERSモードのマッピング開発は続くだろう。
ホンダのERSエクストラハーベストモードは、MGU-HのON・OFFを20~40Hz(20~40回/秒)行っていた。
TD/018-20のERSシステム用の新しい暗号化IVTセンサーにより、その回数が制限されたと推測されます。
2020年開幕時MGU-Hが回生不足になった一つの要因となると思う。
いつも興味深い話を有り難うございます
素朴な疑問ですが、エクストラハーベストモードで4MJの内、どれくらいカバー出来るのでしょうか?
流石にそこまではわかりません(笑)
ラップあたりに使えるエネルギーは4MJではなく、ラップ中に回生されるエネルギーも含まれます。(ES→MGU-Kが4MJ)
フルスロットル状態におけるMGU-Hの回生エネルギーは、ほとんどの場合直接MGU-Kに使われます。
予選ラップにおいてですが、チャージラップで最終コーナー立ち上がり時点では満タン4MJでアタックラップに入ります。
ストレートは、Kで毎秒126kw(変換固定比95%)消費されていきます。
実際のところMGU-Kが出力しているエネルギーは、ESからの4MJ+MGU-Hの回生エネルギーとなります。
パーシャル回生やエクストラハーベストは、前進するための燃料をエネルギーに変換している、いわば発電機状態となります。
燃料に余裕がある予選時しか使えない設定となっています。
今シーズン最初で最後のアップデートで、最終戦までメルセデスが戦うかどうか?
レッドブルホンダが迫ってきて最後までタイトル獲得が決まらないくらい接近するようであれば、もう1回だけアップデートさせる可能性もあるかと?
どちらのチーム(メルセデスとレッドブルホンダ)どちらのドライバー(ハミルトンとマックス)が王者になったとしても2019年、2020年のような圧倒的差を付けて早く(残り数レース残して)タイトル決めるような事にはならないと思う(どちらかも諦め無ければ)
新構造タイヤの影響はあるでしょうか?
リアタイヤの新構造は、他のチームからもクレームじみたものが無いですし、特に影響が無いと思います。
仮定ですが、角の柔軟性が上がった→設置面積が微妙に増加→リアグリップが微妙に上がった可能性は否定できません。
ご説明頂きありがとうございます