新レギュレーションが始まった2022年、様々なソリューションを分析してきました。
主にトップ3チームのマシン比較に注力してきましたが、三者三様で非常に面白い状況でした。
コンセプト・空力・サスペンション・ホイールベースライン・ギアボックスなど、ある程度材料は揃ったと思っています。
今回はフロントウィングとノーズの有用なソリューションを確認しましょう。
フロントウィングとノーズ
フロントウィングとノーズは空力の始まる起点です。
ここを間違うと全ての見直しを行わなければならず、それはコンセプトの変更と同じ意味、シーズン中に行う事はほぼ不可能です。
- フロントウィングの最先端は全ての位置で最低高さを保つ
- フロントウィングフラップの最上部の曲率は低い方が良い
- フロントウィング底面の中央部は路面側から空気を吸いだす様なディフューザー型が良い
- 上記の条件を満たすノーズデザインが必要
レッドブルとフェラーリは、今までに何度も解析してきたので他のチームを見てみましょう。
アルピーヌとアルファロメオのフロントウィング底面
アルピーヌは中央部分がディフューザー形状になっていますが、ノーズ底面は上昇する気流を遮るように平面になっています。
アルファロメオもディフューザー形状になっていますが、ノーズ底面までは手が加えられていません。
メルセデスのフロントウィング
メルセデスのフロントウィング底面の中央部は、凹んだ形状をしていない事に気が付きます。
フラップ最上段の盛り上がるところの下に凹みがあり、左右にディフューザー形状が分かれています。
路面側からの空気を吸いだす量が、レッドブル・フェラーリ・アルピーヌ・アルファロメオと比べると少ないのは明らかです。
フロントウィングとノーズで作るダウンフォース
ダウンフォースとは何か?
圧力差によって発生するエネルギーの差がダウンフォースの強さです。
ウィングは上面に高圧ゾーン、底面に低圧ゾーンがあり、そのエネルギー差によってダウンフォースを作ります。
非常に簡単な図式で説明すると、
- DF:20 = 高圧 10 -(低圧▲10)
- DF:20 = 高圧 8 -(低圧▲12)
このように同じダウンフォース量を作り出すが、高圧ゾーンが高いとドラッグが多くなる。
フラップでダウンフォースを稼ぐ、メルセデス・アルファタウリ・アストンマーチンのフロントウィングには、この図式が当てはまります。
フラップ角度を付けすぎると気流が上がりすぎて、その後ろのマシン全体の空力に影響を与える。
マシンを運用する現場エンジニアにとって嫌なジレンマです。
まとめ
空力の起点であるフロントウィングとノーズ、そのコンセプト間違いはシーズンを通して足枷になります。
ノーズはクラッシュ構造のため予算制限下で、作り直すのは難しい。
フロントウィングとの接続部分が非常に重要。
メインプレート中央部分の後方を上げれるデザインになっていなければいけません。
レッドブルやフェラーリは、ディフューザー形状+それを生かすノーズ底面の形状になっていて一歩も二歩も進んでいる。
他チームはこれに追従するか、新しいソリューションを見つけなければなりません。
表面上の違いのみならず、底面が凄く大事なF1の世界です。
なるほど。
高圧ゾーンを低くして如何にダウンフォースを得るか?が重要なんですね。
その為のフラップだけに頼らないディフューザー形状。
ところで、メルセデスのフロントウイングのセパレーターが正式に禁止決定されたようです。
まぁ来年のマシンは、フロント周りについてはJINさんの解説の通り、必要ななソリューションが確立されてるので、セパレーターは必要無くなるでしょうけど。
トトがw14の見た目は、W13とあまり変わらないと言ってますが、恐らくいつものプラフだも思ってます(笑)
簡単な計算式にするとわかりやすいダウンフォースの概念です。
レッドブルは表面上、何処に高圧ゾーンがあるのかわからないぐらい無い、ドラッグが少なく300以上で伸びる理由です。
メルセデスのサイドウィングを防ぐ規定が、私もわからない。許してしまうのか?FIA?
おっしゃっているのは、メルセデスがマイアミGPで投入した、翼端板とフラップをつなぐ部分での細工のことでしょうか?でしたら、2023年は禁止されるそうですよ。
いえ、サイドボットのミラーウィングの事です。
あんなの禁止にするはずなのに、明確なレギュレーション変更点が見当たらない。
メルセデスのサイドウィングは当分泳がせておいて、早くなってきた頃に禁止にさせるのだよ()
初歩的な質問ですいませんが、
今シーズンのF1マシンはレギュレーションでフロントウイングのフラップエレメントと地面の隙間が大きくて高い位置に有りますね?
それでもダウンフォースを稼ぐ設計になっているのが驚きです。
素人考えではウイングが地面に近ければ近いほど負圧が高まって効果が大きくなる?と思っています。
ブレーキングした時にフロントが沈みこんで(ノーズダイブ)
フロントウイングが地面に近づいて隙間が小さなると思うのですが?
ブレーキングの最大Gは5、ステアリング切り始める時は2G以下、速度の減少と共にフロントは上昇しノーズダイブと呼べるほどの挙動はありません。
油圧サスを失ってフロントは低速コーナーのターンイン時には上がってしまいます。
メルセデスを良く見ればわかりますが、逆レーキになっていますよ。
ちなみに今年のフロントウィングZ=100mmではグラウンドエフェクト効果はほとんど無いらしいです。