2020年の新F1マシンがプレシーズンテストで走りだし、ナローノーズとケープを導入したマシンが増えました。今のところナローノーズは半分の5チームが導入し、ケープは全チームが導入しています。昨年からフロントウィングにあった空気をマシンサイドに強制的に流すカスケードが使用禁止になり、F1マシンの空力コンセプトは大幅に変わってしまった。
今年は1年間の実戦データを元にチームの答えが揃いだす時です。2017年からメルセデスが導入しているナローノーズとケープの組み合わせ、2019年にマクラーレンが導入し、今年はレッドブル、ルノー、レーシングポイントも導入している。
トップ3チームの2チーム、ミッドフィールドの上位チームが導入したコンセプトとなった事からも、最新レギュレーションの答えと考えて良いと思います。
ナローノーズ&ケープ
ナローノーズは、まず第一にクラッシュテストを通過するのが難しくなる、ただでさえ現在のF1はフロントウィングのなるべく後ろにノーズが取り付けられるショートノーズとなっています。細くて短いノーズで、クラッシュテストを合格する強度を確保できる技術が必要になります。
テストでは空気の流れを可視化するためのフロービズが使われています。レッドブルは視認できないフロービズまで投入しています。先ずはノーズに当たる空気がどのように流れるか知っておきましょう。
Now they are some tidy flow lines on the @redbullracing, cunningly not using luminous flow viz, but then flagging up there was something to hide by standing in front of the car #f1tech #F1Testing pic.twitter.com/WNTYFLKAvw
— Lawrence (@Butch_on_Racing) February 21, 2020
これを見る限りノーズに当たるほとんどの空気は側面へ流れていくのがわかります。斜面を登る様に流れる空気は一部であり、ナローノーズでは 、空気を左右に切り分ける効果が増加します。
反面幅の狭くなったウィングステーによってノーズ正面からの空気は不安定になる。その空気を整流してTトレイに向かって流すためにケープが存在します。レッドブルとメルセデスのケープは前端がせり上がり、下面へ空気を導くようなデザインになっている。
レッドブルのノーズの先端の穴はノーズの規定をクリアしつつ、正面からの空気を減らしたくないための巧妙なデザインです。
赤丸の部分は同一のフロービズ、ノーズ先端のあの穴はケープの上面へ流れる。青丸はSダクトですが、流れが悪くなった空気を吸い出しコクピット前に排出します。
メルセデスのケープの全容ですが、小型のフロアに見えませんか?上面は遅い空気の流れがあり、下面は路面に近く速い流れの空気があります。
そしてケープの下面にはボルテックスジェネレーターがついています。ノーズの後ろに回り込む遅い空気を遮り、下面を流れる速い空気の流れを守るもの、それが私の考えるケープの概念です。
フロービズは空気の流れが悪いところに濃くたまる傾向があります。流れが悪い=流速が遅い=圧力が高いと考えられます。
マクラーレンのフロービズを見るとノーズ側面を流れる空気が、何処に多くぶつかっているのかがわかります。注目すべきは赤丸の部分です。メルセデスを見てみましょう。
空気が多く当たるであろうポイントに穴がありますね。これはもしや冷却用と言うよりは遅い空気の流れを取り除く効果もあるのではないだろうか?サイドポッド用のSダクトなのかもしれませんね。
ナローノーズのCFD解析2018年Ver
メルセデスが2017年~2018年にかけて導入したナローノーズ、その時点でCFD解析しているサイトを見つけました。如何にしてフロントタイヤウェイクを、マシンから遠ざけるのかが非常にわかりやすく説明されています。
Sダクトの効果
ノーズ先端のステーとフロントウィングのY250エリアを通った空気は遅い乱流となり、そこにノーズ上面から回り込んでくる乱流も加わります。それらをNACAダクトで吸い出して空気を整流するためにSダクトがあります。
CFD実験の画像を見るとノーズ先端を通った空気は遅くなり、Sダクトによって速い流れに戻す事ができます。
まとめ
ノーズ先端は凸型で空気導入口が広い方がノーズ下の空気の制御は楽になるが、ナローノーズで左右から空気をノーズ下に導きケープで整流する方が、結果的にTトレイへの空気量を増加・安定させることが出来そうです。
ケープの両端ではボルテックスも形成され強い気流を作り出す事ができます。ボルテックスは周りの乱流を吸い込みながら流れるため効果は増強されるでしょう。後方には垂直版のようなキールが取り付けてあり、ノーズ下周りの空気を3分割するような構造になっています。
ケープは通常のノーズでも使えるものだが、2017年メルセデスがナローノーズと共に導入したように、その二つは非常に相性が良いと思える。また、ここまで完全に空気の流れを決めるという事は、ノーズの上下動を安定させる必要がでてくる。メルセデスがフロントを固め設定にしているのはある意味正解なんだろうね。
ナローノーズとSダクトを組み合わせたの時のノーズ強度がクラッシュテストに合格できる技術も必要であり、マクラーレンがSダクト使っていないのは、その技術的リソースが無いのか、機能させるための研究が不足しているのかはわからない。
レッドブルはナローノーズでありながら先端に空気導入口を設け、より積極的にノーズ下の空気を増やそうとしている。メルセデスよりも一歩進んだ考え方だけに機能できればその効果は大きいだろう。
何事もやりすぎは良くない事は過去の教訓からも明らかです。
ただすべてを制御出来た時には、それこそ他を圧倒する強さになる。フロントウィング、ノーズはマシン全体の空気の流れを決める最重要ポイント、奇抜なフロントマスクであるRB16への期待は高まるばかりなのであります。
一部の情報によると、ルノーのPUは昨年型とほぼ同じで、シーズン中のアップデートも1回のみとの事。
ルノーは少ない予算内でシャーシ側にリソースを集中したって事ですかね?
それほどナローノーズ化には意味があるって事ですかね?
ルノーの場合、ノーズ以外はあまり変わっていないですよね。2021年から全てが変わるので、リソースをそちらに向けている。
ナローノーズとケープは2021年も有効だと思います。
ルノー(ワークス)自身は、パワーユニットだけの性能差(序列順位)を、フェラーリ、ルノー、メルセデス、ホンダという、フェラーリの次、2番目と公言してますね。
決して、ホンダの風下には置かないプライドが見えてきます。
昨年度、4メーカー中唯一優勝しなかったパワーユニットですが(最高位もカスタマーであるマクラーレンの3位)
ワークス参戦以来、1度も優勝成し遂げていない(同じくカスタマーであるレッドブルだけ)
決して劣っているとは思わないですが、まずカスタマーのマクラーレンよりも上位のリザルトを達成するのが、まず今年の目標ですね。
Sダクトって丸みを帯びたナローノーズでは効果少ないんじゃなかろうか?と思うんですがどうなんでしょう?
ナローでない従来の平たい(ワイド?)ノーズではノーズ上面の整流が必須だったと思うんですが、サイドへ流れる比率が増せばSダクトは抵抗が勝ってしまうのでは?と思うのです。
レッドブルはナローでも平たいノーズなので必要かもですが、マクラーレンやメルセデスのような丸みのあるタイプだと、あまり重要じゃないのかなと・・わかりませんが。
レッドブルのNACAダクトが減っているので、ナローノーズではそれほど大きな影響は無さそうですね。