2017年F1開幕が迫ってきました。今年は車体側で大幅な変更があるけど、ホンダエンジンはどこまで戦えるのかがF1ファン・ホンダファンが気になる最大の関心事だと思います。
私自身ホンダ復帰当初は、エンジン(パワーユニット)解析に力をいれてきたものの、昨年は期待していた通りに改善がされておらず、あまり触れてこなかった話題です。
今年は開発規制であるトークン制度が無くなったので、この2年間の参戦で得られたデータを元にホンダが改善したパワーユニットが出てきます。これに期待しなくて何がホンダファンかと!
パワーユニット規定を自分のおさらいを込めてまとめていきます。
パワーユニットの構成
- ICE(内燃エンジン機関)1,600ccV型6気筒直噴シングルターボ(ボア80mm、ストローク53mm)最高回転数15,000rpm
- TC(ターボチャージャー)
- MGU-H(熱エネルギーモーター)最高回転数12,5000rpm
- MGU-K(運動エネルギーモーター)出力120kw(163馬力)最高回転数50,000rpm
- ES(エネルギーストア)バッテリー
- CE(コントロールエレクトロニクス)ERSコントロールユニット
ICEへの燃料流量制限と1レースあたりの燃料使用量
- ICEへの最大燃料流量は回転数10,500rpm以上では100kg/h
- 1レースあたりで使える燃料使用量は105kg(約144ℓ)
燃料流量100kg/hとは1秒あたり約27.8g(約37cc)となり、回転数10,500rpm以上で燃料を消費しつづけると約63分で無くなる計算です。
MGUでの回生量と放出量
- MGU-Kでの運動エネルギー回生量(ブレーキング時に貯める)は1周あたり2MJ
- MGU-Hでの熱エネルギー回生量(排気タービンに直結したモーターで発電)は無制限
ES(バッテリー)からMGU-Kへ放出できるエネルギー量は4MJで1周あたり約33秒間となります。MGU-HからMGU-Kへの直接エネルギー供給無制限がこのパワーユニット最大の特徴になります。またMGU-KからMGU-Hへの供給も無制限です。
MGU-Hに求められる回生エネルギーは、ESへ送る2MJは必衰であり、1周あたり33秒以上MGU-Kでのパワーアシストを得るためには直接エネルギーを送る事が必要になります。(できなければ163馬力失う事になるため。)
またMGU-Hはコンプレッサーとタービンに直結しているため、コンプレッサーが十分な回転数に達していなく空気を圧縮できない時などに、作動させて強制的にコンプレッサーを回す事でターボラグの発生を抑えます。
その他詳しい寸法はFI技術規則(日本語版)お読みください。
速く走るために必要なパワーユニットの稼働条件
- MGU-KでのESへの回生エネルギー2MJの確保(ブレーキング時間にして約17秒)
- MGU-HでのESへの回生エネルギー2MJの確保
- MGU-HからMGU-Kへの直接エネルギーの確保(無制限)
- MGU-Hへ送るエネルギーの確保(ターボラグ解消のため)
- これらを稼働させるためのICEの優れた熱効率
トークン制度に替わる新たな制度
2017年のレギュレーション変更でメーカーとFIAは、トークン制度による開発の回数ではなく重量・寸法・材質などを制限する事になった。
パワーユニットの重量制限
- MGU-K(運動エネルギーモーター)が7kg以上
- MGU-H(熱エネルギーモーター)が4kg以上
- ピストンとコンロッドは300g以上
- クランクシャフトのアッセンブリーは5300g以上
クランクシャフトベアリングの寸法が制限され、シリンダーの圧縮比を18.0以下しなければならない。それらのコーティングは金やプラチナ、ルテニウム、イリジウム、レニウムのいずれかを使ったものに制限されて厚さは0.035mm以下にしなければならない。
ホンダに必要な改善項目
ここ2年のホンダが出来なかった事もしくは弱かった事は大きく2つありました。
- MGU-Hの稼働に関して
- ICEの優れた燃焼技術
MGU-Hの稼働に関して
一つはMGU-Hの稼働に関することです。回生パワーが不足することが慢性的にあり、これの改善に1年半かかっています。また、それを実現するためにICEのパワーを犠牲にしています。
多少のパワー犠牲でも常時163馬力のモーターを稼働させる方が効率が良いというわけです。
ICEの優れた燃焼技術
もう一つはICEの優れた燃焼技術です。ICEの熱効率を上げるためには超希薄燃焼技術が必要でこれらの技術が他のエンジンメーカーよりも劣っています。
それを実現するためのタービンとコンプレッサーの大型化が、レイアウト変更ができない規定により閉ざされていました。
2017年のホンダは、燃焼効率と熱回生エネルギー問題をしっかり改善してきているはずです。そのためにメルセデスのエンジンレイアウトを真似ると見られており大いに注目すべき点になります。
ホンダPUの弱点:サイズゼロコンセプトのバッドサイクルが最大の失策。すなわちLog typeの排気系(メルセデス初期モデルのコピー?)を等長管とし、ICE本来の性能を 優先する設計思想が求められます。ホンダ開発陣はICE基本性能の1丁目1番地を置き 去りにしてしまったようです。同様にMGU-Hのほとんど素人設計には驚きです。
信頼性についても冷却性能のバランス観点欠落です。先が長いですねぇ。
コメントありがとうございます。
ホンダは確か2015年の終盤に排気系を等長にしていたはずです。
メルセデスも2014から2015年に向けて等長に戻しています。
どっちにしても本来もっとも開発が進んでいないといけないターボエンジン本体の燃焼技術不足が問題点ですから
エンジン屋としての底力みせてほしいですね。
ホンダは2016年も基本コンセプトは変えずにサイズゼロにこだわる!