昨今F1のステアリングホイールはボタンやダイヤルで埋め尽くされている。オンボード動画を見ているとドライバーはせわしなくこれらのボタンやダイヤルを操作して走っている。

ほとんどのコースで平均速度は200km/hを超え、コーナー、アップダウン、加減速により瞬間的に最大で約5Gもの力を受けている中で行っている。

なぜここまでドライバーによる操作が必要になったかというと、あらゆる電子制御デバイスが禁止された事がひとつ上げられる。トラクションコントロール、ABS、アクティブサスペンション、アクティブデフなどが代表的なものだ。

そしてもっとも大きな変革となった2003年、ピットからマシンへのデータ送信が禁止された。これによりエンジンモードに代表されるあらゆる調整はドライバーが選択せねばならなくなった。

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2018年メルセデスW09のステアリングホイール

https://thecarguy.com.au/

ダイヤル系の機能

  • ENTRY(赤) ブレーキングのデフ設定
  • MID(白) コーナリングのデフ設定
  • HI SPEED(青) 高速コーナーのデフ設定
  • EB(緑) エンジンブレーキの設定
  • BMIG(黄) ペダルマップ設定
  • BBAL(黄) ブレーキバランスの設定
  • STRAT(黄) スタート時のエンジンモード設定
  • MENU(紫) マルチファンクション
  • HPP(緑) パワーユニットのモード変更

ボタン系の機能

  • DRS(黄) DRS作動ボタン
  • +10(紫) マルチファンクションの数値入力
  • N(緑) ニュートラル
  • BB-(黒) ブレーキバランスの微調整
  • X(赤)センサーの停止
  • PC(橙) ピットイン確認
  • +1(紫) マルチファンクションの数値入力
  • PL(黄) ピットリミッター
  • BB+(黒) ブレーキバランスの微調整
  • TALK(白) 無線
  • RS(青) レーススタートモード
  • MARK(黒) データロガーにマーキング

※これらの機能については色々なサイトを元に解釈しているため、実際とは違う可能性があります。

メルセデスってOT(オーバーテイク)ボタンがないんだぁ・・。

ドライビングテクニックとセッティングテクニック

ドライバーが行う操作は主にアクセル、ブレーキ、ハンドル、ギアの4つでこれらを上手に扱える事が上手いドライバーと言えるが、F4⇒F3⇒F2とステップアップする中で走行中にセッティング操作が必要な範囲が増えていく。

F1においては高度なハイブリットシステムを使っている事でパワーマネジメント系の操作が一気に増加する。決勝においては105kgの燃料制限があるので、パワーユニットのマネジメントは重要、更には7戦連続で使用しなければならないのでマイレージを意識した使い方も必要である。

 

マシンからピットへはテレメトリーデータが送信されており、各エンジニアはこれを確認しつつドライバーにセッティング指示を出している。

しかしながら速く走るためにドライバー自身が1周の間に色々な調整を行う必要がある。スペインGPでトップ独走したハミルトンはこれらの操作を試行錯誤しながら走り、どうすれば速く走れたのか逆にピット側に教えるなどしている。全ての機能を理解し調整幅が挙動をどのように変えるのか?またその限界点を見極める能力が必要である。

特に前後ブレーキバランスやデフ(リアタイヤ左右のトルクの振り分け)のセッティングは、ラップ中に何度も切り替える事で速く走る事ができる。

 

トップドライバーと呼ばれる者は、そのドライビングテクニックもさることながら、走行中のセッティングテクニックも極めて高い事が条件となっている。

恐ろしいスピードでマシンを操作しつつ、まるでゲームをしているかのようにステアリングのボタンなどを操作するF1ドライバーは、我々の想像を遥かに超える超人と言っておこう。