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レッドブルとアストンマーチンは共に今年のレギュレーションを理解して速いマシンを走らせています。

チーム力と言う点で絶対に超えられない壁がありますが、アストンマーチンは現状トップ3の牙城を切り崩しました。

 

ボディ形状が似ていると言う事は、それと融合するフロアも似ている事を意味します。

AMR22のbバージョンはRB18の初期型を模倣していましたがAMR23となった今年は?

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レッドブルRB18とアストンマーチンAMR23のフロア上面比較

2戦終了時点でフロア下面がわかる画像は一切ありませんが、AMR23は上面がわかる画像があります。

  • 横幅のあるセンターフラットエリア(赤矢印)
  • ディフューザーの傾斜が始まる位置であるキックポイント(黄色点線)〈AMR23は推定〉
  • リアアクスルライン(緑点線)
※AMR23のフロアは後ろ側が手前になるアングルなのが惜しい

 

全体像はほぼ一緒だと言う事がわかります。

車高を上げても失う負圧が少ない事がRB18の強みでしたのでAMR23も似た性質をもったフロアになります。

 

簡単に言えばフラットボトムカーとベンチュリートンネルカーの融合です。

広いフラットエリアはトンネルの強い流れによって守られます。

ギアボックスの形状がディフューザーの自由度を奪う

  • AMR23のメルセデス製ギアボックスが大きい(上画像の赤丸)

 

AMR23は太いギヤボックスのせいで、ディフューザーの下面も上面も空気が流れる体積が少なくなってしまっています。

メルセデス製ギアボックス2022型

メルセデス製ギアボックスは、プルロッド(赤矢印)でトーションバー(黄点線)などのインボードサスペンションは中間に内蔵されています。

 

 

ギヤカセット(赤丸)の後ろにインボードサスペンションのパーツが内蔵されており、ドライブシャフト(緑点線)のフェアリングが斜めになり太い。

レッドブルのギアボックス2022型

ドライブシャフト(緑点線)が接続する部分が明らかに細いのがわかります。

デフの丸いギアに沿ってギアボックスの形状が削ぎ落されています。

 

メルセデスに比べれば凸凹とした形状ですが、ディフィーザーに埋まる部分であり下面の形状に自由度を与えます。

上面はスペースを広げて空気をスムーズに流す事が出来ます。

 

レッドブルがプッシュロッドを採用してインボードサスペンションの大半をギアボックスから出したのは、空力的要求だと言う事がこれでわかると思います。

 

 

もう一度アストンマーチンのフロアとギアボックスの接続部分を見てもらいたい。

メルセデス製ギアボックス2022型と2023型は、変更がほぼ無い事がわかると思います。

まとめ

広いセンターフラットエリアは車高の自由度を上げます。

 

フロアは路面に近づいて初めて効果が発揮されるもの、フラットエリアが広い事は車高が上がった時に路面に近い面積が多い。

そして強いフロアエッジエアロシールと相まって、他よりも高い車高と他よりもしなやかなサスペンションセッティングが選択できるのです。

 

高速域でバウンシングしない理由は?

  • フラットエリア全体で負圧を発生しキックポイントに頼らない事
  • リアサスペンションの稼働領域が残されている事
  • ディフューザーが他よりも小さく感度を緩和する曲線形状
  • ビームウィングによるディフィーザー機能の調整
  • ストールしにくい緩やかなキックポイントとフロアエッジトンネルへのバイパス

 

一番重要な事は、速度に対して(車高に対して)負圧の強弱が激しいベンチュリートンネルに(キックポイントに)頼らず、全体的に(フラットエリア主体で)フロアダウンフォースを高めている事にあります。

このフロアを理解せずに、サイドポッドだけ似せても同じ速さは得られません。

 

 

太いメルセデス製ギアボックスでもAMR23は速いわけですが、突き詰めればレッドブルには追い付けない部分でもあります。

レッドブルはこの攻めたギアボックスが諸刃の剣かもしれない。(2022年型から度々問題はある)