2017年よりF1マシンはフロアの改良が凄まじい勢いを見せていて面白いですね。

 

昨年の10月にレーキ角一覧とフロアでのダウンフォースについて考察という記事を書かせてもらいましたが、ブログに頂くコメントなどで私の空力学も徐々に進歩してきました。

 

今回は現代F1の肝とも言えるレーキ角とフロアについて、F1初心者さんでもわかる様に、再度まとめてみようと思います。

長いですがお付き合い下さい。

 

※最初の公開より追記した部分があり2-2になっております。

また、これは持論であり実際の流れを確認した訳ではありませんので、ご了承下さい。

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F1のフロアについて

F1のフロアは1995年よりステップドボトム規制により、中央部分が最大で500mmと50mm位置が高い両サイドは最小で550mm(フロアの横幅1,600mm)で構成されます。

 

その他詳しい寸法は日本語版2017年度Fomula1技術規則をお読み下さい。(2018年度版は翻訳されていませんが寸法の変更はないです。)

 

正面から見た図は以下

2017 F1 TECHNICAL REGULATIONS(この数値はフロントウィングの寸法です。)

 

フロア全体を底面から見た図は以下

2017 F1 TECHNICAL REGULATIONS

 

実車画像は以下

 

https://www.motorsport.com/(2017イギリスGPレッドブルRB13)

 

F1底面での空気の流れを可視化した画像は以下

https://www.f1technical.net/(2008ルノーRS28:色が青いほど負圧)

 

レーキ角最大の利点フロントウィングを路面に近づける

2017年レッドブルRB13のレーキ角

フロントタイヤを支点としてリアの車高を上げる事で、フロントウィングが路面に近づく、フロントウィングのメインプレートと路面の間で発生するグラウンドエフェクト効果が増加する。

 

1995年のステップドボトム規制から、F1レギュレーションには最低地上高の規則が無い事からこのセッティングが可能となる。

空気の流れによる力の発生

マシンが走り空気が流れると車体の周りの気圧が変化します。

周りの気圧より高いと正圧、低いと負圧として表現されます。

 

力は正圧⇒負圧の方向に発生します。

  • 空気抵抗とは車の前に正圧、後ろに負圧があるため進行方向とは逆向きの力が発生する事。
  • ダウンフォースとは各パーツの下側に負圧、上側に正圧あるため上から下へ力が発生する事。

 

空気は音速未満の速度である場合は、ほぼ圧縮される事はありません。

よって空気は逃げるように空間の広い方へと流れやすい事も頭にいれておきましょう。

フロアでのダウンフォース発生のポイント

車体と路面との間に負圧を作りグラウンドエフェクト(地面効果)を発生させるための施策は以下です。

  • 一番地面に近い中央部では空気の入口を狭くして、流速を高めてベンチュリ効果により負圧を作る。
  • 両サイドのフロアには空気を積極的に導き、流速を高めてベンチュリ効果により負圧を作る。

 

矛盾する二つの空気の使い方が存在する事になる。

空気は広い空間(ノーズ下)⇒狭い空間(流速が増加)⇒広い空間(ディフューザー)へと流したいため、ノーズ下からTトレイ(フロア前端)には空気の流れを方向付けるパーツが多数存在している。

 

もう一度マシンの底面実車画像を見てみましょう。(クリックでジャンプ

ステップドボトムにおいては中央部分は入口が狭いため勝手に流速が増加するが、それよりも50mm高い位置にある両サイドのフロアは効果が薄れる。

よってノーズ下から導いた空気が入りやすいようにフロア前部をめくり上がらせて流入空気を増加させる。

負圧漏れを守る気流のカーテン

高レーキ角では、フロアが後部に行くほど路面から離れて負圧漏れが起こり、グラウンドエフェクト効果が減少してしまう。

フロア両サイドの切れ込みは、上面から下面へ空気を導き、わざと渦流を作り出す事で、負圧部分をシールするカーテンを作り出すと考えている。

切れ込みによる空気の流れ予想

 

2017年に禁止されたフェラーリの上下に動くフロアは、渦流を作りしかも上下に震えるため、かなりの効果があったと推測できる。

SF70Hのフロア:空気の流れ予想

グラウンドエフェクトカーの再現

グラウンドエフェクトカーはサイドポンツーン自体がウィング構造になっていた、別名ウィングカーとも呼ばれていた。

負圧の発生原理はベンチュリ効果によるもので、負圧漏れを防ぐゴムのカーテンを付けていた。

https://www.formula1.com/

「フロアの切れ込みによる空力効果は、まさにこれではないかと思うのです。」

 

現在のフォーミュラカーにおいてもっともこのグラウンドエフェクトカーに近いと思われるのはインディカーです。

2015年INDY500 プラクティスにて飛んだ時の画像

ステップドボトムの段差があるフロア部分は前側が微妙に湾曲、ディフューザーへとつながる大きな湾曲の始まるポイントが早い。

これによりウィングに頼らないダウンフォースを獲得しています。

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結論

高レーキ角による最大の恩恵はフロントウィングを地面に近づける事で、グランドエフェクト効果を高める事と、前傾姿勢をとるボディ自体がウィング効果を発揮する事が、今回の考察で改めて思いました。

 

フロントのダウンフォースは、ターンインやブレーキングなどに関わる重要な要素。

ウィング面で稼ごうとすれば空気抵抗が増えるため、グランドエフェクトにて多く獲得する。

 

フロアによるダウンフォースは、高レーキ角によって角度がアップしたディフューザーにて効果は上昇するかもしれないが、路面から離れ過ぎて負圧漏れが起こる方が不利益だと感じる。

 

レーキの角度が各チーム違うのはこのためだろう。

 

高レーキ角によってリアの車高が上がり、前面投影面積が増加して空気抵抗が増えるが、リアサスを柔らかめに設定しダウンフォースの増加に伴いリアをボトミングさせれば空気抵抗を減らせる。

https://www.f1sport.it/2017/11/la-red-bull-tra-segreti-ed-illazioni/

※速度の増加に伴いダウンフォース発生量が多くなると、上の絵のようにリアが下がります。リアウィングの角度が浅くなり、前面投影面積も減少する。

 

以上、こんな感じの持論でございます。

 

レーキ角1.0°と3.0°の比較をCFD実験した記事

 

逆レーキ角による浮力の発生

1999年のルマンで起こったメルセデスが宙を舞う動画です。

フロアはフルフラットで空気の入口を狭くして負圧を作る方法をとっています。

 

スリップストリームで失ったフロントのダウンフォースと路面の起伏が相まって、空気が一気にフロアに流れ込み、一瞬でも逆レーキ角状態になるとこうなります。

現代のF1マシンでは強力なダウンフォースを発生するフロントウィングがあるので、このような事は起こりませんが、フラットボトムの危険性がわかる動画です。ちなみにポルシェも飛んでましたね。