2019年の新たなレギュレーション、ウィングの拡大とアウトウォッシュを発生させるフロントウィングのカスケード禁止の影響を知る。
海外のサイト「F1テクニカル」に興味深い記事があったので引用させてもらいます。
How the 2019 regulations have affected the aerodynamics of F1 cars
総ダウンフォース量に変化無し
2018⇒2019年はFOMによればダウンフォースは減るとの見解でしたが、CFDを使った調査によると変わらないとの結果が出たようです。アウトウォッシュが減少したことによりフロアで発生するダウンフォースは減少するが、拡大したウィングによりその分が補われる。
実験に使用されたフロントウィングは、2018年のハンガロリンクでテストされていたような単純なものです。
各部のドラッグとダウンフォースを、2018年を基準として、増減をグラフ化したものは以下
青はドラッグ、赤がダウンフォースです。(イメージ色が逆だなぁw)
このグラフを見るとダウンフォースはフロアで減少、ウィングでは増大している。リアウィングはドラッグも大きく増大しているのがわかります。
空気の流れによる力の発生
マシンがコースを走り、空気が流れると車体の周りの気圧が変化します。周りの気圧より高いと正圧、低いと負圧として表現されます。
力は正圧⇒負圧の方向に発生します。
- ドラッグとは車の前が正圧、後ろに負圧があるため進行方向とは逆向きの力が発生する事。
- ダウンフォースとは各パーツの下側が負圧、上側に正圧あるため上から下へ力が発生する事。
空気は音速未満の速度である場合は、ほぼ圧縮される事はありません。よって空気は逃げるように空間の広い方へと流れやすい。
※空気が当たるからドラッグなどの考えを捨て、気圧の変化そして正圧⇒負圧へ力の向きが発生すると考えると空力学は解りやすくなります。また、風がマシンに当たるのでは無くコース上にある空気にマシンが当たっていくと考えると良いでしょう。
フロアでのダウンフォース発生量比較
フロアでの気圧分布図、上が2019年ですが赤丸で囲った部分の負圧が減っています。フロアでの負圧の減少=ダウンフォースの減少ととらえる事が出来ます。
これはアウトウォッシュが無くなり、フロントタイヤの後方に発生するウェイクが、サイドポンツーンあたりに大きくかかり空気の流れを乱すからです。
マシン上面の流れと気圧分布図
アウトウォッシュの減少がよくわかる画像です。
フロントタイヤで発生したウェイクが、マシンに近づいているのがわかります。そしてリアウィング後方の負圧面積が大きくなっています。アウトウォッシュはドラッグ低減にも寄与しているんですね。
コーナリング中の空気の流れ
ここまではあくまで直線上の実験です。
F1マシンはコーナーを速く走る事でタイムを大きく改善します。よって、この実験では角度4°にて空気が当たった時も行っています。
気圧分布図:角度4°
角度4°にて進行するマシンは、イン側のフロントタイヤで発生するウェイクがマシンに大きくかかり、空気の流れを大きく乱しています。この実験ではタイヤの角度が変わっていない。
タイヤに角度がついたらもっと影響が大きくなるだろう。
まとめ
アウトウォッシュの効果って凄かったんだなぁ、こうやって見えるとよく解りますね。フリーなんだろうけどCFDを使いこなすコアなF1ファンに感謝です。
この気圧分布図なんかを見てると、フロントウィングデザインがもたらす影響が何となく見えてきます。
とりあえず私が感じた事は、
- 翼端板側のフラップを低くすると多少のアウトウォッシュは発生
- フロントウィングのダウンフォース↘
- フロアでのダウンフォース↗
- マシン後方のドラッグ↘
こんな感じの図式になります。
こんな事を踏まえて、今後のマシンアップデートを追っていきたいと思います。
※以下追記:2019.3.29
フェラーリ式フロントウィング実験
翼端板側がフラップが低いバージョンの実験結果が、It will all come out in the washにて公開されました。
2018年よりは減っているがアウトウォッシュは発生している。
特に注目すべきは、マシン後方の負圧が2018年のように減っている点かもれない。これはベッテルがDRSのないアクセルオン区間でハミルトンに勝った事の裏付けになるかも。
また、速度域がより高速にシフトすればこちらの方が利点が大きくなるかもしれない。かといってメルセデスやレッドブルがこれを見逃すはずは無いわけで、翼端板端の上方部分を削っている事からも、良いとこ取りしたいようにも思われる。
フロントウィングの概念的デザインは、マシン全体に影響があるため、どっちに方向性をもっていくかが今後の焦点となるだろう。
気流の可視化で理解が捗ります。
フェラーリやアルファロメオのようなフロントウィングで翼端板に向けて下がるような形状だと前輪が受ける風量が相対的に増加してタイヤに揚力が発生しそうなんですが大丈夫なんでしょうか?
それとも、ノーズ付近のフラップによるドラッグで影響が緩和されてるのでしょうか?
揚力は翼の下面に正圧があり上面に負圧があります。これは空気が流れなければ発生しない。
タイヤは地面に設置していますので、空気が流れない、よって揚力の発生条件を満たしません。
正面からの気圧分布図を見ると、タイヤの下側が赤くなっています。
また急な角度がついた部分では空気がはがれ、負圧の乱流が発生します。
タイヤは大きなドラッグを発生させるだけです。
2018年の分布図を見ると、その周りを覆うように流れがあります。
わかりやすい解説ありがとうございます。
これからシーズンが進むに連れて各チームのアップデートが楽しみになりました。
この図解とアウトウォッシュの発生量・ダウンフォースの増減・ドラッグの増減から、フェラーリ型フロントウィングはトータルとしてはダウンフォース不足なのかな?と感じます。
その結果がバンピーなメルボルンでの結果では?
ANSYSですね。有料のCFDツールです。
有料だったんですね。
調べて辿ったらFREEってのもあったので、そうなのかなぁって思ってました。
F1テクニカルが提供する情報なので有料の機能拡大版を使っているのかな。
ソフトも有料(数百万単位)ですし、数万円の有料セミナーを複数回受講しないと使いこなせないと思いますので、解析は専門の会社に依頼してるのではないでしょうか。
はじめましていつも興味深く拝見しています。
増減グラフのフロントウィングではダウンフォース増加しているのですが、
イメージでは今年は減るものだと思っていました。
なにか見方が間違っているのでしょうか。
フラップ面積が拡大するので増加します。面積を増やしたチームだけですけどね。
それとメインウィングが拡大したので、グランドエフェクトも増加しています。
2018年ついていたカスケードと呼ばれる空気を横に曲げるようなパーツも無くなったので、相対的に増加する。
そして、ドラッグがあまり増えてないのが意外なところでしょうね。
フロントウイングは、可能ならダウンフォース減らしたい場所なんじゃないですかね、ウイングカー時代や、高速オーバル走るときのインディカーなど、ほとんどダウンフォースなさそうな、あるいは省略しちゃったものすらあった。 今回の増加は、他の部分でのダウンフォースがそれほど見込めないから増やしてる面があると思う
フロントウイングでダウンフォース稼ぐってことは、それだけその後ろの気流が乱れるってことですからね。
FIAの狙い通りアウトウォッシュは減っているのですね。
しかし、アルファやフェラーリが付けているFウィングは昨年型に近いFウイングのメルセデスやレッドブルよりも発生していると解釈して良いのかなー。(エンドプレート後端に切り欠きを入れてアウトウォッシュ発生は狙っている様ですが・・・)
だれかANSYSで解析してほしいですね。
また、コーナーリング中のフロア周りの変化が2019年では大きいですね。レッドブルはこの辺りに苦しんでいるのかもですね。
うーん良い記事ですありがとうございました。
フロントタイヤ前に主についていたカスケードは、かなり急なカーブ状でした。
それが無い中での、今年のアウトウォッシュ生成は容易じゃない。
単純に横に排出したところではあまり意味が無く、ボルテックスにしなければならない。
カスケード無しでは作れませんよ。
イメージではいいところ30%ぐらいじゃないですかね。
F1テクニカルではフェラーリ型のウィング調査をするっぽいです。
https://www.f1technical.net/features/22008
Ansysでの解析でてますね。
実に興味深いですな。
これは面白いですね。画像と共に追記しておきました。
情報ありがとうございます。