昨年の後半戦から空力の不安定さが目立ち、今年のテストではどうしようもないほどのボトミングとバウンシングに見舞われた。
フロアエッジ15mm上げに対して悪い方向性に開発してしまったマシン。
フロアを安定させるためには極力上下動させない硬いリアサスペンションセッティングが必要となっている。
スペインGPではサイドポッドを他チームに見習った形状にしてきましたが、先に改良されたメルセデスに比べると明らかに中途半端です。
結果は散々たるものでレースペースは無かった。
とりあえず、どのようなものなのか解析します。
フェラーリSF-23のサイドポッド
新しいサイドポッドを色々な角度で見ていきましょう。
半分だけダウンウォッシュになっているサイドポッドです。
コークボトルラインが残っていて、サイドの流れを少しディフューザー上面に引き込んでいる。
出来るだけアンダーカットを広げるために、サイドインパクトストラクチャーが浮き出ている。
フロアエッジはやっと大きなめくりが出来ていて、フェンス裏でトンネルから空気を少しだけ排出している。
フロアエッジで作られるボルテックスも増えるだろうけど、レッドブルやメルセデスと比べると物足りない。
フェラーリSF-23:フロアエッジのフロービズ
ディフューザーの傾斜が始まる辺りで、色々な気流が渦巻いているように見えます。
フロービズがフロアサイドからディフューザー上面に引き込まれ、サスペンションアームの付け根にある赤いボディにまで到達している。
- サイドポッドの凹みからの流れ
- ダウンウォッシュの流れ
- コークボトルライン
この3つの速度の違う流れが絡み合って綺麗に流れてはいないでしょう。
レッドブルもメルセデスもそうですが、フロアエッジ後端の位置までサイドポッド後端を伸ばすのがトレンドデザインです。
なぜそうするのか?
フロアエッジと路面をシールするボルテックスが最後の最後でディフューザー上面方向に引き込まれシールする力が弱まるからです。
多数のチームがそうしているのだから、真似するのは至極当然の事でしょう。
フェラーリSF-23のフロア
トンネルと言うよりはフラットフロアで路面に近づいている面積がとにかく多く、ほぼ昨年のままです。
トンネル入口からの角度は緩やかで内側フェンスの後方辺りで路面に近づきます。
そこからフラットトンネル全体に速い流れを広げるように流しています。
ディフューザーへのキックポイントは非常に緩やかで綺麗です。
まとめ
フェラーリのベンチュリートンネルは一度だけ路面に近づくため
「シングルベンチュリートンネルフロア」と呼んでいます。
昔のウィングカーですか?これは・・・。
昨年大問題になったベンチュリー効果の効きすぎによるバウンシングが未だに解決できていない。
フロアダウンフォースの最大値発生ポイントが中心に集中している。
- 高速域でバウンシング(硬いリアサスが限界荷重でリジット化)
- タイヤの摩耗が極端に多い(硬いリアサスで柔軟性が無くスライドが多い)
速く走るにはフロアが路面から離れすぎないように、近づきすぎないように設定する必要があり。
可動範囲を制限するためにサスを硬く設定せざるを得ないのです。
今回のサイドポッドとフロアアップデートではフロアエッジエアロシール能力が足りない。
車高を高くすると損失が多い。
トンネルからの排出を増やしてボルテックスを作る方法もあるが、それをするとフロア全体のダウンフォースが低下する。
何をやろうにもこのフロアではどうにもならないのが現実です。
とにかく全チーム中で最大のフロアダウンフォースを発生させる事が出来ます。
空気が薄いサーキットではその強さが発揮されるかもしれない。
来年を見つめて他チームと同じようにダブルベンチュリートンネルに仕上げる必要があるでしょう。
去年のメルセデスがやったのと似たような間違いってところですかね?
もうメルセデスみたいに過去の栄光は忘れて次に進むしかないはずですが…
本文中に書いてある通り、昨年とほぼ一緒です。
フロアエッジ15mm高により、フロア全体の密閉性が下がり、車高を上げると不安定さが増加する。
2022前半戦が好調だったためコンセプト継続開発を選ぶしかなかった。
しかしながら開幕時点でフロアシールに対して全く対応出来ていない様子を見ると、柔軟な開発陣と言うよりは数値だけで上を納得させるような体制に問題ありでしょう。
開幕前のシミュレータで1秒以上速いなんて噂が飛んでくる。
常に理想のダウンフォースが発生した場合の話だろう。
ルクレールはこの新しいアップデートに懐疑的な様子で、同じコンパウンドのタイヤでも第1スティントと第3スティントではバランスが変わりペースに一貫性がないと嘆いてますね。事前の噂では新しいリアサスも投入予定だったはずですが、それもルクレールが却下したなどと言われてますし、とにかくフェラーリの迷走っぷりたるや重症ですね。
タイヤの問題に関してはこれは燃料の消費による積載量の変化でバランスがおかしくなるんじゃないかと疑ってるんですが実際どうなんでしょう?
いずれにせよプライドを捨てたメルセデスはこれから良くなりそうな明るい兆しが見えましたが、片やフェラーリは当面の間、暗いトンネル内を彷徨ってそうです…
現在のグラウンドエフェクトカーと昔の(1977年~1982年)ウイングカーとの最大の違いは、機械構造的サイドプレート(サイドスカート)を使ってフロア床下内部エアーと外気エアーを完全に遮断シャットアウト出来るか否か?だと考えています。
車高が上がってもサイドスカートさえ路面に常時接触させて置けば気密性を保てる(可動スライディング式であれば尚更)
サイドスカートはウイングカーの生命線?
しかし、このサイトスカートって言うのが非常に厄介で危険な代物だったのでウイングカーは一度禁止されてしまいました。
グラウンドエフェクトカーが解禁されたのもサイドスカートは使わない(使ってはいけない)と言う条件の基で導入許可されたのだと今でも思っています。
そういう点でサイドスカートを使わずにエアーを密閉シール制御する今のグラウンドエフェクトカーは、ウイングカー時代の技術レベルを遥かに越えていると言えますね。
サイドポッドリニューアルで
本家ワークスフェラーリの次は、分家カスタマーのハースの番ですね。
フェラーリのアップデート、素人目でも洗練された感じが皆無に見えるのは私だけでしょうかw
フロア周辺のフロービズも綺麗に流れてるようにもみえませんし、JINさん指摘の通り、ボディカウル後端の上側部分なんてあんな角度で引き込まれてて、カウル上面からの空気そのものが流れていないように見えますね。
「機能美」なんて言葉がありますが、フェラーリからは感じられません。