ホンダのF1復帰から4年目の2018年、開幕前テストでは目立ったトラブルなく好調なスタートを切った。

思えば2015年の復帰初年度はコンセプト間違いとトークン制度のせいで改良が出来ずに散々たる結果。

2016年もトークン制度のせいでやはりコンセプト変更が出来ずに、小規模な改善で終わる。

そして2017年は完全に新たな新設計をして振り出しに戻ったため、トラブル多発でマクラーレンに諦められたが、一つ一つ問題を潰していった結果終盤にはルノーの背後にまで迫る事ができている。

大雑把に言うとこんな感じでしょうか。

シーズンもまだ始まっていないけど、ホンダはやっと成人を迎えたようだし、今一度経緯を振り返ってみます。

※今回の記事は今までホンダを追ってきた方々には、解っている内容となります。そして思いっきりホンダ擁護の立場で書きますのでアンチの方はスルーお願いします。

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ホンダ2015年の失敗

マクラーレンホンダ復活に心躍らさせF1に再注目した2015年、あっと驚く結果で私は意気消沈しました。こんなんでF1復帰なんてすんなよ!と罵声を浴びせたいほどに。

でもなぜホンダをそうさせたのか?これについて紐解いていきます。

ホンダ「わかっていなかった。」

この言葉に尽きる。そしてパートナーであるマクラーレンもわかっていなかったために引き起こされた悲劇でもあった。

マクラーレンは車体後方の空力性能重視のためコンパクトなエンジンをホンダに要求した。ホンダはシャシー側の要求をなるべく取り入れるべく最初のユニットを作成している。

なぜメルセデスの外寸を知っているマクラーレンはそれをホンダに教えなかったのか?守秘義務はもちろんあるだろうが、現状のシャシーの寸法は当然ホンダにも伝わるべき情報だろう。

2014年にF1を絶賛したメルセデス、その活躍は当然エンジンによるものなのは一目瞭然。ホンダにしてもF1情報をしっかりくみ取っていれば寸法ぐらいは画像からでも分析できたはずだ。

でもマクラーレンの要求を呑んでしまった。これは特に日本人に見られる「協調性の高さ」が関係していると私は思っている。周りに合わせて行動してしまう特異なこの能力は日本人の強さであり弱さでもある。

ホンダはエンジン屋としてここは譲れないと思う部分が欠けていた事もあり、本来パワーを欲する設計を捨ててマクラーレンの言う通りにコンパクトでパワーアップできないユニットを作ってしまった。

HONDA RA615H

ターボエンジンがパワーアップするために必要な物

車好きなら誰でもわかる原理、パワー=吸い込む空気の量。そしてそれを実現するのかタービンとコンプレッサーの大きさだ。

ホンダはコンパクトにこだわるあまりに、サイズの小さいタービンとコンプレッサーをV型エンジンのバンク内に押し込んでしまった。

これによりサイズ変更できない事態になり、2015年はほとんど何もできないままシーズンを終える。

あまりにもエンジンの基本的概念を無視したコンパクトなRA615Hを作り出したが、それを実現できる技術力もあったという事実だけは確かだ。

ホンダ2016年の改善

HONDA RA616H

2015年の失敗設計は、ホンダ自身もマクラーレンもわかっていた。しかしこれを新設計するにはトークン制度が邪魔になった。

結局Vバンク内からは動かせない主要なパーツであるタービンとコンプレッサーのサイズを大きくするために、上方に移動させて径を大きくする手段をとった。

その為に、重心は上がりマシンの動力性能が落ちてしまう。またこのサイズアップ程度では足りない事もわかっていた。

そんな中でも、上方に上げたVバンク内のスペースで吸気ファンネル、プレナムチャンバーなどの吸気系を改善。

タービンのサイズアップによりMGU-Hの効率を上げる事に成功し、エネルギー回生部分については他のメーカーに引けを取らないほどまでに改善している。

ホンダとしては新設計で挑みたかっただろう。FIAが発行していた開発規制に邪魔されて失敗設計を改善する事しかできなかった2016年となった。

2017年完全新設計で基本に戻る

初年度の失敗が元で2年間を棒に振ったホンダ。本当に悔しかったと思う。ここまで屈辱的成績になったのは、わかっていなかった設計とそれを要求したマクラーレンにあった。

2017年に向けてホンダが取り組んだ事は、本来の性能を実現するための基本理念への回帰だ。

これには2年間同じ思いだったマクラーレン側もホンダの要求を呑まざるを得なかったのだろう。ユニットの全長の増加など大がかりな変更を施した。

プレシーズンテストで走れない

特にプレシーズンテストでは散々たる結果で、私自身マクラーレン同様憤慨した。

ギャップは縮まるどころか大きく離れてしまった。体制面やエンジニアの経験不足などあらゆる問題を批判する事しかできない事が辛かった。

この時期がホンダにとっては一番辛かったと思う。パートナーのマクラーレンは過去2年間ホンダ批判も少なからずあったけど、このテストを期に加速していった。

もうこの時点でホンダとは終わりと判断したんだろう。

産声を上げたホンダRA617H

HONDA RA617H

メルセデスやフェラーリに遅れる事2年、プレチャンバー方式の燃焼室を投入する事ができたホンダはこれを機能させる事ができなかった。

またオイルタンクがコンプレッサーによって変形した形となり、循環がうまくいかなかった事が、延々と尾を引いた。

オイル量を増やせば、インテークより進入したオイルがコンプレッサーに吸われMGU-Hのベアリングを破壊するなどトラブルは多発した。

そして、ホンダは決断した。外部コンサルタントと協力して開発していく道へ方向転換した。

開発ペースは急上昇し、大きく結果に表れるようになった。

スペック1~スペック3.8

このスペックの表記ですが、あくまで私の予測ですけど、整数部分の1~3は燃焼室などエンジン本体の変更が関わるときに用いられたもの。

スペック3でプレチャンバー燃焼を最適にする形状を導入したとのホンダ側の説明があった。事実一気に30psほどのパワーアップしている。

小数点以下の数字は、その他のアップデートで用いられたものと思う。

ホンダはたった1年で他メーカー3年分ぐらいの改善をしていたと考えている。エンジン交換も3年分ぐらいはしているからね。

赤子だったRA617Hはホンダが丹念に育てていった結果、やっとF1標準規格へと成長したと私は考える。

機械はダメ探し

私の好きな台詞があるので聞いてほしい。

「チューニングに関わらず機械ってのはダメ探しなんだよ。良いところを伸ばそうとすればろくな事はない、人なら長所を見つけて褒めてやれば伸びる事があるが、機械はそうじゃない。

迷ったらダメなところを見つけて解決していくしかない、丹念にひとつひとつな。チューニングに魔法は無いわけだ。

パワーが上がれば短所は限りなく出てくる、それをひとつひとつ潰していく。そしてある日とてつもないチューンドになるんだ。」

 

2017年ホンダがやった事はまさにこれ。丹念にひとつひとつ積み上げていった。

そしてGPSデータ上にて推定881psと言う解析結果を出せるようになった。

体制面の変更がプラスに

今年から現場と開発の責任者を分けたホンダの体制。開発には取締役である浅木さん、現場には経験豊富な田辺さんを起用する。

この体制が出来るようになったのは、昨年まで責任者だった長谷川さんの功績が大きいと思う。プライドを捨てて外部との連携を進め、改善を一歩一歩すすめきた、そして今後の方向性を見出している。

過去3年間奮闘してきたエンジニアたちの成長も大きく影響しているのは間違いない。

「石の上にも三年」なんて言葉があるが、4年目である今年はその成長度合いは加速すると思われる。

外部コンサルタントとの協業も強化するとしており、イギリスの現場拠点と栃木の開発拠点の連携もスムーズになっているようだ。

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まとめ

ホンダはやっと基準に達した程度ですが、それでも私は嬉しいんです。今年やっと戦える事が。

昨年の今頃は本気で怒りまくってたから・・。ブログ続けるやる気も失いそうだった。

 

そんな時、頑張ろうよって読者様の声が、本当に有り難かった。

ホンダは赤子に戻っちゃっただけだと思うようにした。

私自身の気分はかなり晴れたし、ただ速い遅い言ってるニュースが気に食わなくて何処で遅れてる?どこが速い?などデータを裏付けにした分析も多くなっていった2017年。

このブログ自体の方向性もがらっと変わった転機になった。ありがとうホンダと読者様。

今年もきっちりデータまとめしていきますね。

 

 

私の好きな台詞がわかる人はかなりのマニアですわw